-謎の記憶-
『お兄ちゃん見て見て〜! このお花キレイでしょ?』
『そうだな、キレイだ』
『えへへ。でしょ〜?』
『おう』
『わーい! お兄ちゃん大好き!』
誰なんだ……
自分のことをお兄ちゃんと呼ぶ少女。
思い出したい。
だけど、名前を思い出せない。
まるで、何かに封じられているかのように。
とても大切な人な気がする。
記憶は違う場面に移り変わる。
自分が昔住んでいた街が炎に包まれていた。
目の前には記憶にある少女がいる。
天音と少女との距離がどんどん離れていく。
消防隊員が自分を担いで離れていく。
必死に手を伸ばしたが届かない。
最後に少女の声が聞こえた。
自分の最後だとわかっていながら、笑顔を浮かべて……
『お兄ちゃんの嘘つき』
「…………っ!!」
目が覚めた。
天音はベッドの上にいた。
そうだ、ショッピングモールで気を失って……
「なんだったんだ……さっきの…………」
確かに自分の街が火災でとてつもない被害にあった。
けれど、さっきの記憶だけが抜け落ちたかのようにない。
「あ、起きた! お姉ちゃん! お兄ちゃんが起きたぞ〜!」
「ほんとですか! このはちゃん、ありがとう」
「うんっ!」
このはが天音に気づいて鈴花を呼んだようだ。
そういえば、この女の子が俺を気絶させたんだっけ……恐ろしいな……
「おはようございます、天音さん。気分はどうですか?」
「おはよ……お陰様でスッキリだよ。ここは?」
「このはちゃんのお家です。私たちの屋敷よりも近いというのでお邪魔させてもらいました」
「広いな……このはの両親は?」
「いないそうです。ずっと一人で暮らしていたみたいで……」
一人……
この少女はこの歳で一人暮らしをしているようだ。
「このはは強いからな!」
本人はこのように堂々としている。
不思議と守りたくなってしまう。
「そう強がるなよ。一人じゃ何があるかわからないからな。何かあったら『絶対』助けてやるからな」
「うん! わかった! お兄ちゃん大好き!」
ズキンッ、と再び頭痛が襲う。
この会話に覚えがある。
だが、このはとのやり取りではない。
「なんなんだ……何の記憶なんだよ……!」
「天音さん……?」
「どーしたの? お兄ちゃん」
二人の顔が心配そうな表情になる。
突然。
爆音と共に家が揺れた。
「!? 何が!?」
「天音さん! 《霊》の気配です! 戦闘態勢を!」
「お、お化けが来るのかー!?」
「このはちゃんは下がってて。これは私たちの仕事ですから」
この家がある場所はとある山奥だ。
たまたまここに霊が来るなんておかしい。
誰かを……狙っているのか?
棚に置いてあった呪符ケースを取り、外へ出る。
鈴花もそれに続いた。
「…………何が?」
辺り一帯は砂煙に覆われてよく見えない。
ブォンッ、と何かによって砂煙が一瞬で払われた。
「お前が八重樫 天音か! 俺の名はダリン! ステージ五、《豪腕》のダリンだ!」
現れた巨漢の男は大声でそう名乗った。




