閑話 4-祖父の心境
ちょっと短めです
ネリーの祖父、ギルドマスターの視点です
ギルドマスターである私宛に王宮から極秘の依頼が届いたのはつい先程の事だ。
内容はやはり第一王女の一時の脱走の手助けというものだった。
それを見た孫娘であるネリーはとても驚いて、本人は気づいていないだろうが少し顔を青ざめていたが自分はそんな事はなく、手紙を見ながら昨日の夜の事を思い出していた。
夢を見たのだ。
それは夢とわかる夢だった。
そこには銀の髪を垂らし、銀の衣を纏って、銀の瞳で穏やかにこちらに視線を向ける神々しい女性がいた。
銀色は神々がもつ、神聖なる色だ。
毎日教会に通う私には一目で分かった、あの人は創造神様だ、と。
無意識のうちに頭を垂れた。
「顔をあげなさい」
聞こえてきた声は風のように軽く儚く、そして威厳に満ち溢れたものだった。
そして頭を上げた自分に、あの方は微笑みながらこう告げた。
エリシア王女からの依頼をシーナ・ターミャという者に任せる事。
どんな結果になろうとも彼女の素性を調べるのを禁止する事。
最後に、今回の夢を誰にも話さない事。
「あの子に任せれば、きっと事は上手く進むでしょう」
本来ならば人を導く役目を持っているのは目の前の創造神ベルナ様ではなく、その眷族の者である【知の司】のティーナ様の役目だ。
それをベルナ様直々に自分に伝えるというこもは、この内容は彼女にとってとても重要な事なのだろう。
かしこまりました、とベルナ様に伝えると、急に視界が光で真っ白に染まる。
「これは、私達の償い。エリシア・リンド・リア・レキルスは本来ならば苦しむ事はなかったはずなのに……」
そんな声を微かに聞きながら、光はだんだんとおさまっていった。
ゆっくりとまぶたを開けると、見慣れた天井。
ちらりと窓の方へと視線を向けると、馴染んだ枠から覗くのは、いつもよりやや暗めの景色だった。
「……神託か…」
これが神の望んだ事ならば、自分は喜んでその役目を果たそう。
この夢を決して誰にも告げず、墓場までもって行くことにしよう。
ベルナ教の熱心な信者であるガレストラのギルドマスターは、神託を受けた朝、そう誓った。