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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
参章 第二次霊大戦
18/33

-謎の記憶-

 

『お兄ちゃん見て見て〜! このお花キレイでしょ?』

『そうだな、キレイだ』

『えへへ。でしょ〜?』

『おう』

『わーい! お兄ちゃん大好き!』


 誰なんだ……

 自分のことをお兄ちゃんと呼ぶ少女。

 思い出したい。

 だけど、名前を思い出せない。

 まるで、何かに封じられているかのように。

 とても大切な人な気がする。

 記憶は違う場面に移り変わる。

 自分が昔住んでいた街が炎に包まれていた。

 目の前には記憶にある少女がいる。

 天音(あまね)と少女との距離がどんどん離れていく。

 消防隊員が自分を担いで離れていく。

 必死に手を伸ばしたが届かない。

 最後に少女の声が聞こえた。

 自分の最後だとわかっていながら、笑顔を浮かべて……


『お兄ちゃんの嘘つき』






「…………っ!!」


 目が覚めた。

 天音はベッドの上にいた。

 そうだ、ショッピングモールで気を失って……


「なんだったんだ……さっきの…………」


 確かに自分の街が火災でとてつもない被害にあった。

 けれど、さっきの記憶だけが抜け落ちたかのようにない。


「あ、起きた! お姉ちゃん! お兄ちゃんが起きたぞ〜!」

「ほんとですか! このはちゃん、ありがとう」

「うんっ!」


 このはが天音に気づいて鈴花(すずか)を呼んだようだ。

 そういえば、この女の子が俺を気絶させたんだっけ……恐ろしいな……


「おはようございます、天音さん。気分はどうですか?」

「おはよ……お陰様でスッキリだよ。ここは?」

「このはちゃんのお家です。私たちの屋敷よりも近いというのでお邪魔させてもらいました」

「広いな……このはの両親は?」

「いないそうです。ずっと一人で暮らしていたみたいで……」


 一人……

 この少女はこの歳で一人暮らしをしているようだ。


「このはは強いからな!」


 本人はこのように堂々としている。

 不思議と守りたくなってしまう。


「そう強がるなよ。一人じゃ何があるかわからないからな。何かあったら『絶対』助けてやるからな」

「うん! わかった! お兄ちゃん大好き!」


 ズキンッ、と再び頭痛が襲う。

 この会話に覚えがある。

 だが、このはとのやり取りではない。


「なんなんだ……何の記憶なんだよ……!」

「天音さん……?」

「どーしたの? お兄ちゃん」


 二人の顔が心配そうな表情になる。

 突然。

 爆音と共に家が揺れた。


「!? 何が!?」

「天音さん! 《(ゴースト)》の気配です! 戦闘態勢を!」

「お、お化けが来るのかー!?」

「このはちゃんは下がってて。これは私たちの仕事ですから」


 この家がある場所はとある山奥だ。

 たまたまここに霊が来るなんておかしい。

 誰かを……狙っているのか?

 棚に置いてあった呪符ケースを取り、外へ出る。

 鈴花もそれに続いた。


「…………何が?」


 辺り一帯は砂煙に覆われてよく見えない。

 ブォンッ、と何かによって砂煙が一瞬で払われた。


「お前が八重樫(やえがし) 天音か! 俺の名はダリン! ステージ(ファイブ)、《豪腕》のダリンだ!」


 現れた巨漢の男は大声でそう名乗った。

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