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カランコロン


「いらっしゃい、レオンさん。今日はどんな本をお探しですか?」


店の中に入ってきたのは少し波打ったサラサラの金髪に透きとおる海色の瞳の美青年。

それはまるで御伽話に出てくる王子様のような…っていうか王子様だ。

正真正銘この国の皇太子であるレディオン・リンド・フルノ・レキルス殿下。


先ほどの『レオン』という名前は偽名だ。

彼はたまに病弱な妹姫のために身分を隠して本を買いにきている。

勿論、私の情報本にかかれば素性などすぐ分かるので、身分を隠しても意味がない。

別に誰これ構わず個人情報を見ているわけではなく、最初にこの店に来たときに平民と言うわりにはやけに身なりがいいから気になったのだ。


「こんにちは、シーナ。今日も妹のために本を買いに来たのだけれど…」


「じゃあ、この本なんてどうですか?今流行ってる恋愛小説。私のオススメですよ」


私が近くの棚から取り出したのは桃色の本。

ノイズというこの本の作者は他国の間でも有名で、毎回ベタで甘いラブストーリーを書くので女性受けがいい。

そんな大物小説家の彼女は私の友人でもあるのだが、この話はまたの機会に。


レオンは本を手に取りパラパラと中を見る。

そして、最後まで見終わった後のこちらへ向ける視線はとても満足気だ。

それに対して私もニッコリと微笑むと、途端にレオンの顔が真っ赤になる。


何故に?

たまにこういった事があったのだが、理由が分からない。

そのたびに王様ってポーカーフェイスが大切なのではないのか、と彼の将来が少し心配になる。


そして、しばらくの間の沈黙。

2人ともが何を話そうか考えているときに、急に本屋のドアが勢いよく開いた。


「シーナいる?」


入ってきたのは茶色の髪をポニーテールにくくった女。

その手には朱色の宝石がついた銀色の杖。


彼女はアイリス・キュート。

Aランク冒険者の魔法使いの私の友人で、レオンの元クラスメイトでもある。

レオンが通っていた学校、となると一国の皇太子が通うような学校なのだが、彼女は実は孤児院出身だ。

魔力量の高さをかわれて無理矢理入学させられたらしい。

その卒業後には数多の勧誘を振り切って冒険者になり、今は各地を転々と巡っている。


彼女と出会ったのは私が暇つぶしにギルドで依頼を受けていたとき、討伐対象も倒してさぁ帰ろうというときに邪竜と戦っている彼女と出会った。

苦戦していたようなので手助けをしたのが切欠だった。


という話は閑話休題、またいつか。


「いらっしゃいませ、アイリス。今回はどんなものをお探しで?」


助かった、アイリス。

あの気まずい空気は苦手だ。

とりあえず、まだ顔がほんのりと赤いレオンは置いといて、アイリスの相手をしよう。

それにしてもレオンは美形だから頬を染めると乙女にしか見えない。


「ん?レオンはいいの?まぁいいや、この本の修理を頼める?」


そう言って渡されたのは特に壊れた様子もない普通の本。

これのどこに直さないといけない所があるかというと……そんなものは、ない。

だが私は困った顔もせず、逆にニヤリと笑った。


「分かりました。少々お待ちください」


そういうと、私はその本と傍らの鈍色の情報本を持って店の奥に入った。

さて、情報屋としての仕事がんばりますか。



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