表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

蒼空とコーヒー

作者: ラッテ

とある港町のカフェ。


店内はアンティークな家具が静かに佇んでいて、柔らかな明かりがそこ此処を照らす。


店の扉の鐘がカランと鳴る。


それと同時に私の心も高鳴る。


私はコーヒーを飲みながらチラリと君の姿を見る。


綺麗に切りそろえられた黒髪、赤い腕時計、紺色のリュック。


この間やっとのことで連絡先を交換した。だが、まだ話すことは出来ないでいる。


どうやって話しかけよう─────そう悩んでいた時だった。


「マスター、相席いいですか?」


君のよく通る声に思わず顔を上げると、私の向かい側に君がストッと座る。


「....こっ、こんにちは」


あまりの驚きで挨拶する声が裏返る。


「こんにちは、よく会うね....お、それ何のコーヒー?」


「あ、グアテマラ、ですよ」


上手く声が出ず、最後は蚊の鳴くようになってしまう。声が小さめなのに加えて口下手なのでついついどもってしまう。


「敬語じゃなくていいのに、同い年なんだから」


「そうだね....あ、蒼くんは今日部活なかったの?」




「うん、高1の時は部活いっぱい有ったんだけど最近は少ないかな」


そう言えば、なんの部活なんだろう?そう聞くと、


「ああ、軽音部だよ。ベース弾いてる、月原さんは?部活入ってる?」


初めて名前を呼んでくれた。そのことが嬉しくて笑顔がほころぶ。そうして会話をしばらく続けていると、


カチャリ


静かにマスターが君───蒼くんの前にコーヒーカップを置き、音を立てずにポットに入ったコーヒーを注ぐ。


「いい匂い...」


「だよね、僕も好きなんだ」


『好き』という言葉を聞いただけなのに鼓動が早くなる。苦しくなる。




帰る方向が途中まで同じなのでカフェを出て並んで歩く。


空がうっすらと青からオレンジへ変わっていた。


見上げていると隣からパシャッという音が聞こえた。横を向くと蒼くんがカメラで空を撮っていた。


「空、綺麗だね」


「うん...ねぇ、月原さん」


何?と聞こうとして横を向いた瞬間、そっと君の腕が私の体を包む。


「好き、です。あなたが」


「....ありがとう、わ、私もです」


恥ずかしさに勢いを任せ返事をすると、君は私の耳元で


「よかった」


と囁いた。コーヒーの香りがした。


今までずっと苦いと思っていた恋がほんの少し甘く感じた。



お読みくださりありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 恋愛系のお話しを短編でまとめられるなんて素晴らしいですね。 キュンキュンしてしまいます [気になる点] 私如きには言えません。 [一言] 私もコーヒーが大好きです。
[良い点] 大変美しい文ですね。中高生特有の男女間に存在する気恥ずかしさ等が綺麗に書かれていると思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ