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ユナの旅【連載中】  作者: りな


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5/13

5

「次に行く予定だった村は……もう、ない」

歩きながら、ガルドは淡々と言った。

「……坊主は、生き残りだな」

ユナは何も言わず、ただ小さく頷いた。

ガルドは懐から一枚の紙を取り出した。それはひどく古びていて、端は擦り切れ、所々が読めなくなっている。

「……それは?」

ユナが尋ねると、ガルドは紙を広げた。

「地図だ。この像を手に入れた場所で、もらった」

彼はじっと地図を見つめ、指で一点をなぞる。

「次は、ここか」

ユナには、そこがどこなのか分からなかった。ただ、ガルドについて行くしかなかった。二人は野を越え、山を越え、森を抜けた。夜は野宿が続き、焚き火を囲んで眠る日々。

ユナの足の裏は、皮が破れた。歩くたびに、鋭い痛みが走る。それでも、ガルドは前を見て歩いている。

振り返ることは、なかった。

ユナは歯を食いしばった。声は、出さない。

わかっていた。

今の自分は、守られるべき存在でも、対等な仲間でもない。――荷物だ。

そう思った瞬間、痛みよりも、胸の奥がひりついた。ユナは、それでも足を止めなかった。

途中、ガルドは獣を狩った。魔法で――。

初めてそれを見たとき、ユナは思わず息を呑んだ。

詠唱がない。杖も、構えもない。一瞬で風が刃となり、獣を仕留めた。

……無詠唱?

村人でも、無詠唱魔法は難しい。よほど熟練した魔法使いでなければできない、と聞いていた。それなのに、ガルドにとってそれは特別なことではないらしい。

肉を得るために使う魔法は、主に風魔法だった。無駄がなく、静かで、確実。ユナは、解体を手伝い、肉を焼く役目を担った。

血の匂いに慣れ、火の扱いにも慣れていく。

そうして二人は、言葉少なに、旅を進めた。


次に辿り着いた村の中央には、社があった。

それは、ユナがかつて暮らしていた村のものと、よく似ていた。

思わず、足が止まった。

ガルドは、村長らしき人物と話をしていた。真剣な表情で、何度も言葉を交わしている。

話はなかなか終わりそうになかった。

手持ち無沙汰になったユナは、村外れの草原へ向かった。咲いている野の花を、一本、また一本と摘んでいく。そして、それを抱えて社の前へ行った。

「……はじめまして。神様」

小さくそう言って、花を供え、社の前に座る。

ユナの居た、焼け落ちた村には立ち寄らなかった。まだ残党がいるかもしれない――そう、ガルドが判断したからだ。

だからユナは、こうして社の前に座った。

風が草を揺らし、花の香りがほのかに漂う。

ユナは何もせず、ただ社を見つめたまま、そこに座り続けていた。

まるで、何かを祈るように。


やがて、ガルドと村長が社の方へと歩いてきた。先に気づいたのは、村長だった。

村長は、ふっと足を止める。

それに合わせるように、ガルドも立ち止まった。

「あの子は……?」

村長の視線の先には、社の前に座るユナの姿があった。

「像を一体、持っている。旅の道連れだ」

ガルドは、簡潔に答える。

「……気づかないのか?」

村長は、静かに問いかけた。

「何を?」

ガルドが聞き返す。村長は一度、首を振った。

「まあ、いい。像は、渡そう。――おまえではなく、あの子にな」

そう言って、村長は再びユナへと視線を向けた。ガルドは、何も言わなかった。

だが、その沈黙の中に、微かな緊張が走っていた。


ゆっくり話を進めれたら、と思ってます。

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