表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

第十二話 決別



 やるべき事を終えたし、優秀な人材もゲット出来た。もう、この場に用はないわね。


「行きましょうか? イシリス様」


 私がそう声を掛けようとした時だった。控えていたリアス様が頭を下げ、少し時間をくれるようお願いしてきた。


「聖獣様、ミネリア様、少しお時間を頂けないでしょうか? やり残した事がありますので」


(やり残した事?)


 疑問に思いながらも、リアス様の凛と(たたず)む姿を見て、イシリス様と私は許可した。


「分かりました。憂いは取り除いた方がいいですよね」


「ありがとうございます」


 リアス様は頭を再度下げ礼を言うと、まだ押さえ付けられている馬鹿王子の前に立った。


(あっ、完全に忘れてたわ)


「…………リアス」


 馬鹿王子が媚びるように笑う。心の醜さが全面に出て来たような笑みに、私は顔を歪ませた。


「醜いわね……」


 思った事をそのまま声に出してしまった。その声は小さかったけど、イシリス様にははっきりと聞こえていたみたい。


「早くせよ、リアス」


 少し苛立ちながら、イシリス様は命じた。


「はい。畏まりました」


 そうイシリス様に答えてから、リアス様は馬鹿王子に向き合う。


「……リアス、お前は分かってくれるよな。私はこの女に騙されたんだ……頼む、ミネリア様に私を許してくれるよう取りなしてくれないか……頼む…………リアス!!」


 リアス様に(すが)り付き、馬鹿王子は命乞いをし始めた。


(さすがの馬鹿も、リアス様が命綱を握っているって分かってるみたいね。本能? でも、そう上手くいくわけないでしょ)


 見てよ。


 段々絶望していく、馬鹿王子の顔。

 

 沈黙が痛いのか、黙って見下ろしているリアス様に、馬鹿王子は必死で名を呼び嘆願している。


(数時間前では想像出来ない姿よね。ほんと、惨め。そんな中でも、マリアって女はブレないかわね)


「何言ってるのよ!! 私一人に罪をなすり付けるつもり、そんなの許さないわ!! それに、おかしいわ。私は〈聖なる乙女〉になるべき、選ばれた存在なの!! 物語ではそうなってるんだから!!」


 意味不明な事を叫ぶマリアに、私は首を傾げた。


「あの女は、前世の記憶があるかもしれないな。稀にいるらしい」


 イシリス様が教えてくれた。


(前世ね……)


「知るか!! この魔女が!! 頼む、リアス、私は魔女の術に()まってしまっただけなんだ……だから――」


「貴方は……」


 馬鹿王子の台詞を、リアス様は遮った。リアス様の声に希望を抱いたのか、馬鹿王子は口を閉じ彼女を見詰める。冷え冷えとした声で、リアス様は続けた。


「貴方は最後まで、御自身の事だけなのですね。聖獣様にも、ミネリア様にも、私にも、謝罪の言葉一つなく、御自身の身の安泰だけを願う。……昔の貴方は、そうではなかったのに。非常に残念ですわ。貴方も王族であるなら、最後は国と共に朽ちなさい。……ジェイド様、婚約破棄、確かに承りましたわ」


 美しいカーテシーをし、リアス様は馬鹿王子に背を向けた。そして、イシリス様と私に頭を下げ礼を述べた。


「お時間を頂きありがとうございます、聖獣様、ミネリア様」


「構いませんわ。ね、イシリス様」


 イシリス様の首元を撫でながら、彼に話し掛ける。


「ミネリアがそれでいいなら、俺は構わない」


(少し素直じゃないけど、ほんと、イシリス様は優しい方だわ。私は幸せ者ね)


「では、今度こそ、我が国に戻りましょう」


 私はそう告げると、宰相様とリアス様と一緒に王都を後にした。勿論、公爵家の使用人達も配下の人達も一緒にね。あっという間に準備が終わって、吃驚したわ。優秀な人の傍には優秀な人が集まるのね。


「……これは序の口よ。これから降り注ぐわよ、災厄が次々とね。せいぜい苦しみなさい。自分達の愚かしさが招いた結末を」


 背後で鳴り響く落雷の音を聞きながら、私は小さな声で呟いた。イシリス様は何も言わす、私に寄り添ってくれた。




 数多くある小説の中から、選んで頂きありがとうございます。

 第一章完結しました。

 明日から、舞台はベルケイド王国になります。

 引き続き、お楽しみ頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ