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異世界転生して天涯孤独・・・子どもだけど意外と生きて行けそうです

作者: motto

 転生チート?なにそれおいしいのという作品を作ってみました。

 ご一読頂ければありがたいです。


 いきなりだけど孤児になりました。

 

 私はスィン、今10歳で、氏名はないけど前世はあります。

 前世では日本と言う所に住んでいて、お父さんとお母さんとお兄ちゃん、それにお婆ちゃんと暮らしていました。

 私は8歳の時に病気で死んだのだと思います。小学生に上がる前から病院通いしていて、ついには病院から出られなくなってそのままです。『白血病』という病気で骨髄穿刺というものすごく痛い検査があるやつです。

 今の私が前世に気付いたのも木から落ちて腰を強く打った時の痛みが元で急に思い出してしまいました。

 

 気付いた時には今の生活には慣れていたけど、どうやらここは日本でなく、病院でよくやっていたゲームのように竜がいたり、魔法がある世界です。

 魔法の仕組みは分からなかったけど、魔法も竜も見たことがあります。

 前の私がいた世界ではどんな命でもとっても大切なものでした。でも今の世界では命はとても軽いです。

 食べる為に殺すことになんの躊躇いもないですし、逆に食べられてしまうのも仕方ないとみんな割り切っています。

 だからなのでしょうか?先日、旅の途中で竜に襲われ親とはぐれても、あまり泣きませんでした。

 今はどちらかと言うと途方に暮れています。

 ここはおおきな、おおきな街です。

 この世界に来て、こんなに多くの人を見るのは初めてです。

 普通人、けもの人、エルフ人、ドワーフ人など人種も様々です。

 もしかしたら親とまた会えるかと期待もしていましたが、これは無理そうなくらい人がたくさんいます。

 それになんと言っても親の旅の目的地がこの街かも不明です。

 茫然と町角で座って行き来する人を見て2日ほどでしょうか?

 身に着けていた携帯食糧も底をついてとてもひもじくなってきました。

 私は前世があるけど、ここには前世みたいに警察だってありません。こんな時にどうすればいいかなんてまったく思いつきません。

 このまま死んでしまうのだろうか。

 茫然から絶望へ気持ちは変わる。そんな時に少し年上、12歳位の狼のけもの人の男の子が話かけて来ました。


「よう、言葉わかるか?」

「うん、なに?」

「いや、うちの連中がぼーっと突っ立てる見かけない子どもが居るって言っていてな、どうしたんだ?」

「旅の途中で竜に襲われて、親とはぐれた・・・」

「そうか、それはついてなかったな。親は見つかりそうか?」


 その問いかけに首を振って答える。


「来な」

「え?」


 狼のけもの人の少年はそういうと私の手を引いて歩き出す。戸惑いはあるけれど、あそこにいても仕方ないし、私の手を引く少年の手は優しかった。


「ここだ」

「?」

「子ども団管理課だ」

「子どもだん?」


 狼のけもの人の少年はある建物の前に来ると私の背を押して建物に入るよう促した。どうやら公共の施設らしく、制服を着た職員らしき人が行き来している。


「管理官さん、いい?」

「おおヤッコか、どうした?また子どもを拾ったのか」

「うん、3番街の街角で二日は居た。親とはぐれたみたいだ」

「そうか、とりあえず中で話を聴こう」


 職員の顔なじみらしき中年の男にヤッコと呼ばれた少年は話かけ、事情を説明してくれた。中に入るとまず健康状態と名前、迷子になったいきさつを詳しく聴かれ、食事をもらった。ごはんを頬張る横でヤッコと管理官は話をする。


「うーむ、この辺の団には10歳位には空きがねーな。お前の団で面倒みてくれねーか?」

「まーしかたないか、俺が拾ったんだし面倒みるよ」

「ありがとな」

「別にいーよ、いつものくれれば」

「わかったよ後で渡す。・・・スィンと言ったか?とりあえず、お前の親御さんがどこかで捜索依頼をかけたら見つかるかもしれないが、まぁ、あまり期待しないでくれ、この街は三つの国の交易の要衝にあって人はごまんと出入りする。人を探すのが一番難しいんだ。そこのヤッコも親を探して5年になる」

「は、はあ」

「そうそう、まあ運が良ければすぐ見つかるけどな」


 管理官のおじさんは何でもないように、絶望的な事を話してくるが、一応それをヤッコがフォローをしてくれた。


「ということで、しばらくお前はうちの団に所属してもらう。団長で犬のけもの人のヤッコだよろしく」

「よろしくヤッコ。エルフ人のスィンです。」


 狼と思ったら犬のけもの人だった。あ、ちなみに私はエルフ人です。耳長で普通人と比べるとやや長寿ですが子どもの時の成長はどの人種もあまり変わらないそうなので見た目通りの10歳児です。


「ここにゃ、お前みたいな迷子やら捨て子やらが近隣の村や小さな町から流れ着くんだ」

「へ~私みたいのがたくさんいるんだ?」

「そうさ、まぁこの街はでかいから、流れてくる子がどんくらいいるかなんてわからないけどな」

「へー、ちなみに団ってなんなの?」


 それに答えたのは別の可愛らしい声だった。


「迷子や捨て子、まぁそんな孤児達を集めたのが「子ども団」なのよ、街に孤児院はあるけど、とても入りきれないから、場所は提供されるけど自分たちの面倒は自分たちで見なきゃいけないのよ」


 そう説明してくれたのは普通人の12歳位の女の子であった。


「副団長のレミアよ、よろしくね」

「あ、よろしくおねがいします。スィンです。」

「お、レミアも来てたのか」

「『来てたのか』じゃなくて、今月の売り上げ納めに来たのよー、団長に変わってね」

「いけね、今日はそれがあったんだ」


 スィンと握手を交わし、レミアはじと目でヤッコを見た。


「まぁ、新団員を迎えてたなら仕方ないけどね。とりあえず団長よりは説明上手なつもりだから私が「子ども団」について教えてあげるわ」


 あわてるヤッコにそう笑顔で返すレミアは説明を始めた。


「よろしく」

「よろしくされました。そうね、だいたい一つの団の団員は15~20人位いるのよ、15~11歳の年の子が5~7人、6~10歳くらいのが5~10人、小っちゃいのか体がどこか悪いのが2人~3人、あんまり小さかったり体が悪すぎると孤児院に行くけどね」

「国から支援もあるけど基本的には色んな所で働いて金をもらって、毎月一定額をさっきの役所の子供団管理課に納める決まりもあるんだ」

「・・・それは大変じゃない?お金が集まらなかったらどうするの?なにも食べられなくなるよ」


 お金を自分で稼ぐなんて想像もつかないし、働いてお金を得ることは大変だと、前の、そして今のお父さんとお母さんには良く言われていた。子どもが稼ぐお金なんてあんまり大きなお金にはならないと思うんだけど、そこからさらにお金を納めるなんてとヤッコの話に不安を憶えた。


「それは大丈夫よ、管理課から最低限の食料は配布されるから、お腹はすくけど死ぬほどじゃないわ」

「金が集まらないのは、働いてないか、働き先が金を出し渋るかだしな・・・」

「子ども団の働き場所を作るのは街で商店を開く際の義務なのよ・・・金の出し渋りはなくならないけどね。それでも管理課に訴えられて認められればその店ペナルティーがかかるようになっているし、店で良いように扱き使われることから私たち「子ども団」は一応守られているのよ」

「へー」


 二人の説明に少し不安も薄れた。


「それに私たちが集めたお金は一定額たまると次の段階に上がる支援金になるしね」

「次の段階?」

「「子ども商店」だ」よ」

「子ども商店?」

「そ、まぁ「子ども商店」っていうのは俗称だけどね。自分たちの店を持てるように支援してくれるのよ、もちろんお金をあつめれば良いってわけじゃなくて、それまでいかに効率良く協力して子供団をまとめているか管理課にはチェックされて、お店を建てるにあったては企画から運営、収支なんかについても商店協会の役人に審査されるけど自分たちの店を持つっていうのは憧れるわ」

「なるほど・・・でも、たいへんそうだね。」

「まぁね、だけど自分達の店を持つっていうのは私達孤児にとってはとてつもない夢よ」

「そのために小間使いとして色んな商店を見て回るし、努力もするのさ。まぁ、スィンも働いて将来の俺たちの団の店について良いアイディアをくれるとうれしいぜ」


 二人は街の店を縫うように歩いていく。

 そして、市場にほど近い、小さな空き地にござを引き、天幕を張っただけの場所に私を案内した。


「ついたぜ、ここが俺たちの子ども団「ごちゃまぜ仲間団」の本拠地だ!」


 その団名は考え直したほうがいいのではと思うが見るとそこには十数人の子ども達が居た。それぞれ家事をしている者や小さな子どもの世話をしている者、武器の手入れをしている者、本を読んでいる者などそれぞれだ。


「みんな新入りのスィンだ。迎えてやってくれ!」


 ヤッコがみんなに聞こえるように大きな声をだして言うとみんながヤッコを見て、そしてスィンを注目した。


「おおっ!新入りっすか、よろしっくす!!」


 最初に、元気に笑顔を向けてきたのは胴長短足のドワーフ人の少年だった。


「オルだよー」「ルアだよー」「「仲良く慣れそう、よろしくー」」


 続いて、緑の草のような髪が特徴なドライアド人の双子の姉妹。


「げー、年上かよー。まぁ、よろしくな」


 少し残念そうだが、眼は興味深そうにこちらを見る、猫のけもの人の少年。


「・・・・・・・よろしく、スィンさん」


 真っ黒の髪と真っ白な肌、そして折れ曲がった角と蝙蝠のような翼が特徴的な魔族の女の子。


「エルフか・・・」


 どこかスィンを疎ましそうに見る、ダークエルフ人の少年。


「ようこそゲロ、私の事は先輩として敬うゲロね」


 比較して小綺麗な服を着て偉そうなカエル人の女の子。


 なんだか様々な人種の子ども達がそれぞれの反応を示しながらそこに居た。


「それじゃ、恒例だが今日はスィンを歓迎してお茶とお菓子がある!管理課からの差し入れだ!な、なんとお菓子はチョコレートだっ!!!」

「マ、マジで!!ちょこれいとだとぉ!!!!!!!」

「「お茶うれしい」」

「・・・・やったわ」

「ゴクリ・・・」

「ゲロゲーロ♪」

「ちょっと貴方達、一人一個だからねっ!!!」

「「「「「はーい」」」」」


 ヤッコの発表で私が来た時以上に現金にもにぎやかになる団員達。


「ほら、スィンお前の分だ!」

「ありがとう、ヤッコ」

「いいって事よ。ようこそ俺たちの「ごちゃまぜ仲間団」へ」

「うん!」


 私は異世界で独りぼっちになったけれど、この笑顔をみていると何とかなりそうな気がしてきました。


 意外と生きて行けそうです。


 異世界や文化レベルが低くても社会構造の在り方によっては、チートが無くてもなんとかなるかなーと思って書いてみました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主題であるチートがなくても生きていけると言うのが強く感じられる事。 [気になる点] 子供らしさがない事。 [一言] 転生作品の一つとして、「転生した世界がまともならばチートなくても良い」と…
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