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「私…目立ちたくないので」
「カチュアからのお願いなのに?」
本当にこの人はカチュア史上主義ですね。
そのせいでどれだけ貴方の部下が困っていると思っているんだろう。
そもそも城内のほとんどの方々がカチュア様を溺愛してますから、こんな事を思っても意味がないですが。
皆さん、まぁカチュア様のためだからなぁ、ですませていますらからね。
どうやって断ろうかと悩んでいたら、今まで静かに紅茶を飲んでいたマリアが口を開いた。
「あの皇太子に見つかるのが嫌なのでしょう?」
おしいっ、その妹だ。
レオンは正直どうでもいい。
戦える事を隠していたわけでもなく、ただ知る機会がなかっただけだから。
本当の理由はレオンの妹であるエリシアなのだが、それを言うとなるとエリシアの事を話に出さなければいけないので、そのままにしておく。
「…えぇ、そうです。だから無理です」
マリアに返事をしながらも視線はハーブの方に向けておく。
隣に座るカチュアは、まさか自分の何気ない一言のせいでこんな事になるとは思わなかったのかオドオドと私達を見ていた。
そんな姿も可愛い、癒される。
お持ち帰りした……くないから睨まないでくださいよ魔王様。
「なら変装でもすればいいじゃないの」
カタリ、とカップを置きながらマリアが言った。
「…見てみたいです」
カチュアはさっき自分の一言の影響力を思い知ったばかりでしょう。
でもそんな学習能力の少なさも可愛いですね畜生。
「よし、決定だね」
ハーブは決定事項の様に言わないでくださいよ。
カチュアの輝いている瞳でも結構ためらうのに、加えて断りづらくなるじゃないですか。
あなたのそれは計算だと分かっていてますけどね。
「ですけど……私マリアと戦うのは嫌なので!」
「私もシーナと戦って傷を負ってしまっては困るから、貴女とあたったら棄権しますわ」
即答された。
「今回は勝ち抜くって言ってましたよね」
「シーナと戦うことになるまで勝ち抜いてみせますわ」
ニッコリ笑顔で断言された。
この兄妹は本当に笑顔が好きですね。
「わかりました。……出場しますよ!」
出ればいいんでしょう!
そして勝てばいいんでしょう!
やってやりますよ!!
それを言ったのは、もうヤケクソだとしか言いようがない。