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無能にだって世界は救える!  作者: 結城 夏月
壱章 異世界に放り出された無能
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-無能の異世界転移-

 

 静まり返った自室には一人の少年だけがいた。

 髪は短めに切りそろえられており、くせ毛なのか所々はねている。

 少年は座っているベッドから立ち上がり窓へと向かい、カーテンをゆっくりと開いた。

 大都会である東京では普通見られないというほど、美しい夜空が少年の目に飛び込む。


「きれいだ…………」


 思わず呟く。

 雲ひとつない夜空に数々の星が煌めく様子は誰もが見とれるものであった。

 ズキリ。

 ふと、少年の頭の中を痛みが襲う。

 言葉を発することもできず、うずくまる。


「ぐぅぅ……!」


 痛みは徐々に強くなっていく。

 朦朧とする意識の中、少年は女性の声を聞いた。

『オチロ……』

 少年の意識はそこで途絶える。

 この現象は後に《幽閉の夜空》と呼ばれ、人々を恐れさせた。




 少年、八重樫(やえがし) 天音(あまね)が目を覚ました場所は荒れ果てた荒野のど真ん中だった。


「なんじゃ……こりゃ……?」


 辺りのイメージを色で表すなら茶色。

 木々は弱々しく一枚の葉も生えていない。

 地面は乾燥してヒビが入っていて、もちろん草なんて生えていない。

 集落の跡地も、建物の右半分が何かによって吹き飛ばされていた。

 現世ではまず起こりえない事が起こっている。

 天音はただその場所に立ち尽くすしかなかった。


「これってもしかして……異世界転移とか言うやつ!?」


 唐突に叫ぶ。

 天音は根っからのオタクで、欲しい小説は並んででも手に入れるほどである。

 さらに、異世界転移ものを愛してやまない。


「おぉ……おぉぉぉ! ここに俺が召喚されたってことは……この世界はピンチなんだな……! そして俺がチート能力で世界を救う! そんな展開に期待〜!」


 枯れた湖跡でゲコリゲコリと鳴くカエルは思った。

 なんだこの変なやつは……と。




 とりあえず行動を起こそうと初めにいた場所から歩くこと二時間。

 とてつもなく高い壁を見つけた。

 入口を見つけ、近づいてみるとそこには門番のような鎧を着て、槍を持った男が二人いた。


「待て。貴様、どこの者だ?」


 突然の質問に同様を隠せない。

 詐称するにも、この世界の国の名前なんてわかるはずがない。


「と、東京から来ました……」

「東京? 聞かない国だな…… もしや、あの魔海を越えてきたのか!?」

「えっあっ……そ、そうです! 魔海を越えてきたんです!」

「これはこれは失礼いたしました! どうぞ! お入りください!」

「あ、ありがとう……」


 よくわからないことになった。

 この国はあまり発展していないのだろうか。

 とりあえず国の中に入れたのでこの際どうでもいい。


「なんでやねん……」


 門を越えた先の光景を見て、天音はつい関西弁でツッコミを入れてしまった。

 なぜなら……さっきまで荒野だったはずが、門を越えた瞬間、爽やかな風が吹く緑溢れる城下町だったからだ。


「なにこの変わりよう……異世界怖っ!」


 通行人の奇異の視線が痛い。

 とりあえず情報収集だ。

 この世界の地図を手に入れ、現状を知る必要がある。


 なんたって俺は、この世界の勇者になるんだから……!


 城下町に入ったのに、荒野の乾いた風がひゅ〜と吹きた気がした。

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