閑話 2-後編
王都では私の病気は神様が治した、私は聖女である。
みたいな噂が流れている。
多分あの宰相が王族のイメージアップのために流したんでしょうね。
「まぁ、間違ってはいないけど」
だって私の病気を治してくれたのは女神様のような方だもの。
少し怖いときもあるけど…。
あの時のシーナは怖かったなぁ、あのなんともいえない威圧感。
きっと王様モードの父様と同じかそれ以上の怖さね。
「暇ねぇ…」
最近は城内が騒がしい。
まぁ、原因は私ですけどね。
寝転んでいたベッドの横の台の上に置いていた本をとる。
これは私の大好きな作家であるノイズの新作恋愛小説だ。
バラリとめくると、開いたページの中央から銀色の猫が私に向かってエメラルドの瞳を向ける。
あの日に買ったしおりだ。
思わず顔がにやけてしまうのはシーナの事を思い出したから。
あぁ~、シーナがお姉様になったらいいのにな。
だったら毎日会うとこもできるのになぁ。
お兄様と結婚してくれたら美男美女でお似合いじゃないかしら。
でも、最近はレオン兄様にも好きな方ができたみたいですし。
本人バレてないの思っているのかしら。
お慕いしている令嬢はいないの?と聞いただけなのに、あんなに顔を真っ赤に…!
普段の仕事中のポーカーフェイスはどこへいったのかしらね。
いつもは貴族の方々に内心を悟られぬように『おーじさますまいる』を貼り付けているのに、たった一つの質問であの顔とは…。
本当に笑えますわ。
けとど、いったい誰なのかしら、お兄様の好きな方は。
ヴェルア侯爵の箱入り令嬢、カシア伯のクリス令嬢…それとも才色兼備な隣国の第三皇女様かしら?
みんな美しい方々ばかりですけど、やっぱり…。
はぁ…、シーナだったらいいんだけどなぁ…。
それにしてもシーナはいったい何者なのでしょうか。
魔法の才能もあり、私の病気を治す薬を所持して、それにあの凄まじい威圧感。
ただの冒険者とは思えませんわね。
あ、ギルドからの信頼もありそうですね…。
……まぁ、別に誰でもいいですね。
彼女が私の恩人である事には変わりません。
王都の空は今日も綺麗に晴れていた。