4 深夜のお茶会
夜空に輝く星が城の庭園を照らす。
私達は月明かりを頼りに深夜のお茶会を開いていた。
参加者は4人。
冒険者風の服装を身につけていながら、気品を漂わせて優雅に紅茶を飲む少女。
魔国の王族であるマリエーナ・ルトゥ・キャディス。
紫色の髪を緩く後ろで結わえて、オドオドとアメジストの双眸を揺らしながら肩を小さくして座る少女。
その口元からは先の尖った牙が覗く。
ヴァンパイアで現魔王の婚約者であり、未来の魔王妃のカチュア・グラシス・ディア・ベルガモット。
ケーキを食べる私。
説明は以下略。
異世界人のシーナ・ターミャ。
そして、一見真面目で優しそうな、黒髪でどことなくマリエーナににた雰囲気の、この中で唯一の男。
額には2本の漆黒の角が生えており、常に細められている目から血のような紅の瞳が見え隠れしている。
魔国の頂点に立つ魔王、ハーベルト・ルトゥノス・ベルガモット。
そんな魔国の人々が慕う3人とは、深夜たまにお茶会をしている。
切欠はマリアが兄(=魔王様)を私に紹介した際に出した紅茶が気に入られたからだ。
なので、このお茶会には毎回メイドがついておらず、紅茶は私が、お菓子は料理大好きなカチュアが担当している。
ちなみに今回はチョコレートケーキ。
ほろ苦い大人の味が口の中で広がり、それをまた紅茶が引き立ててなんとも言えない美味しさ。
あの可愛さといい料理の上手さといい、カチュアはそのままお持ち帰りしたいくらいの少女だ。
だが、本当にそんな事をするとカチュア溺愛なハーブ(ハーベルト、魔王様がお忍びで使う偽名)に殺されそうだ。
さらに彼女は見た目10代後半だが実際は72歳である。
魔族の年齢は見た目では判断できないのだ。
そう考えながらカチュア様をじっと見ていると、それに気づいた本人が頬を赤らめ、そしてハーブの方から殺気…とまではいかないが、鋭い睨みが飛んでくる。
見てただけなのに過保護すぎる。
確かカチュア様がまだ1歳にも満たない産まれたばかりの頃に一目惚れをして、すぐに婚約したらしい。
結果、ハーブはロリコンという事になりそうだけれど、例え老人になったとしても愛せるらしいので曰く『魂の相手』らしい。
その事を神様に話してみたら本当にそうらしいから吃驚だ。
まぁ、そんな事もあり今代魔王の1番の弱点は間違いなくカチュアだろう。
城中の皆がそれを知っているので、カチュア様を誘拐及び暗殺しようとする者は数多い。
だが悪意をもって彼女から半径5m以内に侵入するとチョーカーが反応し、もれなく魔王様から直々に制裁が加えられる。
その場面を見た事があるのだが、私がこの制裁の内容を口にする事はきっとないだろう。