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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
参章 第二次霊大戦
23/33

-戦争前の休み時間-

 翌日、編成の会議には多くの王国騎士団と様々な流派の陰陽師のリーダー格と思われる人物達が集まっていた。

 その数およそ百人。

 陰陽師たちは弟子などもいるのでもっと増えるだろう。

 鈴花(すずか)がトントンと天音(あまね)の肩を叩いた。


「これが天音さんのグループです。上の方々が先に分けてくれていたみたいですよ」

「ん、ありがと。ってことは俺達は手順を説明すればいいってことか」

「そうなりますね。がんばりましょう」

「おう」


 天音と鈴花はテキパキと作業を進めていく。

 グループといってもこちらから攻め込むことは出来ないので、守護軍のような役目だ。

 決められた範囲に数人ずつばらまき、霊が現れたらその範囲のメンバーを集めて叩く。

 という戦法らしい。

 果たして上手くいくのか。

 などと天音が考えていると、鎧を鳴らす音が聞こえた。

 音のする方向に振り向いてみると十人ほどの王国騎士団の騎士がいた。


八重樫(やえがし)さんと天野(あまの)さんですね? わたくしは王国騎士団上位騎士、榛原(はいばら) 雪音(ゆきね)と申しますわ」

「同じく上位騎士、瀬戸(せと) 龍斗(りゅうと)

「上の命令で助っ人として参りましたわ。総勢十人程度ですが、こき使ってやってくださいまし」


 現れたのはショートボブの金髪をたなびかせる幼さを残す少女と少し長めの茶髪の少年だった。

 他の騎士たちは上位騎士以外は顔を見せられないと言って性別すら不明。

 この十人が原谷(はらや)の言う護衛のようなものなのだろう。

 確かに心強い。

 龍斗はともかく、他の九人からはなかなかの剣気を感じ取れる。

 特に上位騎士たる雪音の剣気は凄まじかった。

 龍斗は謎が多そうだ。

 龍斗を除く全員が腰に剣を帯びているのに関わらず、彼だけは腰に短刀を帯びていた。

 まぁ、上位騎士なのだから実力は確かなのだろう。

 作戦会議の結果、天音側には龍斗と四人の騎士。

 鈴花側には雪音と四人の騎士が護衛につくことになった。

 この作戦は明日から行われる。

 天音は全員によく体を休めるように伝え、自分も休憩をとることにした。






 いつの間にか寝ていたようだ。

 目を覚ますと自分が壁にもたれかかって寝ていたことに気づいた。


「ん……ふぁ〜……っ!?」


 驚いたのは仕方がない。

 なぜなら、目の前には普段よりも薄い生地の和服に身を包み、無防備にも谷間を覗かせる鈴花がいたからだ。


「ふ、ふぁ!? 一体何事で!?」

「あ、天音さん! 落ち着いてください!」


 お風呂あがりなのだろうか。

 美しいロングの黒髪はしっとりと濡れていて、肌も少し赤みが指してなにやらいけない雰囲気を出していた。


「ど、どうした?」

「す、少し話がありまして……」

「話……?」

「あの……先日、戦争が終わってから話すと言っていたことなんですが……」


 鈴花が膝を抱え込むように座り、壁にもたれかかった状態で立っている天音を上目遣いで見た。

 反則級のかわいさだな、と不覚にも思ってしまう。


「私、霊が怖いんです」

「え……? 怖いって、見た目とかが?」

「いえ、恐怖症と言った方がいいんでしょうか……小さい頃から、霊を見ると体が震え始めてまともに動かなくなりました……」

「え、でも、俺が見た限りダリンとは戦えていたような……」

「そう! そうなんです! なぜか天音さんと戦っていると不思議と力が湧いてくるというか…………って私、何言ってるんですかね! 今のは忘れてください!」


 鈴花がボッ、と顔を赤らめる。

 目と目を合わせているのが急に恥ずかしくなりつい逸らしてしまう。

 だが、逸らした先には谷間があった。

 あ、やべ……と思ったのも遅く、鈴花が言葉を発したが、全く予想外のものだった。


「天音さんもその……お、おっぱいが好きなんですか……?」

「は、はぅえ!? そ、そそそそそんなことないです!」


 予想外すぎる。

 むしろ斜め上をいっている。

 いきなりすぎる質問に動揺を全く隠せない天音。

 これはラッキーチャンスなのか?

 フラグなのか?


「あの……よかったら……も、揉んでみます……?」

「ふぁ!? いいの!? じゃなくて、はぇ!?」

「天音さんになら……いいですよ……? そ、その、霊恐怖症を克服できたお礼と言いますかなんと言いますか……って恥ずかしいので言わせないでください!」


 更に斜め上を豪速球。

 鈴花は顔から湯気が出るのではないかというくらい顔を真っ赤にしながら、徐々に天音の方に近づいてきた。

 逃げることも出来ず、目と鼻の先に鈴花がいる。


「は、早くしてください…………」

「じゃ、じゃあ、遠慮なく……」


 恥ずかしそうにつぶやく鈴花に理性が吹き飛び、胸に手を伸ばす。

 ふわふわとしたマシュマロのように柔らかい。

 できればずっとこのまま揉み続けたいというくらいだ。


「んっ…………ぁ…………」


 鈴花が艶めかしい声をあげた。

 ふと、揉んでいるうちに変な感触に気づく。

 これはもしかして……


「鈴花……もしかして……下着、着けてない?」


 そう言って少し強めに揉んでみる。


「ひゃんっ!? わ、私としたことがこんなときに限って…………! や、やっぱり忘れてください!!!」


 至福の感覚が手から離れる。

 鈴花はそのままヒュイーンと走り去ってしまった。

 こ、これがフラグ……?

 幸せすぎないか!?

 馬鹿な考えが頭に浮かぶ。

 戦争が始まるかもしれないというのに何をしているのか。

 ついつい煩悩に負けてしまった。

 だが、天音の頭の中にはあの柔らかさがしばらく残り続けていた。

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