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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
参章 第二次霊大戦
27/33

-謎の影-

 雪音(ゆきね)さんが戦ってる……

 早く私も戦い始めなければ……

 鈴花(すずか)は付近の建物の屋根の上を走ってダリンの後ろに回り込もうとしている。

 ステージがなにかはわからないがさすがに挟み撃ちでかかればステージ(ファイブ)も打ち倒せるはずだ。

 そう思っているうちに距離はあるがダリンの後ろを取れた。


「ここで倒させてもらいます……!」


 ダリンの方へ跳ぶために建物を強く蹴った瞬間、黒い影が目の前に現れた。

 そして、空中に無防備に晒された鈴花の体を地面に叩き付けるように蹴り落とす。


「困るんだよなぁ……この人がやられるの」

「お前はさっきの…………!」

「影が薄くってな……まぁ、お前らを皆殺しにしろって王に命令を受けてんだ。霊になったばかりでよくわからないが、俺の初仕事って訳」

「お前……一体何を……!」

「何をって、お前らを殺すだけだって。名乗るぜ、ステージ五、《刹那》のリンネ……せいぜい足掻きな! 陰陽師!」


 リンネと名乗った新たなステージ五が空中を蹴った。

 右手には黒く輝く短刀が握られている。

 まずい……このままでは……!

 戦闘不能に陥るダメージを予感しそれでも体が動かないので覚悟を決めたその時…………空中にいたせいでリンネのフードがめくれ上がり素顔が晒された。


「ちっ……このフード邪魔だな……」


 リンネはそう呟いて鈴花のうなじに手刀を落とした。

 なぜ短刀を使わずに手刀で……?


「…………っ!」


 鈴花は動けなかった。

 無防備に手刀を受けたことにより意識が失われていく。

 その過程でも鈴花は呆然としていた。

 "どうして霊が《お兄様》の顔をしているの……?"






「セリー……またお前か……!」

「いいですね、その殺意。僕、そういうのときめいちゃいます」

「黙れえええ!」


 刀を勢いよく横に凪ぐ。

 もちろんセリーにはかすり傷一つ付けられない。

 セリーは冗談めかしたように表手を軽く上げた。


「おっと! 危ないじゃないですか〜。今日はあなたに見せたいものがありましてね……これです」

「剣の……持ち手……?」


 ヘラヘラしながらセリーが服の内側から取り出したのは一本の剣の持ち手だった。

 だが、どこかで見覚えのあるデザインをしている。

 たしか会議中の資料に…………っ!?


「《聖剣エクスカリバー》…………!」

「正解です! いやはや、お見事ですよ」

「それはそいつに選ばれたやつにしか使えないはずだ! そんな見え透いたハッタリ、通じないぞ!」


 《エクスカリバー》ほどの騎装となると人が騎装を選ぶのではなく、騎装が人を選ぶのだ。

 もちろんその騎装の人格によって。

 なのでエクスカリバーに認められていないセリーには使えないはずだ。

 だが、その予想は大きく外れた。

 ブゥンッ、という音とともに紫色の呪力がエクスカリバーから溢れた。

 それは一瞬にして剣の形をとる。


「ハッタリかどうかは……これを見てからどうぞ?」

「てめぇ……どうやってそれを……!」

「企業秘密です。ということで、ここで死んでください」


 資料で確認したものには《剣の切り口は全て分子一つ分だけの大きさであり、ありとあらゆるものを斬ることができる》という性能を持つ実に厄介な武器なのだ。


「呪力の塊なら、こっちも同じもので返すだけだ!」

「まったく……あまいんですよ」


 天音は刀に呪力を込めて衝撃波を放つ。

 だが、エクスカリバーの刀身に触れた瞬間あっけなく拡散してしまった。


「馬鹿な…………」

「あなたの考えは正しい。僕も同じ方法でこれの持ち主を殺したので。ただ…………僕とあなたとの呪力には差がありすぎる。単に君の呪力濃度が薄いんですよ、しかも、圧倒的に、です」

「舐めるなよ……! "無影斬月"!」


 天音の得意とする刀術で攻撃する。

 刀身にありったけの呪力を込めて渾身の一振りを……


「ふむ。もはや語らず……あなたは弱くなりすぎた。全てに迷いが見えますねぇ……面白くないので再戦は次回にでもしますかね。それまでに死なないでくださいね、八重樫 天音」


 キンッ、と澄んだ音が響き天音の呪装"月詠ノ刀"が半ばで断ち切られた。


「あ……っ」

「それではまた」


 そう言い残してセリーは闇の中に消えていった。

 残された天音は何もできなかった。


「あ……う……うわああああああああ!」


 己の弱さを実感するのみだった。

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