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言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹
第二章 新米王女殿下の初仕事

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第十五話 新米王女殿下、神罰を目の当たりにする



(目を逸らさないのね、リアス様)


 普通の令嬢なら拒否するか、俯き震えそうなのに、リアス様は硬い表情をしたまま、私達から視線を外さず待っている。だけど、膝の上に置かれた拳は固く握られていた。


(……やっぱり、私の選択間違ってなかったわ)


 リアス様に対する信頼度が上がった。


 そうそう、簡単に見せると言ったけど、私にはそんな高等な魔法は使えない。


 なので、ここはイシリス様の出番。


 なんでも、王国の動向を探るために、自分の眷属を王国に残していたそうだ。イシリス様(いわ)く、その眷属の目を通して知る事が出来るらしい。感覚共有ってやつね。


(さすがだわ。距離なんて完全無視だもの。凄いけど、使いようによっては怖いよね)


「そう考えるミネリアが、俺はとても愛しく想う」


 心の声を読んだイシリス様は、リアス様の前で頭にキスをする。ついでに、首筋の匂いを嗅ぐのも忘れない。


 家族の前で普通にやっている事なんだけど、リアス様は顔を赤らめながら目を逸らす。私達にとっては軽いスキンシップなんだけど、リアス様からしたらそうじゃないみたい。


(刺激が強過ぎるのかな?)


 なら、早く慣れてもらわないと。私だけじゃないからね。お父様もお母様もそうだから。因みに、ラリーお兄様と婚約者のサーヤ様もそう。


 何故か、ベルケイド王国は恋人や夫婦間の距離が近いのよね。王国は正反対だったけど。でも、代わりに愛人や妾がいる事に驚いたわ。ベルケイド王国では殆どないからね。イシリス様と創世神様を信仰しているからだと思う。


(まぁそれは、一先(ひとま)ず横に置いといて、王国の様子よね)


 イシリス様は片腕を上げ、空中をサッと撫でるように動かす。すると、(もや)が現れ、直ぐに瓦礫の山を映し出した。


 リアス様は咄嗟(とっさ)に口を押さえ、悲鳴を飲み込む。


「……神殿ですね。辛うじて分かるけど…………」


 瓦礫の中に、夫婦神である創世神様の像の破片が映し出されているからね。直ぐに何処か分かった。


「当然の処置だな。人如きが創世神の名を語り、神の(ことわり)を否定し利用しようとしたのだ。創世神の加護などいらぬと宣言したようなものだろ。なら、外されても文句は言えない」


 淡々と事実だけをイシリス様は語る。


「去り際に落雷の音が鳴り響いていたけど、神殿だったのね」


 これで、民も不審に思う筈。一夜にして、王都にある全ての神殿が破壊されたのだから。薄々、加護を失ったと気付く者も現れるわね。


「まぁ、王都だけじゃないだろうな」

 

 ぽつりとイシリス様が呟く。


「という事は、ベルケイド王国を除く、全ての神殿或いは教会が破壊されたと?」


「あぁ、間違いなく破壊されたな」


(完全に加護を解いたって事ね……可哀想だけど、仕方ないわね。神は平等だもの)


「……王城はどうなってるの?」


 イシリス様に尋ねると、先程と同じ様に片手を上げ横に撫でるように動かす。


 映し出されたのは、以前と変わらぬ王城。


 リアス様は食い入るように映像を見詰めている。


「あら? 王城は破壊されてないのね」


「簡単に破壊されたら、面白くないだろ?」


 ニヤリと笑いながらイシリス様は言う。


「なるほど、そういう事……創世神様はかなりお怒りのようですね」


「そりゃあ、そうだろ。見てみろ、王都を護っていた結界が壊れたぞ」


 イシリス様の台詞と同時に変わる映像――


 結界に弾かれて侵入出来なかった魔物達が、一気に王都内に雪崩込んで来た。本来なら、結界の近くにすら寄れなかったのに。本能で、結界が弱くなっているのが分かったのね。


 王都に響き渡る悲鳴。


 あちこちで上がる火の手。


 民は必死で王城に向かっている。そこには、魔物討伐が出来る聖騎士がいるから。


(命からがら辿り着いた民は、どう思うかしら。王城の周囲に張られた結界が無事なのを見て)


 私はチラリとリアス様に視線を向ける。口元を押さえながら、青い顔で震えていた。でも、目を逸らす事なく凝視している。


「ここまででいいですわ、イシリス様。此処から先は、リアス様には酷ですから」


 私がそう告げると、イシリス様は映像を消した。


 イシリス様は全ての神殿、教会は破壊されたと言った。眷属達は王都の様子しか映してないけど、たぶん……いや、間違いなく、王城以外の町や村の結界も解けたと考えた方がいいわね。


 だとしたら――


 平和に慣れきった町や村には、兵士や冒険者はいても、聖騎士は常駐していない。そもそも、聖騎士がいたとしても、その力が使えるかどうかは疑問だけどね。その力を授けていたのは、創世神様だから。


(結界関係なく、難民が押し寄せて来る事はないわね)


 馬鹿な王族達の犠牲になったのは、正直可哀想だと思うわ。でも、彼らの中に、創世神様や聖獣様に対する感謝と敬う気持ちがあったかは謎ね。祭祀も祈りも、義務化していたし。純粋に祈りを捧げる人は少なかった。


(もし、気持ちがあるのなら、その方達は生き残る事が出来るわ。そして、ここに辿り着ける)


 リアス様から見たら、私の考えは、突き放すようで冷たいと思われるかもしれない。だから、口には出さない。少しづつ築き上げている関係に水をさしたくはないからね。


 この映像の続きは、私達家族と元宰相様だけで見る事にしましょうか。元宰相様はリアス様とは違う。彼は最期まで見る責任があるからね。元王国の中枢にいた方なのだから。


 


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