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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
壱章 異世界に放り出された無能
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-無能だって陰陽師になれる-

 

「どうしてこうなった……」


 天音は今一定間隔に宙に浮かぶ呪符に囲まれていた。

 月影に与えられた和服は動きやすいのだが、まだ不慣れだ。

 呪符の一枚がチカッと輝くと同時に、高速のエネルギー弾のような物が発射される。


「もぎゃああ!」

「なんつう悲鳴あげてんだ……」


 エネルギー弾は見事に天音の股間にクリーンヒット。

 天音は震えながら天を仰ぐ。


「基本がなってねぇ……こっちに来い」

「うぅ……わかりましたよぉ……」


 道場の真ん中に震えながらあぐらで座る。

 正面に月影も同じように座る。


「お前、《呪力》は練れるか?」

「はぃ?」

「まためんどくせぇ……てめぇは無知か……」


 一時間ほどかけて呪力の練り方を教えてもらい、実践に移る。

 月影曰く、なかなか覚えがいいそうだ。

 やった。


「お前の呪力の《色》を見ねぇとな」

「色?」

「そうだ。呪力は人によって色が違う。そんでもって、その色の系統によって使える呪符も限られる訳だ」

「なるほどね。じゃっ、ねるねるねるね! うりゃぁぁ!」

「《暗めの紫》か……また珍しい色じゃねぇか」

「おぉ! 期待!」

「何に期待してんだか……紫は攻撃型だなぁ……」

「期待通り! 流石勇者になる男、俺!」

「はいはい……使える呪符も調べねぇとな」


 どうやって?と聞く前に月影が一枚の呪符を取り出す。

 それから、大量の呪符を周りに散りばめ、ブツブツと詠唱を始めた。

 すると、何枚かの呪符がぼんやりと輝いて宙に浮かんだ。

 その数およそ十枚。


「へぇ……なかなかの数じゃねぇか」

「なにこれ?」

「お前が使える呪符だ」

「本当か!? やったぜ! ちなみに師匠は何枚?」

「俺? 全部だよ」

「は? 師範代だから?」

「馬鹿言え。俺の呪力の色は黒だ。黒は全てを兼ね備えるって訳だ」

「チート!?」

「ちーと? がなんだか知らねぇが、お前じゃ相手にもならねぇよ」


 くそぅ……師匠がチートだなんて聞いてない。

 パッと見、五十枚もの呪符がある。

 それを一つ一つ覚えているというのならとても尋常ではない。


「師匠……やばいな……」

「お前も俺くらいにならないと困るけどな」

「しょ、精進いたしますぅぅ」


 宙に浮かぶ呪符を拾い集め、長方形のケースに入れる月影。

 近くにある棚の引き出しをいくつか開けて中から呪符を取り出して、更にケースに詰める。


「そういえば、呪符ってどうやってそんなに増えるんだよ……その棚に入れてたら勝手に増えるとか?」

「あぁ? 馬鹿も大概にしろ。全部書いてんだよ」

「はぁ!? これ、全部!?」

「当たり前だろ……まぁ、書いてるのは俺じゃないがな」

「え? じゃあ、誰だよ」

「鈴花だ。あいつは武器は下手だが呪符の扱いにおいては俺をぶっちぎって追い越してる」

「まさかの妹さんまでチート!?」


 何を言ってるんだと言いながら月影は天音に先ほどのケースを手渡した。

 なになに?と天音がケースを眺めていると「呪力を流せ」と月影が言うので流してみる。

 すると、シャコンという心地いい音が響きケース後ろからベルトが伸び、天音の腰に巻きついた。


「おぉ!」

「一応これが呪符入れ兼陰陽師である証だ。だが、勘違いするなよ? お前はまだ陰陽師じゃない」

「え? まじすか」

「当たり前だ。陰陽師になるには王国騎士団の時みてぇに模擬戦で優勝しなけりゃなんねぇ」

「えぇ……」

「試験は来週だ。それまでにお前を優勝できるまでに鍛えてやる。ついて来れるか楽しみにしてるぜ」

「ぐぬぬ……やってやんよ!」


 それから一週間。

 血の滲むような特訓 (死ぬかと思った)はなんとか終了した。

 月影流陰陽術の得意な武器、刀の基本的な使い方。

 さらに、呪符の詠唱も三枚は暗記できた。

 今は試験が行われる会場の待機室にいる。

 準備は完璧。

 ちゃんとやれば負ける通りは無いと月影からの褒め言葉ももらった。

 俺はやれる……

 天音の目は野獣のように鋭く輝いていた。


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