-一人ぼっちの少女-
天音は現在、崩壊したはずの街のショッピングモールにいた。
辺りの風景はいつもとなんら変わりのない。
なぜこんなにも早く街が復興したかというと、街の見習い陰陽師たちが「先輩の陰陽師が命懸けで守ってくれた街を今度は俺達が守る番だ!」などと言ってそれぞれの得意な陰陽術を駆使して見事に直したのだ。
そして、なぜ天音が鈴花と共にここにいるかというと……
「天音さん、今日はショッピングに行きましょう!」
「はぇ?」
「最近、戦ってばかりと聞きましたので少しは休養も必要かと」
「え、いや、そうなんだけど……」
「異論は認めません!」
「そ、そんなことより次の師範代のことが……」
「それはおいおい……」
ということがあったからだ。
正直、大丈夫なのかこの子は……と思ってしまったが、考えはあるらしい。
今は一店目の服屋の中にいる。
「天音さん用の和服を新調しようかと思いまして! ついでに私の物も」
「まぁ、これ師匠のお下がりだし……」
「ということで、ここは和服専門店なので好きに見てくださいね! 私は女性用の方を見てきますので!」
「りょ、了解」
鈴花はステテテテーと楽しそうに走っていった。
よし、自分の服を探そう。
店に並ぶ和服を転々と見ながら天音は思った。
どうして異世界に和服なんて文化あるんだ……、と。
時々同じように思うことがあった。
今でこそ普通に生活しているが、ここは異世界なのだ。
そのうち帰る方法も見つけなければ。
大して帰りたい訳ではない。
「どうせ何も無いんだし……」
ボソッと呟いた次の瞬間、天音は走ってきた少女とぶつかった。
「はふんっ!」
「おい!? 大丈夫か!」
「だ、大丈夫ぅ……」
ぶつかった少女はフラフラとしながら立ち上がる。
明るい茶色の髪を頭の左右で結んでいる、いわゆるツインテールというやつ。
歳は……十歳程度に見える。
「君、両親は?」
「いないよ! 一人で来たの!」
「え!? 名前、聞いてもいい?」
「このははこのはって言うぞ!」
「そうか。俺は天音だ。一人で大丈夫なのか?」
別に幼女が好きだとか、ロリコンだとかではない。
断じて、絶対。
ただ、心配なだけだ。
バチン、と突然、頭の中で何かが弾けた。
『約束だよ、お兄ちゃん』
なんだこれ……!
頭が、脳が思い出すことを拒否する。
体の力が抜けて倒れる。
「ふぁ!? お兄ちゃんどしたの!? こ、このはなにかしたかな!?」
「…………」
「はわわわ! 起きてー! 起きてー!」
このはがビシビシと天音を叩く。
いや、意識はあるんだよ? 体が動かないだけでね?
ビシビシ。
ビシビシビシビシビシビシバコンバコン。
「痛いから!」
「ぎゃああああ! お化けー!」
突然殴られあまりの痛さに声をあげた瞬間にトドメの一撃。
めちゃくちゃ痛い。
「天音さん!? な、何してるんですか!?」
「こ、これには理由が……おぅふ……」
「また死んだぁー!」
鈴花も登場。
もう嫌だ……。
天音は気を失った。
ほろほろ、と涙を流しながら。




