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言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹
第二章 新米王女殿下の初仕事

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第十七話 新米王女殿下、神の怒りの重さを語る



「あらあら、王城の扉がしまっているわね。これでは、民は中に入れないじゃない。王族の奴らは、民を見殺しにするつもりなのね。……ほんと、屑は何処までいっても屑って事か。王族でありながら、自分達の事しか考えられない。心底、虫唾が走るわ。穢らわしい」


 つい、心の声がそのまま出てしまったわ。表情もとても険しい。淑女の顔じゃないわね。勿論、王女としても。言葉遣いも悪いし、それに声も低いしね。敢えて、取り繕うとは思わなかった。それ程、神経に障る、不快感極まりない映像だから。


 宰相様は言葉を失いながらも、映し出されている映像を見続けている。私の声は届いていないのかもしれない。


 その表情から、宰相様が何を思いながら見ているかは分からない。でも、小刻みに震える肩から、早く屑達を見捨てなかった自分の甘さを嘆き、後悔しているように私には見えた。今更だけどね。


「王族の周囲だけ、結界が壊れずにあるって事は、創世神様は余程お怒りになっているようだな」


 ぽつりとお父様が乾燥を述べた。


 淡々とした口調のように聞こえたけど、かなり怒っているのが分かった。お父様の癖ね。娘だもの分かるわ。

 

 お父様の台詞に反応したのか、宰相様はお父様に視線を向ける。


「……そうですね。相当なお怒りだわ。苦しめるだけ苦しめて、最も残虐な方法で最期を迎えさそうとしてるわ。……王城の扉を開け、民を保護していたら、多少は変わっていたでしょうね。最後の最後まで、選択を誤るなんて、救いようがない屑だわ」


 言葉遣いを取り繕うとは思わない。ほぼ素の状態で話した。話し方よりも、話の内容に宰相様の意識が向いた。


「……どういう意味ですか?」


 お父様と私の見解を、宰相様は疑問に思ったのか、私に問い掛けてきた。私は質問の意味がよく分からなくて、首を傾げる。


「どういう意味って、そのままの意味だけど」


「そのままの意味とは……?」


 宰相様は本当に分からないみたい。それとも、考えたくないのか……私には分からないけど、訊かれた事はきちんと答えるわよ。


「王城の扉を開け、民を助けていたなら、まだ人の尊厳は護られたまま死ねたわね。暴徒化した民に殺されるか、魔物に食い殺されるか、そのどちらかよね。でも、屑達はそうしなかった。モリアス様も知っているでしょ、非業な死を遂げた者がどうなるか」


「……生きる屍になる」


 更に顔色を失い、白くなった宰相様は、小さな声で吐き出すように呟いた。私は小さく頷く。


「正解。本来、人は死ぬと魂は身体から抜け、来世へと生まれ変わるための旅に出るわ。魂が抜けた身体は腐り、土にかえる。でも、非業の死を遂げた者は、身体から魂が抜けない。結果、呪われ、生きる屍となり、生きる者を求め(むさぼ)り食う。そして食われた者も、生きる屍になるの。見てみなさいよ、あちこちで、生きる屍が生まれ続けているわ」


 突然魔物に襲われ、食われた民達が、身体の一部を欠損しながら立ち上がって、生者が集まる王城へと向かっている。中には、這って行こうとする生きる屍もいた。


(まさに、地獄絵図ね)


 それにしても、イシリス様の眷属達は優秀だわ。高台に避難しながら、この状況を監視しているのだから。


「…………」


 宰相様は、もはや言葉一つ発する事が出来なくなっていた。まぁ、そうなるよね。


「結界が壊れていないから、今は大丈夫だと、奴らは思っているかもしれないけど、いつ創世神様の気が変わるか分からない。屑達は毎日ビクビクしてると思うわよ。頼みの綱である、聖騎士もおそらく力は使えないだろうし、贅沢に慣れきった屑達が、食料を備蓄し計画的に食べているとも思えない。まぁ、モリアス様がいたから、多少は備蓄していたとしても、そんなの焼け石に水でしょ。そもそも、屑達が、野菜スープと固いパンの生活に我慢出来るの?」


(まず、無理よね)


 贅沢に慣れきった者は、質素な生活はおくれない。これ、常識ね。


 だから、ベルケイド王国では、元王国の貴族達のような、食べ切れない程の料理は並べない。残すっていう、概念がないからね。そこが、田舎貴族って馬鹿にされてた所だけど。


 私は一端、言葉を区切ってから続けた。


「……それに、他国に援助を求めようとしても、誰が手を差し伸べるの? 創世神様と聖獣様に見限られた国を。常識的に考えて、下手に助けて自国を機嫌に晒したくはないよね」


 私もお父様も、絶対に助けたりはしないわ。だって、この王国に住む民が一番大切だもの。屑達は、自分達が一番大事だったようだけど。


 それが命運をわけた事に、一生、屑達は気付かないでしょうね。だから、屑なのよ。  



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