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ガルドとユナは、村を後にした。
人の気配が薄れ、道が再び森へと続く頃まで、二人は無言で歩き続けた。
しばらくして、ガルドが足を止める。
「どうして、それを持っている」
不意に投げかけられた言葉に、ユナは答えなかった。懐にある神様の像を、無意識に握りしめる。
ガルドはため息のように息を吐き、腰のポーチに手を伸ばした。取り出したのは、ユナが持っているものと同じくらいの大きさの――
人の形をした像だった。
「これが何か、知ってるか?」
「……村の、神様」
ユナは、ぽつりと答えた。
「そうか」
ガルドはそれ以上何も言わず、像を再びポーチへしまった。
「俺は、この像を探している。聖騎士団が手を出す前に、集めるのが目標だ」
その言葉の重さを、ユナは正しく理解できたわけではない。けれど、これがただの偶然ではないことだけは分かった。
「それは……ユナを、選んだ」
ガルドはユナを見下ろし、静かに問いかける。
「一緒に行くか?」
ユナは一瞬も迷わなかった。
小さく、けれどはっきりと、頷く。
こうして二人は、同じ像を抱え、同じ道を進むことになった。
それが何を意味するのかを、まだ知らぬまま。
ユナのいた村で「神」と呼ばれてきた像の正体は、先代の魔王の魂が分割され、封印されたものだった。
それは、人間たちの知らない――魔王が倒されるのではなく、密かに“代替わり”をした真実。
村の人々が信仰の対象として祀ってきた像は、魔王の魂の欠片。村の人々は、先代魔王の信奉者だった。
ガルドは、その事実を知る数少ない者の一人。かつての魔王に仕えた腹心の配下であり、主の魂を守るため、各地に散らばった像を集めていた。
一方、聖騎士団――人間を守る正義の象徴とされるその組織の頂点には、現魔王の配下が静かに入り込み、前の魔王の痕跡を消し去ろうとしていた。
隣村が焼かれた理由も、「魔物の仕業」ではなく、真実を全て隠すための粛清だった。
ユナは、そのすべてを知らない。自分がなぜ神像を託され、なぜ生き延び、なぜガルドと出会ったのか――。
それでも、ユナはガルドと共に歩く。
像を集め、村を巡り、少しずつ世界に触れていく。
手伝いながら、守りながら、疑問を抱きながら。
そしてやがて、ユナは真実に近づいていく。
自分自身が、この「代替わり」に深く関わる存在であることを――まだ知らないまま。




