第一話「キースとシンディ」
連載多いのにまた思いついてしまったんです本当にすいません。
こっちは気が向いた時に話を追加する超スロー連載になるかも知れませんがご容赦ください。
真昼の暑い日差しが、沢山のビルと幅広のアスファルトの道路、その上に列をなして走る車に照り付ける。
ここは大都市のコヨーテバーキン・シティ。
国内でも最大級の大都市であり、悪漢があちこちに潜む犯罪都市でもある。
「きゃぁぁぁ!」
「危ない! 皆近くの建物に隠れてっ!」
「ひぃぃぃ」
大きな片側2車線の道路脇の歩道を人々が逃げまどう。
その内いくらかは慌てて近くのブティックやファーストフード店に駆け込んで避難する。
その直後、道路の真上を二つの巨大なフロートをぶら下げた水上機がプロペラエンジンの爆音を立てて通り抜けた。
水上機はフード付きジャンパーを被って唇にピアスを入れた男が操縦し、坊主頭を虎の爪が引っ搔いたような反りこみを入れた別の男がアシスタントをしている。
操縦室の後ろの空間には沢山の布袋が詰まれ、札束が覗いている。
銀行強盗後の逃走中である。
「掴まれっ! 曲がるぞっ!」
水上機は道路のカーブに合わせ、立ち並ぶビル群に接触するスレスレの所で右に大きく曲がる。
「しょ、衝突するぜぇ兄貴! 上へ出ましょうや!」
「馬鹿野郎! 障害物の無い上に出たらそれこそ”奴等”のカモだっ!
早く後部銃座に付けっ!」
坊主頭の男は操縦室内の手すりに掴まりながら後ろに移動し、銃座に付く。
この銃座は機体後部を見据えてガラス張りになっており、その中央にはトミーガンが据えられている。
普通の水上機にはない、違法改造である。
「まだ追って来ているか!?」
「いや……さすがにこんなところまで……まじかよ……来やがった……」
水上機を追跡してグレイの単発レシプロ戦闘機がビルとビルの隙間から姿を現した。
機体中央では巨大なコーン付きプロペラを激しい音を立てて回しながら、水上機の後ろ200メートル程に張り付く。
戦闘機のプロペラの周っている胴体先頭部分は黄色いストライプ模様で塗られており、風防の中ではゴーグルを付けた男が操縦桿を握っている。
(そこの水上機! 逃走を止めておとなしく誘導に従いなさい!)
「あ、兄貴ぃ……」
「撃てぇ! 撃ち落とせぇ!」
「ちきしょう食らえぇぇ!」
坊主頭の男は備え付けのトミーガンで追跡する戦闘機に狙いを定めて攻撃を始める。
戦闘機はそれを察知すると一瞬早くサイドへ移動して回避、右左と機体の回転を交えながらも追跡を止めない。
「うああぁぁぁぁ!」
坊主頭の男は必死で右へ左へトミーガンを動かして乱射を続ける。
(強盗に加えて、シティ航空交通法違反の現行犯、市民に危害が及ぶ為、強硬手段に出ます)
「おい、何してるんだ撃ち落とせ!」
「あ、あったんねぇんだよぉ……このっ、このっ!」
追跡する戦闘機は機体先端の回転プロペラの前のコーン部分、その中央にある穴から断続的に火を噴いた。
内臓された機関砲である。
機関砲は水上機の右尾翼と右主翼に何発か命中、胴体部分にいくつもの穴を開けた。
「俺だって運び屋キャリア10年以上やってんだ、舐めるなよぉ?
見てろぉ――!」
水上機はY字型に分かれた道路の左へと曲がり、鉄橋の下をギリギリで潜る。
そして煙を上げながらもビルの隙間を右へ左へとかいくぐり、さらには台地となってる住宅地地帯の下を潜る巨大なトンネルに潜り込んだ。
「す、すげぇぜ兄貴……おぇぇぇ」
「吐くな馬鹿が! ……しかし……へっへっへ。さすがに見失っただろう。俺はどんなヤバイポリ公からもずっと逃げおおせて来た!
飛びネズミのアーロンの名は伊達じゃねぇ」
水上機はしばらくトンネル内を突き進み、台地の裏の出口から外へと出た。
「あ、兄貴! あれ!」
「げぇぇっ!」
斜め右上45度、追跡していた戦闘機が大きく弧を描いて機首をこちらに向けながら、急降下している姿が見えた。
戦闘機のノーズが再び火を噴く。
バスバスバスバス……ボッ…………
水上機の胴体に無数の穴が開き、発火、そして爆発を起こす。
一瞬早くパラシュートを背負って左右の扉から飛び出した悪漢二人を残して、水上機はそのまま山肌に突き進み、爆発した。
***
地面にフワフワと降りた二人の悪漢を出迎えたのは、パトカー3台にポリス10名。
もちろん即逮捕である。
ポリスの一人が空を見上げながら無線機のスイッチを入れる。
「こちら交通課地上班、銀行強盗犯2名を逮捕した」
「こちらクリフ・ファルコン・セブン、そうか、よかった。任務は完了だ。このまま中央署へ向かう」
「いつも通り見事なお手並みだキース。飛びネズミのアーロンは他のシティのポリスがことごとく捕まえるのに失敗して来た大物だ。
まぁたお前と、愛機シュミッツの武勇伝が増えちまったな」
「別に給料上がんねぇだろ? 俺には関係ねぇよ。じゃぁ後は頼んだぞ」
戦闘機は最後に一回、ポリス達の上空を機体を傾けてかすめ飛び、片手でサムズアップして見せるとそのまま飛び去った。
***
大きな幹線道路を跨ぐ広大な歩道の上で、ピンクの髪のポニーテイルの二十歳前後の日に焼けた美人がポシェットを肩にかけたまま手すりを掴んで遠くを眺めている。
その左右に同年代くらいの女性二人が駆け寄り、同じように手すりを掴む。
全員高身長でスタイル抜群の美人、ピンク髪の女性はその中でも別格かつ、巨乳である。
「凄い銃撃戦だったわねシンディ。私達あの飛行機がぶつかって来ると思って生きた心地がしなかったわ」
「……あれはダーリンの愛機、シュミッツだったわ……」
「えぇ? シンディの彼氏の……たしかキースさんだっけ? 大丈夫かしら、前を飛んでた飛行機機関砲を撃ちまくってたわよ?」
「あれは機関砲じゃなくて違法改造して備え付けたトミーガンね。あの程度じゃダーリンはやられないわ」
「あんな……レーシングカーより早く飛び去ったのによく見えるわね……」
「シンディもクリフ・ファルコンズの隊員だからねぇ……」
遠くからプロペラ機の音がかすかに聞こえ始める。
「あっ、ダーリンが帰って来たわ!」
「彼女……プロペラエンジン音だけで隊員を見分けられるんですって……」
「すっご……」
キースが乗ったレシプロ戦闘機、シュミッツは速度を落としながら歩道橋の方へと進む。
「ダ――リ――ン!」
シンディが二人の女性の真ん中でジャンプしながら手を振る。
シュミッツは一旦大きく空中へ飛び上がると、旋回して近くのビルの間に消えた。
それを見たシンディがそちら方面へと駆け出す。
「ダーリンが載せてくれるわ、一緒に行きましょう」
「えぇぇ、クリフ・ファルコンズの飛行機に乗れるの?」
「やったぁ!」
***
シュミッツは二車線道路の真ん中に着陸し、風防を開いていた。
中は操縦席と後部座席があり、比較的広めである。
……二人で乗る分には。
「シンディ、お前を乗せるという合図はしたが……」
「いいじゃない、さぁ、早く進まないと後ろが渋滞よ!」
操縦桿を握る俺。
その後ろ、背もたれとの隙間に無理やり入り込んで俺の首に後ろから両手を回し、巨乳を背中に密着させるシンディ。
後部座席ではシンディの友達二人がぎゅうぎゅうになって並んで座っている。
「仕方がない……進むぞ……皆近くの物につかまって」
「きゃ――! ダーリン最高ぉぉ!」
「すご――ぃ! レシプロ・ポリスの飛行機って中こんななのね」
「これ一機3億円くらいするらしいわよ……」
「やれやれ……こりゃ飛ぶの無理だな……」
「シュミッツはダーリン専用の特殊機体だから10億円以上よ」
「ワ――ォ……」
シュミッツは後ろに渋滞を作りながら、道路の上を車のように進んでいった。