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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
参章 第二次霊大戦
31/33

-裏切りのゴースト-

 まだ完全に終わったわけではないが人類は敗北した。

 下位の王国騎士は全滅。

 新しくなった騎士団序列の三位が重症。

 陰陽師は二桁を越える宗派が全滅した。

 騎士団と陰陽師、両方を合わせても残りは百人もいないだろう。

 おまけに序列一位は行方不明。

 二位も戦闘の結果、神力を使い果たし固有魔法を使用した代償を受けていて戦えない。

 全体の士気は下がりきっている。

 上位騎士が一人でも死んだ場合、今の戦線は保てなくなるだろう。

 今回の作戦の指揮官の一人、天野(あまの) 鈴花(すずか)は意識不明状態から回復。

 もう一人の指揮官、八重樫(やえがし) 天音(あまね)はステージ(ファイブ)との戦闘に敗北。

 意識不明の重体で、呪装も破壊されている。

 現在、医師の東雲(しののめ) 直智(なおとも)の元で治療中だ。

 戦局は絶望的。

 この戦争の勝率は十パーセント未満。

 これが現在の人類側の状況である。






 トントンと病室のドアをノックして開ける。

 鈴花はドアの先にいた二人に目を向けた。


「先生、天音さんの具合はどうですか?」

「そうだね。体にはなんの問題もない。だけど……彼の心は壊れてしまったかもしれない」

「……っ! そうですか……」


 病室にいたのは気を失ったまま眠り続けている天音とその担当医を務める東雲先生だった。

 真っ白な病室の真っ白なベッドで真っ白な毛布に包まれている天音はもう帰ってこないような雰囲気を醸し出している。

 そう、彼の体の傷は直智が全て治療した。

 だが、心に受けた精神への傷は医者には治せない。

 鈴花の表情が目に見えて曇る。


「鈴花君、仮に天音君が目を覚ましたとしても彼はもう戦えないんじゃないかな…………」

「そんな! そんなこと……言わないであげてくださいよ……」

「わかっている。けれど、治す方法は二つだ。彼が自力で目を覚ますか、精神干渉系魔法を使うか、だ。後者は切り捨てるしかない。この魔法を使えたのはずっと昔の王国騎士団長だけだ」

「それ以外の方法は…………?」

「残念ながら……僕には思いつかない」

「さ、探しましょう……? その精神干渉系魔法を使える人間を……」


 鈴花は涙目になって訴える。

 これ以上大切な人を失いたくない。

 だけど、方法が…………


「パンパカパーン! 僕のこと呼びましたか?」

「な……っ! 霊!? どうしてここに!」

「なぬ! 僕は戦えないぞ!」


 地面にできた黒い渦から現れたのはダリンと戦った時に一緒にいた霊、セリーだった。

 呪符を持っていなかったのが裏目に出た。

 今の鈴花には勝機はない。

 だが、よく見るとセリーはボロボロの服を着ていて顔には擦り傷ができている。


「まぁまぁ、落ち着いてください。僕は戦いに来た訳ではありませんよ」

「ではなぜ?」

「ちょっとうちのボスみたいな霊に裏切り者扱いされて……あの新しいステージ五におっかけられてこの始末といいますか……あはは」

「は? 面白みのない嘘ですね。ここで死にますか?」

「嘘だなんて〜。それに、あなたじゃ僕は殺せませんよ」

「くっ……! じゃあ何をしに来たんですか!」


 セリーの飄々とした態度に腹が立つ。

 殺すべきか……

 鈴花が呪装を解放しようとした瞬間、セリーは聞き捨てならないことを言った。


「僕のライバルを救うためさっ! ついでに、戦線に加えてほしいな〜」


 セリーの言葉に周りの空気は凍りついた。

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