或る献血の一生
ある日会社全体で献血をしなさいと指令が下った。
各個人数分単位で献血を受けないといけない。
私は昔喘息を患って、注射に対する不安が人一倍多かった。
本番前に一度注射をされるのだが、私はそこで気分が悪くなり、ダウン。
吐き気がし、周りの空間が少し歪んで見えた。
「大丈夫ですか?」
「安静してくださいね」
会社では「もっと頑張れ」と叱咤される事は多いが
優しく声をかけられたことはなかった。
だいぶ気分がよくなり、起きようとしても
「まだいけません」と言われる温かさ。
会社へ戻り、色んな人から
「大丈夫?」と声をかけられたが
医者にまさる大丈夫の重圧さはなかった。
医者の言葉は何よりも重い。