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2-6

2日間の休暇も明けた緑の日の正午ごろ。

私は用意していた昼食を食べ終えて、カウンターで本を読んでいた。


鈍色の情報本には、この本読みたいな、と思いながら開くと、その本の内容が一字一句違わずに書かれているという素晴らしい機能があるので、読もうと思えば誰かが綴ったラブレターまで読める優れものだ。

読んだ事はないけれど。


それはまぁいいとして、本を読んでいるときに客が来た。

眼鏡をかけ、品のある服装に身を包んだ中年の男。

その男の事を知っている私は、あの事だろうなぁ、と思いながらも笑顔で接客する。


「いらっしゃいませ」


「お久しぶりですねターミャ嬢。ところで本の修理を頼めますか?」


入ってくるなりそれはないだろう。

差し出された本を受け取って、その場でパラパラとめくる。

その行動に吃驚している様子の男は無視。

33ページ目にはやはり紙と大金が挟んであり、紙には予想通りの内容。


『エリシア王女の病気が治った件について』


それを見て心の中で溜息をついて、本を閉じてそのまま男に返す。


「申し訳ありません。その件については私も全く分からないので」


「口封じでもされましたか?」


「なんの事でしょう?」


ニッコリ笑顔で対応。

間違っても、それは自分がしました、なんて言えるわけがない。

暫く見えない火花を散らした後、溜息をついた(負けた)のは相手の男。


「……では次はこれをお願いします。代金はその本の分でいいです」


次に渡されたのは『ティガー伯爵家の最近の動きについての情報』。

よし、諦めたか。


「かしこまりました。宰相さんも大変ですね」


そう、彼はこの国の宰相なのだ。

名前はロンド。

仕事に真面目だが愛妻家なのが有名で、最近は娘が嫁に行った件で一騒動あったそうだ。

なんでも婿の家は隣国ロシェンの王族なのに剣で切りつけようとしたとか。

彼等は恋愛結婚なため、それも笑って済まされたが政略結婚なら戦争ものだ。

結婚式の日は「小さい頃はパパと結婚すると言っていたのに」と泣きながら言っていたらしい。


「貴方が楽に情報を渡してくれれば少しは楽になるのですが」


「なんの事やら分かりませんね。はい、どうぞ」


会話中にも私は紙に情報をかいて本に挟みロンドに渡した。

勿論お金は回収済みだ。

受け取ったロンドはその中身を確かめた後、礼を言って店を出ていった。


「今日も賑やかだなぁ…」


ロンドが店の出入り口の扉を開けたときに漏れた街の騒音に、私は少し苦笑した。

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