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3-2

しばらく経つと、予想通り『サクラ』にいつもより多い客が来始めた。

といっても、普段は客がいない事の方が多いので数人ほどだ。

主に冒険者風の客が多いので、先程の彼女が宣伝(おしゃべり)をしてくれたのだろう。

その中には知り合いも含まれていて、会話をしながら会計をすます。


「シーナはお菓子も作れるのね…。貴方に欠点はないのかしら?」


「ありますよ、マリア。ただ人前で見せないだけで」


今話しているのは黒髪赤眼の美少女。

やはり冒険者風の服装をしているが、どこか気品溢れる容姿と喋り方をしている。

それもそのはず、彼女はとある国の王族なのだ。


「でもシーナに欠点なんて想像もできないわ。ねぇ、兄様と結婚してくれない?」


「私が魔王と結婚なんて無理ですよ」


そう、魔王。

マリアは聖女みたいな名前をしているのに魔王の妹なのだ。

まぁ、マリアは偽名で本名はマリエーナ・ルトゥ・キャディスなのだが。


魔王は魔人の住む魔国の王の事。

魔人とは魔物を使って人々を襲うもの、と知られているが…そう思っているのは人間だけだ。

本当は魔人と魔物には何の繋がりもなく、魔国にも魔物の被害は出ている。

彼等には世界征服などの野望もないし無闇に人間に狙われるのも嫌なので、魔人のほとんどは魔国に引きこもっている状態だ。

だが、同じく引きこもり種族のエルフや竜人とは密かに交流があるようだ。


魔人の特徴は頭に生えた角である。

魔人にとって角は魔力を溜める場所だ。

その色はその人の魔力を表す色で、色が濃いほど魔力が強いそうだ。

そして取る事も可能らしいが、数ヶ月たつとまた生えてくるらしい。

魔人の多くは定期的に角を取り、もしものときのために保管している。


また人間と違い寿命も長いため、一見10代に見えるマリアは実は50代。

だが、これでもまだ若い方らしい。


「シーナなら大丈夫ですわ。それとも兄様の事が嫌いなんですの?」


マリアがお釣りを受け取りながら不満気に言う。

今回彼女が買ったのは『彼岸花』という、昔とある国で本当に起こったらしい後宮のドッロドロな話をかいた小説だ。

お買い上げありがとうございます。

それ、売れなくて困ってたんです。


「好きですけれど恋愛対象としてではないし、ハーブ様にはカチュア様がいますし」


「そうですわよね、カチュアもどうして兄様のお気持ちに気づかないのかしら?」


「あの方は鈍感ですからね~」


「……………………そうですわね」


あれ?

今すごい間が空いたな。


マリアは残念そうな顔をして、そのまま店を出て行った。

私はそれを不思議に思いながらも、ありがとうございましたー、と彼女の背中に呼びかけた。

マリアのあの間は「それ貴方がいいますの?」の間です

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