第1話
「人生いつどうなるかはわからいものである」
17年間生きてきてこれほどこう感じた瞬間はなかった。
いや、これから先もないだろう。
毎日普通に高校に通う学生である俺。
しかしそんな俺は自分でも信じられないほど今までの日常とかけ離れた格好をしている。
右手にはきらびやかな宝石などで彩られた‘西洋風の剣’。
左手には剣と似たような装飾が施されている‘西洋風の盾’。
どちらもかなりの重量があるはずだ。標準的な男子高校生の体型である普段の俺では到底持つことができないだろうし、上げることすらままならないだろう。
普段のときならば、だが。
今の俺にはそんなものでもおもちゃのように持ち上げることができてしまう筋力を備えている。
そんな俺を一言で言い表すなら、もうそれは‘勇者’呼ばれても差し支えないのではないだろうか?
鏡に映った自分の姿を満足げに見つめていた俺はふと一つのことに気づいた。
「おい。これ、服はそのままなのか?」
鏡を見ている俺を後ろからじっと見つめているであろう少女にそう尋ねた。
右手、左手にまるでゲームの世界にあるような武器を身に着けていた俺だが、肝心の服装のほうは俺が毎日寝巻として愛用している‘ネコちゃんパジャマ’のままだったのだ。
これはいけない。いくら盾と剣がすごいからといっても着ているのが‘ネコちゃんパジャマ’ならただの痛い奴だろう。これから外に怪物退治へと行くというのに近所のおばさんに見つかって「やだわあ……、伊藤さんのとこの息子さん、もう高校生なのにあんな格好して……」みたいなこと言われたら大変である。
質問をしてからはや30秒、いっこうに返事は帰ってこない。まさか‘ネコちゃんパジャマ’姿で外に出ろとこいつは言うのだろうか?そういう無言の意思表示なのだろうか?
もう一度鏡を見直し自分の姿を確認する。
うん、絶対だめだ。こんな姿で外に出たら町内会で噂されてしまう。
「おい、無視はよくないだろう。こっちはせっかくお前の頼みを聞いて‘勇者’になってやろうとしているるのに」
そういい俺は後ろを向いた。
そこには相変わらずニヤニヤと俺を嘲笑っているかのような顔の少女がいた。
「おい、どーなんだ!」
返事はない。屍のようだ。
「おーい、聞こえてますー?」
ほんとにこのままとかないよね?
なんとなく、深夜テンションで書きました。
更新は不定期で暇なときにします。