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ユナの旅【連載中】  作者: りな


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6/13

6

「ユナ、像をもらえるそうだ」

ガルドが、社の前に立つユナに声をかけた。

ユナは立ち上がり、二人の方へ向かう。村長はしばらくの間、何かを考えるように黙っていたが、やがてその場を離れた。

少し時間が経ってから、村長は鞄と、布に包まれた塊を抱えて戻ってきた。

「像は、この中にある。他のも一緒に包んでおきなさい。鞄は、一番頑丈なものを選んだ。使うといい」

淡々と、しかし迷いのない口調だった。

「……ありがとうございます」

ユナは、とりあえずそう答えた。他にどう返せばいいのか、分からなかったからだ。


村長は、別れ際にガルドとユナへ食糧を持たせてくれた。干し肉や保存の利くパンが、丁寧に包まれている。

「すごく、いい人だったね」

村を離れて少し歩いたところで、ユナが言った。

「……そうか?」

ガルドは、素直に頷けなかった。村長は、最初――像を渡すことを断固として拒んでいた。それが、ユナを見た途端、態度を変えた。まるで、何かを確信したかのように。

ガルドには、それがどうにも不思議だった。

「何か……おかしなことは、なかったか?」

ガルドが尋ねる。

「別に。普通だよ」

ユナは、首を傾げながら答えた。


ガルドは足を止め、地図を広げた。

風に揺れる紙を押さえながら、黙って目を走らせる。

ユナは、そこで気づいた。地図の上に記された村の名前が、三つ――消されている。

ガルドの表情は、険しかった。ユナは、消された跡を指差す。

「……この、しるしは?」

「消えた村だ」

短く、ガルドは答えた。

「村同士は、定期的に連絡を取り合っている。それが途絶えた、ということだ」

その言葉の意味を、ユナはすぐには理解できなかった。けれど――それは、すでにその村から像が失われたことを、意味していた。

「まだ、像は残っている。急ぐぞ」

ガルドは地図を畳み、歩き出す。ユナには、間に合うかどうか分からなかった。



「次は、海を渡るぞ」

ガルドが言った。

「……うみ?」

ユナが聞き返す。

「海だ。知らないのか?」

ユナは、無言で頷いた。

「とても大きい、しょっぱい湖みたいなものかな」

ユナは想像をする。大きな、大きな湖。

「見れば分かるさ」

ガルドはそう言って、少しだけ口元を緩めた。

「凄いぞ」

その声は、どこか楽しそうだった。ユナは、そんなガルドの横顔を見つめながら思う。

この人は、時々おじさんに見えるし、こうしていると、少年みたいにも見える。……でも。やっぱり、おじさんだろう。

ユナは小さく息を吐いて、前を向いた。


何日か歩いて。ユナは、初めて海を見た。……真っ直ぐな線が、海と空を分けている。どこまでも続くその境目は、あまりにも遠く、現実味がなかった。

波は太陽の光を受けて、きらきらと輝きながら打ち寄せてくる。寄せては引き、引いては寄せるその動きは、途切れることがなく、いつまでも見ていられそうだった。

けれど――。波が、生き物のようにも見えてきて、ユナの胸に、じわりと怖さが広がる。

思わず、ガルドの服を掴んだ。

「どうだ、凄いだろう?」

やっぱり、ガルドは楽しそうだった。

ユナは小さく頷く。怖さは消えなかったけれど、それ以上に、不思議な景色だった。

海は、確かに凄かった。

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