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目の前に立ちはだかるのはこの国の中心である立派な王城。
私は今からここに侵入するところだ。
方法は簡単。
まず光魔法で透明になり、体の表面に魔力を纏って城の周りを覆うバリアを通過。
そのまま風魔法で王女の部屋まで飛んでいく。
危険そうに見えるが、魔力量と質が世界一の私に不可能などない。
_*____*_
というわけで、無事に到着。
バルコニーに降りると、窓から部屋の中の様子を伺う。
部屋にいるのはベッドに腰掛けて周りをキョロキョロとみている少女。
彼女がエリシア姫なのだろう。
情報通りの腰まであるさらさらの金髪にエメラルドの瞳の美少女だ。
部屋の周りを探ると何人か護衛の方が隠れてたので、彼等には王女が寝ている幻覚を見せる魔法をかけた。
そして、自分の光魔法を解いて窓をノックする。
コンコン
エリシア姫は吃驚したようにこちらを振り向き私の胸のペンダントを見ると、キラキラした目をしてバルコニーに近づいた。
そして口パクで訴える。
ちょっとまってて、と。
彼女はそのまま隣の部屋へ入っていった。
しばらくすると王女が現れた。
王族が着ることはないような庶民の服装で。
少し驚いている私を気にせず、彼女はバルコニーの窓を開けて勢いよく私に飛びついてきた。
「依頼を受けてくれてありがとう!ねえ、早く行きましょう!」
私に顔を向けるエリシア姫の頬は紅色に染まり、すごく可愛い。
その笑顔につられるように私も微笑み、王女の手を取る。
「しっかり掴まっていて」
少女が頷いた瞬間、周りの風景が王城の一室から見慣れた室内に変わる。
足元には淡い光を放つ魔方陣。
エリシア姫は一瞬で場所が移動した事に驚いて、目を見開いて周りを見る。
「ここは私の家だから安心して。少し話し合いをしましょう」
そう言ってソファに座るように受けて促した。
「私の事はシーナと呼んでね、エリシア様」
微笑みながらエリシア姫の前にオレンジ色のジュースを置く。
彼女はそれを恐る恐る口に運んで飲んだ後、美味しい、と呟いた。
ありがとう、それは私が作ったジュースなの。
「エリシアでいいわ。そんな呼び方をしたら街で目立ってしまう」
「分かった。じゃあエリシア、あなたは何色が好き?」
いきなりの質問の意味が分からない様子だったが、彼女は不思議そうな顔で「ピンク」と答えた。
すると、彼女の髪がピンク色に染まった。
「えっ!?すごい!」
「魔法で髪と瞳をピンク色にしたのよ。帰るときには戻してあげるから」
「うん!」
笑うエリシアはまさに天使とした言いようがないほど可愛いくて、レオンがわざわざ城下に来てまで本を買う理由がよく分かった。
こんなに可愛い妹のためなら、何でもしてあげたくなるはずだわ。