表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユナの旅【連載中】  作者: りな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/25

17

ユナは壁に手を添えたまま、ゆっくりと歩いた。石の壁は冷たく、湿り気を帯びている。指先で確かめながら進まなければ、足を踏み外しそうだった。

暗い。灯りはなく、ただ闇が続いている。

ユナは靴底を浮かせるようにして、足音を殺した。呼吸さえも、意識しなければ大きく響いてしまいそうだ。

――その時。

前方に、かすかな明かりが見えた。揺れる、橙色の光。松明だ。

ユナは立ち止まり、柱の影に身を寄せた。

目が暗闇に慣れてくると、光の正体がはっきりしてくる。

…牢だ。石の壁に埋め込まれた鉄格子。

その前に、武装した見張りが一人、槍を立てて立っている。兜の下から覗く顔は無表情で、松明の光に照らされ、影が濃く落ちていた。

さらに、牢の奥。鉄格子の向こうに、人影があった。座り込んでいるのか、横たわっているのかはわからない。ただ、確かに誰かがいる気配がした。

ユナの胸が、強く脈打った。見られてはいけない。

ユナは息を止め、音を立てぬよう、一歩後ろへ下がる。そして、壁の窪みへと体を滑り込ませ、闇に身を溶かした。

影の中で、ユナはじっと動かず、様子をうかがった。


ユナは、じっと待っていた。

息を殺し、身を縮め、見張りの動きを窺う。

けれど――見張りの兵士は、まったく動く気配を見せなかった。

……無理だ。ユナはそう判断し、静かに引き返そうとした。

一歩、足を動かした、その瞬間だった。闇の中から、突然、腕を掴まれた。

「……何で、こんな所にいるんだ?」

低い声。別の兵士だった。

強く掴まれた腕は、びくともしない。ユナは身動きが取れず、喉がひゅつと鳴った。

「おい、どうした!」

牢の前にいた見張りが声を上げる。

「ネズミだ」

短く吐き捨てるように言って、兵士はユナの腕を引いた。引き摺られるようにして、明かりの下へ連れ出される。

「どうして、ここにいるんだ」

兵士の低い声が、地下に重く響いた。

ユナは必死に言葉を探し、震える声で答えた。

「……ごめんなさい。大切な櫛を、落として……。探していたら、何か……落ちて……」

たどたどしく、途切れ途切れに。

「どうだか」

兵士は冷たく言った。

「どうする?」

「とりあえず、牢に入れるか。持ち物は全部取り上げろ」

ユナは、必死に首を振った。

「待って。櫛だけは、返して……。他は、いいから」

声が掠れるほど、必死だった。

「ふん」

兵士は鼻を鳴らし、ユナの鞄を乱暴に奪った。中身をひっくり返す。

「ろくなもん、無いな。ガキ」

そして、ひとつを摘み上げる。

「櫛ってのは、これか?」

ユナは、その手元を見て、強く頷いた。

――あの、木彫りの櫛。

兵士は、興味なさそうにそれを放り投げた。

ユナは慌てて屈み櫛を拾い上げた。その時、

足元に転がってきた布包みが、視界の端に入った。

反射的に、ユナはそれを掴んだ。中身を確かめる余裕はない。ただ、布越しに伝わる硬さと重み――像だ、と直感した。ユナは身体を丸めたまま、そっとそれを腹の下へ滑り込ませた。

その瞬間。鈍い衝撃が、体を打った。

兵士の蹴りだった。

「っ……!」

ユナの体は壁に叩きつけられ、息が詰まる。

「手間、かけさせやがって」

兵士はそう吐き捨て、ユナを掴み上げると、そのまま牢の中へ投げ捨てた。

鉄格子が、がしゃりと音を立てる。

鍵が回され、重い音が響く。

そして、見張りの兵士は交代し、何事もなかったかのように、その場を離れていった。

闇と鉄の中に、ユナだけが残された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ