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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
参章 第二次霊大戦
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-女神再臨-

 

「いいね……そろそろこのはの出番かな……?」


 神崎(かんざき) 木乃葉(このは)は愛銃である《騎装アテナ》に話しかける。

 けれど返事はない。

 アテナは全騎装の中でも例外中の例外中なのだ。

 全ての騎装は鎧の形をとるのに対して、アテナだけは二丁拳銃の形をとる。

 更には人格を持たない。

 だから木乃葉は一人ぼっち。

 いつかたくさんの友達に囲まれたい。

 戦って勝てば有名になれて、友達もたくさんできるはず。

 もっと勝つぞ。

 このははさいきょーになるんだ!

 木乃葉は心に誓って大空へ羽ばたいた。


「このはが終わりにしてあげる〜!」






「なんでいきなり斬れ味が上がってんだぁ……?」

「お喋りもそろそろそこまでですわっ!」

「ちっ……! めんどくせぇな!」


 確実にダメージを与えられている。

 だが七十パーセントも解放しているのに腕を斬りちぎることもできないとはなかなか頑丈だ。

 なんとなく予想はしていたが……


「あなた……一体何者ですの?」

「戦闘中にお喋りたぁ、えらく余裕があるみてぇだなぁ?」

「答えなさい! わたくしたちにはまだ奥の手がありますわ」

「へぇ……そりゃ楽しみだ。だが……それは俺もなんだよなぁ!」

「くっ……」


 体重をかけた必殺級の突きを放つ。

 だが、それはダリンの右手で掴み取られた。

 その右手からは大量の血が溢れている。


「正気ですの……? クラウソラスの切れ味を知ってそんな……」

「いひっ! あめぇんだよ騎士様よぉ! "カースドエンチャント"!」

「ぐあ…………っ!!」


 ダリンの左腕が雪音(ゆきね)の腹に突き刺さる。

 グシャッ、と不快な音が体内に響いた。

 内蔵がグチャグチャになったかもしれない。

 ヌアザの回復力は上位騎装の中でも底辺。

 騎装を解放したところで戦闘続行は難しいかもしれない。


『まずいぜ主。下手したら死ぬぞ』

「そ、そんなことくらい…………わかっていますわ…………けれど……」


 わたくしが倒されたらこの戦いは負けてしまう。

 その言葉が発されることは無かった。

 空から地に突き刺さった光がそれを遮ったからだ。


「お疲れ様新人ちゃん! ここからの戦いはこのはが貰っちゃうね!」

「木乃葉さん…………まさか、封印が…………」

「ちっ! またてめぇかクソガキぃ!」


 光の中から現れたのは団長のいなくなった現王国騎士団の最強の力を持つ者、木乃葉だった。

 身に纏う神力の衣は強く輝き、全てを阻もうとする。

 両手に持つ二丁拳銃、《騎装アテナ》の輝きは全てを穿とうとする。

 彼女を相手にしたものは近づくことすらできずに蜂の巣にされて死んでゆく。

 戦女神の堂々たる顕現である。


「あのときゃ、ちっとばかし痛い目にあったが……今度はそうはいかねぇぜ? ここで死ねや」

「おじちゃんにできるかな? このは強いよ?」

「なめんじゃねぇぞ! "エクステンション"!」

「ねぇアテナ、全力で踊ろっかっ!」


 ダリンが全力を解放。

 その副産物として大量の呪力が破壊力を持って溢れ出る。

 だが、その破壊力の波を全て防ぎきるのはアテナの展開する結界。

 アテナの固有魔法"イージス"。

 アテナの性能に則り、使用者の神力の濃さによって強度が変わる防御魔法だ。

 これを破れる者はそういない。


「"スレッジフィスト"!」

「無駄無駄! 見たところ、君の攻撃じゃこのはのイージスは破れないよ!」

「ちぃっ! 楽しませてくれるぜ……」

「このははつまんないな〜」

「なんだとてめぇ……」

「つまんないって言ったの」


 初めの二発でダリンの両足を吹き飛ばす。

 これでもう歩けない。


「だからさ…………」


 次の二発で両腕。

 これでもう攻撃できない。


「死んじゃっていいよ」


 あまりに一瞬の出来事に何が起きたかわかっていないダリンに二つの銃口が向けられる。

 戦女神は笑顔で、容赦なく引き金を引いた。


「おやすみ」


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