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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
弐章 《霊》の侵略
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-関西弁娘、再び-

 

天音(あまね)さん……あなたが二十代目月影流師範代になることが決定しました」


 直智(なおとも)に安静にしていろと言われベッドで眠ろうとしていたとき、突然、鈴花(すずか)が現れてそう言った。


「俺にはそんな大役……務められない」


 当たり前だ。

 天音は月影流陰陽術を学び始めてまだ一月程度しか経っていないのだから。


「けれど……天音さんしかいないので……」


 鈴花が悲しそうな顔をする。

 きっとまだ月影(つきかげ)のことを気に病んでいるのだろう。

 鈴花にとって月影は共に戦う陰陽師以前に唯一の兄なのだ。

 それを失う辛さは短い間では忘れられないということを《天音も》知っている。


「少し……考えさせてくれ」

「わかりました。こちらが新しいお屋敷の住所となっております。私はここで呪符(じゅふ)の作成に励みますのでご決心なさったらこちらまで」

「わかった。がんばってくれ」


 鈴花は無理矢理作った笑顔を見せて病室を出て行った。

 直智によると明日には退院できるそうだ。

 とりあえず《あいつ》の道場に行って更に強くなる。

 天音は翌日のために睡眠をとることにした。





「お兄様……お兄……お兄ちゃん……」


 天音の病室を出た鈴花はドアにもたれかかって言った。

 私は……お兄ちゃんの死に際を見ることが出来なかった……

 私は一体……どうしたらいいのですか?お兄様……

 脳裏に浮ぶのは小さい頃から眠ったまま目を覚まさない兄の姿。

 涙は流れない。

 そんなもの両親が死んだときと昨日で枯れきってしまった。

 天音さんがダメなのなら私が強くならないと……

 和服姿の少女の決意は固かった。





 退院し、袖の長い和服を着ることで右腕を隠し、天音はある場所へ向かった。

 それは陰陽師になるために戦った相手から貰った紙に印された場所。


「おおきに! えらい来るの早いやん〜! 待っとったで〜」


 そう。

 五十嵐(いがらし) (ながる)

 天音と陰陽師になることをかけて戦ったとんでもない実力者。

 《詠唱なし》で唱えられる陰陽術を得意とし、トリッキーな戦いで相手を翻弄する。

 そして、何故天音が流の元を訪ねたかというと……


「流。頼みがある! 俺に……《無詠唱》を教えてくれ!」

「な〜んや。そういうことか〜」


 強くなるための道。

 それは武器や呪装の扱いだけではなく、陰陽術の早さも含まれる。

 天音はそう考えた。

 そうなると必然的に《無詠唱》で呪符を扱えることは大きなメリットになるのだ。


「ええよ」

「そうだよな……そう簡単に教えてもらえるわけ…………え!?」

「ん? せやから、いいよ? そんかわり、もっかいうちと戦お」

「なっ……」


 流はニコッ、と笑って天音を道場へ招いた。

 天音が修行した道場の倍はある。

 和服に着替えた流が姿を現した。

 綺麗な黒髪とにこやかな笑顔とが相まって、その姿は美しい。

 思わずゴクリ、と唾を飲んでしまう。


「ど〜? ドキッとしてもうた? やーん照れるわ〜」


 流が両手を自分の頬に当ててキャッキャする。

 正直やりずらい。

 だけど、強くなるためだ。

 すると、何も無かった場所に突然人が現れた。

 旗を持っていることから審判と判断できた。


「それでは模擬戦を始めます。相手に降参と言わせた方の勝ちです。それ以外のことは特に問いません。それでは……開始!」


 審判の男が力強くホイッスルを鳴らした。

 かつて月影に習った模擬戦の挨拶を試すことにする。


「月影流陰陽術皆伝・八重樫(やえがし) 天音……いくぞ!」

「朧月流陰陽術皆伝・五十嵐 流……楽しませてな!」


 お互い皆伝を名乗った二人が衝突する。

 天音が力で押し返せないのは、既になんらかの陰陽術が使用されているからか。

 やはり、強者との戦いには己が高められているような感じがする。

 楽しい……

 だが、その優越は一瞬で終わった。

 流が使用した《五枚》の呪符によって……

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