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言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹
第三章 神罰が一回だけとは限らない

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第二十四話 新米王女殿下、屑に底がない事を知る



「まぁ、読んでみろ」


 ラスボス級の黒い笑顔を浮かべながら、お父様は王国から来た書簡を机の上で広げた。


「……たぶん、書かれているのは、救助要請でしょ。色々言い訳を並べていそうだけど。でも、それが何なの?」


「その言い訳が愉快なんだろ」


 そんな事を兄妹で言いながら、書簡に視線を落とした。読み進むにつれ、全員から表情から消えた。


 読み終えた後も、重い沈黙が続く。


(…………はぁ!? 何これ? 気は確かなの?)


「……これ、破ってもいいよね」


「いや、ここまでおかしいと、却って風化防止処理をして飾っておきたいな」


 ははと、ラリーお兄様は笑う。だが、その目は全く笑ってはいない。室内の温度が確実に五度は低くなったわ。でも、右半分は暖かい。イシリス様の体温で。助かるけど、室内の温度は更に下がっていく。


「潰す。今すぐ潰す。徹底的に潰す」


(えっ……イシリス様の声よね)


 呪詛のようにブツブツと呟き続けるイシリス様の声が聞こえた。私は慌ててイシリス様の腕を掴み引っ張ったわ。


「イシリス様!! それ、聖獣様が言ったら駄目な単語だから!! あ〜完全に闇堕ちした顔になってる!! イシリス様!! 感情にかられて簡単に潰したら面白くないので、少し落ち着いて下さい!!」


 必死で引き戻したわ。何とか、イシリス様は正気を取り戻してくれた。


「……ミネリアの言う通りだな。簡単に潰したら面白くない」


(反応したのは、そこなの!?)


「そうですね、簡単に潰したら面白くない」


 お父様がのんびりした口調で、イシリス様に賛同する。負けず劣らず、怒気を撒き散らしながら。さっきまでお父様の傍に控えていた宰相様が、いつの間にか部屋の隅に避難しているわ。


(さすが、モリアス様ね。この三人の怒気を浴びて、それで済むなんて)


 ここで、ラリーお兄様が口を開いた。


「まさか、我がベルケイド王国を、戦犯及びモリアス元公爵家当主と御息女の誘拐犯として、損害賠償を請求してくるとは。あ〜おかしい、腹が(よじ)れそうだ」

 

 そう可笑しそうにラリーお兄様は言ってるけど、全然笑っていないからね。


(ラリーお兄様要約し過ぎ。ここは、きちんと訂正しないといけないわ)


「違いますよ、ラリーお兄様。正解に言えば、聖獣様の力を我が物とし、王国を混乱に導いた責任として、今すぐ自分達を手厚く保護し、屋敷と地位を与えろ。そして、賠償金も払え。更に、宰相と婚約者を誘拐した事による慰謝料も追加で払え、とぬかしてるのよ。誠意を見せないのなら、この事実を周辺諸国に告げると脅してる。……つまり(まと)めると、屑は何処までいっても屑。屑に底はないのよ」


(頭がお花畑だと思っていたけど、蛆もわいてるのね)


「奴らの思考回路は全く理解出来ないが、これ、放置でいいだろ?」


 お父様の案に、私は異議の声を上げる。


「放置!? 甘過ぎるわ、陛下!! そもそも、屑が公の場で勝手に婚約破棄をしといて、リアス様を自分の婚約者って、自分勝手にも程があるわ!! 下半身節操なしね屑の脳味噌は下半身に付いてるのね!! マジ、潰してやりたいわ、自慢の下半身」


「……ミネリア、気持ちは分かるが、淑女が下半身を連呼するな」


 お父様はニヤニヤ笑っているのに、ラリーお兄様が(たしな)めてくる。


「ラリーお兄様は知らないのよ!! 王国の屑達は、皆下半身と股がゆるい奴らばかりなんだから!!」


 私はラリーお兄様に詰め寄った。


「股って……」


「胸元と背中が大きく開いたドレスで、私のイシリス様に迫ったのよ!! 娼婦みたいにね!!」


(あ〜今思い出しても腹が立つわ!!)


「それ……」


「何ですか!? ラリーお兄様」


 じろりとラリーお兄様を睨み付ける。


「いや、なんでもない。陛下、俺も、ただ放置するのは面白くありません」


「そうだな……ラリアスとミネリアの言う通り甘いな。だったら、これを複写して、最速で周辺諸国に注意喚起しようか。新手の詐欺が現れたと」


 相変わらずラスボス感丸出しで、お父様は訂正してきた。


「ああ、それがいいですね」


 ラリーお兄様が賛同する。勿論、私もそれには賛成。だけど、納得出来ない。


「安心しろ、ミネリア。下半身を使えなくしてやろう。腐らすのが一番か……さぞかし、痛いだろうな。うん、それがいい。あいつらの子種など害悪しかないだろ。勿論、女の方もな」


 私を抱き寄せ、イシリス様はとびっきり良い笑顔で愛を囁くように言う。


 ラリーお兄様とお父様、宰相様の顔が引き()っているのも気付かずに、私は笑顔で「良い案です」と答えた。



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