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ユナの旅【連載中】  作者: りな


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ガルドとユナが村に戻ると、広場は思いのほか静かだった。

そして、村長の家の前に立つ影を見て、ガルドは足を止める。

――村長だ。すでに戻っていた。

「……村長、か?」

ガルドが低く問いかける。

「そうだ。皆に聞いた。自分を探していたと」

「よく無事に、町から出れたね」

ユナは言った。

村長は一瞬、周囲を確かめるように視線を巡らせ、声を落として答えた。

「荷物を積んだ荷車の底に隠れてな。二重底にしてあったんだ。検問で止められたけどな」

村長は苦く笑う。

「あとは……正直、運が良かっただけだ」

「そう。良かった」

ユナはそれ以上、深くは聞かなかった。

ただ、ぽつりと続ける。

「あの女の人は、村の人なの?」

その一言に、村長は小さくうなずいた。

「ああ。商人さ。とても頼りになる……」

そのやり取りの間、ガルドは家の入口に立つ女性に目を留めていた。

村長の妻だ。

彼女は言葉もなく、両手で口元を押さえ、

大粒の涙をぽろぽろと零している。安堵と恐怖と、張りつめていた日々が一度に溢れ出したようだった。

それに気づいたユナは、胸の奥が締めつけられるのを感じた。

無事に戻れた。それが、どれほど奇跡に近いことか。


村長は、ふいにユナの方を向いた。

その視線は、先ほどまでの疲れ切ったものとは違っていた。

「……渡したい物がある」

低くそう言うと、踵を返し、ついて来るように顎で示す。ユナは一瞬ガルドを見上げ、ガルドは無言で頷いた。

二人は村長の後を追う。

辿り着いたのは、村の真ん中にある小さな広場だった。

昼間なら子どもたちが走り回る場所だが、今は誰もいない。月明かりだけが、地面を白く照らしている。

村長は広場の中央に立つと、深く息を吸い、低い声で何かを唱え始めた。

言葉は古く、耳に馴染まない。

次の瞬間、空気がみしりと軋んだ。

まるで見えない布を無理やり引き裂くように、空間が歪み、裂ける。

「……っ」

ユナは思わず息を呑んだ。

裂け目の向こうから、村長は両手を差し入れ、ゆっくりと何かを引き出した。

現れたのは、あの、像だった。

夜の光を吸い込むように、重く静かにそこにあった。

「それは……」

ガルドが低く唸る。

「村長の術か?」

村長は像を抱えたまま、首を横に振った。

「前の村長から、伝わるものだ」

静かに言い、続ける。

「だが、これを作るために……片腕を捧げた」

一瞬、沈黙が落ちる。

「魔力が、足りんのだ。この身体ではな」

自嘲するように口元を歪めた。

ガルドの目が細くなる。

村長は像を地に置き、背筋を伸ばした。

その姿は、もはやただの村長ではなかった。

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