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異世界で一番の嫌われ者は誰ですか? ーー俺だと思いますーー  作者: 黒猫
一章 〜ただ産まれた時から人間だったというだけ〜
3/3

俺は今更孤独を感じる。

「.........結局、此処って何処なんだ?」


時間帯は犬を撫で終わり、約二十分程度になる。

俺達は未だ森の中に居た。形としては俺が木に体を寄らせて、少女は直ぐ隣に居た。

......あの猪に追いかけられた際足挫いたみたいで、はいスミマセン。

.........犬を撫でた感想?......最高だったよ!!

話は戻り、自分は少女に話しかける。

少女は出逢った時とは全く違う、冷めたような眼差しから、がらりと変わり

その瞳からは警戒心は無くなっていた。


「.........貴方、本気で言っている?」


「.........本気も何も、俺は此処に初めて来たんだ、当たり前だろ?」


「.........」


少女は不意に足を動かすのを止め、ジッと此方を見つめる。

その時に少女の頬に指を当てる仕草が可愛いと思ったのは内緒である。


「......けれど......」


少女は何かを口にしようとしたが、直ぐに噤む。

その何かを隠そうとしているかの様に。

其れが何なのか、今の自分には知る意味は無いのだろう、だが何となく大切な事の様な気がした。


「......取り敢えずさ、君って名前は? 幾ら何でもいつまでも”君,,とか”貴女,,とか言うわけにもいかないじゃない?......ね?」


「クロ」


「......へっ?」


「クロ、其れが私の名前」


これまた淡々と少女は話す。

自分の名前にあまり執着が無いのかあっさりと口にした。

ゆっくりと顔を此方に向けながら彼女は無表情に、そんな事に興味は無いとでも言うみたいに。

クロ、其れが彼女の名前。


「クロ......か」


「じゃあ、貴方の名前は?」


「......うん?」


「な、ま、え、名前です、私は貴方に名前を教えました、ですが貴方は名前を教えないという不義理な事をするんですか?」


クロという少女は少し睨みを効かせながら早口言葉の様に喋る。

......うん、思っ切り侮辱してるな......


「あ、ああ......俺の名前は......」



.........あれ?



名前......名前は......何だった......?

この時、俺は心にぽっかりと空いたみたいな感覚に襲われていた。

虚無感、というのだろうか。良く目にする本には記憶喪失の主人公など定番中の定番だった。

そんな本には記憶喪失の主人公の心境に己に対する恐怖、畏怖、失望などのものばかりが書き綴られていた。

実際、そんなもの。筆者が体験していない以上唯の想像である。

だが今、分かった。確かにそうだ。今、自分の中にある感情は全て、己に対する嫌悪や畏怖の念だけだ。


......おい......おい......!何だよ!?口に出せよ!知ってるだろ?分かってる筈だろ!?

俺が生涯、死ぬまで付き合う筈の、親から貰った大切な、大切なもんなんだろ!?


息が荒くなる。心臓の鼓動がまるで山彦のように胸の中で反響する。

思い出せと脳は血液をさらに早く循環させ、酸素を供給し、思考を加速させる。

だが。


「......分からない........」


「............」


無駄なのだ。

分かっている、どれだけ考えても、どれだけ思考しても、

自分の中に無いものをどうやって見つければ良いというのか。

誰からかその記憶を補給すれば良いというのか、誰からかその記憶を教えて貰えば良いのか。

確かに其れも良いだろう。だが、けれど今、ここに。




















ーー俺を知っている者は”一人として居ない,,のだからーー





「.........はぁ......」


クロは溜息を吐いた後「......めんどくさっ......」と小言で呟く。

.........この子、多分毒舌だなと今更ながら認識する。


「とにかく今は貴方についての質問は取り止めにします、ですが後に先延ばしにするだけなので、

その時にはきちんとお願いしますね」


ニコッと少女は笑みを浮かべる。

.........凄いわ、この子。

全然笑顔に違和感を感じない、女って皆こんな風に演技ってうまいんかな.........。

すると不意に彼女は自分の直ぐ前に足を運ぶ、と。


「じゃあ、もう行きましょうか」


「.........ちなみに何処に」


「勿論、あの目の前の街」


クロは眼をキラキラとさせながら行こう、行こうと体を引っ張る。

.........そういえば......。


「なぁ、クロ......さん」


「クロで良い」


「なら、クロ」


「俺が逃げてた時、一瞬でこの街が現れただろ?......あれってお前がやったのか?」


「うん、私がやった」


即答。

サラリと、普通に、当たり前だと言わんばかりに。

そんな俺の思いを知らないと言わんばかりにクロは体をグイグイと引っ張る。

だが此れでようやくわかった、此処は謂わゆる完全な異世界の様だ。

魔法があり、超常的な現象が当たり前にある世界。

とても素晴らしい事である。だが其れにはある一つの疑問が生じる。

其れは.........。





















「俺、金なんて持ってなくね?」


.........貧乏プラス異世界人とか。

......クッソ笑える。



















































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