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3-3

次の日。

気まぐれで行った昨日限りのクッキーイベントも終わり、シーナはカウンターでのほほんとアフタヌーンティーを飲んでいた。


ちなみに、シーナはトリップした初日に店を手に入れたけれど客が来ない時間が多かったため、最初の半年は暇さえあれば情報本で貴族王族の事を調べていた。

日本には無かったため気になっためだ。

王家の成り立ち、貴族の本音、後宮の不倫話、国を巻き込んだ恋愛結婚…全てノンフィクションだから尚更おもしろい。

おまけとして貴族の嗜みや王宮侍女の紅茶の淹れ方までも覚えたので、シーナの淹れる紅茶はプロにも劣らない。


「シーナ!」


まったりしている最中に、彼女の名前を呼びながら入ってきたのは、金髪碧眼の王子様。

レディオン殿下もといレオンである。


「いらっしゃいませ」


レオンは走ってきたのか息を少し切らせていた。

額に汗が浮かんでいそうだが、今は冬なので逆に暖かそうに思える。

私も寒いときは何か運動しようかな。


「あぁ、久しぶり。ところでシーナ、ここは甘い香りがするね」


甘い香り?

クッキーの香りかな。

私は鼻が慣れてしまったから、もう分からないけれど。


「えぇ、昨日はお客様にクッキーを配りましたから、その香りでしょう」


「昨日だけかい?」


「クッキーの数の都合で1日しかできないんですよ」


なら多く作れば良かったのだが、正直めんどくさかった。

私はめんどくさがり屋でもあるのだ。


「そうか……」


残念そうに顔を俯かせるレオン。

そんなにクッキーが食べたかったのだろうか。

だが、皇太子なら王宮で最上級のものをいくらでも用意してもらえそうなのだが。


その後、レオンはいつも通りエリシアのために本を買った。

彼女の病気はもう治っているのだが、大事をとって後2週間は部屋を出れないらしい。

名前や立場を隠しながらも、妹の事を話すレオンはとても嬉しそうだった。



彼から本の代金を受け取ると、それをポケットにしまいながら亜空間に入れた。

そして代わりにラッピングされた袋を取り出す。


「これ、どうぞ」


差し出したのは昨日の手作りクッキー。

レオンは吃驚してそれを見る。


あ、ポケットとクッキーの大きさが合わない…。

どこから取り出したのか訝しがられないかな。


「実は常連さんのクッキーは残しておいたんですよ」


いつもご来店ありがとうございます、と言いながら彼にそれを手渡す。

レオンは何故か微かに震える手で受け取り(なんで!?)心ここにあらずといった風に呆然としたまま店を出て行った。


途中で事故に合わないかな…。

ってか、この国の未来大丈夫かな。


少し心配になった。


「さて、レオンは今ごろシーナの所へ全力で走ってるかな~♪」

王城、皇太子の執務室でアイリスは楽しげに微笑んだ。


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