-少女の秘密-
《王国騎士団》。
トーナメントを勝ち抜き、頂点に君臨した強者に与えられる職業。
《霊》を殺し、世界に安寧をもたらす神の使い。
自らの力を《神力 (陰陽師でいう呪力)》に変換し、《騎装 (陰陽師でいう呪装)》という神に与えられた武器を用いて戦う。
その戦闘力は一人で一個旅団分を誇る。
神崎 木乃葉の話をしよう。
彼女は実力上、王国騎士団の序列二位に君臨するれっきとした実力者。
相棒は《騎装アテナ》。
大きめのハンドガンの形をした二対の拳銃で固有能力として『使用者の神力に応じて弾丸の威力が上昇し、結界をより強固にする』という能力をもつ。
もちろん木乃葉の神力は一級品。
質も量も他の騎士とは比べ物にならない。
そして、彼女には秘密がある。
それは『天音と出会うほんの少し前までアテナと共に封印されていた』ということ。
木乃葉がアテナと共に行く場所にはいつも戦いが起こった。
まるで存在が戦いの開始を示すゴングのように。
何代も前の騎士団長は考え抜いた結果、封印することにした。
彼女はその実力をコントロールしきれずに一般人に多大な被害をもたらしたからだ。
昔の木乃葉を知るものは彼女の名をこう呼ぶ。
"破壊の戦女神"と……
「とりあえず、事情はわかった。このははこれからどうする?」
「そりゃもちろん! 戦うよ?」
「それしかできないからか?」
「何言ってるの? 当たり前だよ!」
「そうか……お前はお前でがんばれよ。俺達は俺達のやり方で戦う」
天音は鈴花と共に踵を返してこのはの家を出た。
このはは彼女なりの理由で戦うのだ。
天音たちの目的は復讐。
世界を救うなんていつの間にかついでになってしまった。
これで……いいのだろうか……
「そういえば、天音さんには私の呪力の色、教えましたっけ?」
「ん、いや、知らないな」
「私の色は《青》です。それも、かなり純色に近いです」
「《青》って何特化だっけ?」
「そうですね。自己強化に優れていると聞きます。呪符を書けるのもこの色の恩恵があるからなんですよ」
「なるほど……」
帰り道、のほほんとそんな会話をしていると、鈴花の携帯型端末に着信があった。
「こちら陰陽師の天野です。なんの御用でしょう?」
『《陰陽師会》の原谷だ。お前と八重樫には直ちに本部へ来てもらいたい。以上だ』
「わ、わかりました」
鈴花が少し怯えたような表情になる。
電話の相手はそれほど目上の相手なのだろうか?
「天音さん、《陰陽師会》から招集命令がありました。急いで向いましょう。何やら嫌な予感がします……」
「わかった。急ごう!」
天音と鈴花は"兎跳"を使って宙を走るようにして本部へ向かった。
跳び続けること約十分。
ようやく本部に到着した。
入口の案内人の指示に従い、大きなビルの十五階でエレベーターを降りた。
案内された部屋の扉を開ける。
「待っていたよ未来ある陰陽師たち。私が原谷だ」
「お待たせしました。天野と八重樫です。話とは?」
髭の生えたイカツイ顔のご老人、原谷は腕を組んで話を始めた。
見た目はヤクザとかマフィアの秘密会議にも見えなくはない。
「君たちが王国騎士団の神崎と接触したとの報告を受けた。彼女は騎装を使っていたか?」
「はい」
「そうか……」
「どうしましたか?」
「お前達は知らぬかもしれんが、学校で習ったことはあるだろう。《霊大戦》……聞いたことはないか?」
「なんじゃそりゃ……」
「天音さんは黙っててください。あります。霊の恐怖を人類が思い知った戦争ですよね?」
「そうだ……」
何やら重い話になっているようだが、異世界人の天音には何が何やらでなにもわからない。
しばらくの間をおいて、原谷が口を開いた。
「起こるかもしれない……二回目の《霊大戦》が……」




