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ユナの旅【連載中】  作者: りな


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ユナは、目を覚ました。

……ここは、どこだろう。

知らない天井。知らない壁。知らない、匂い。

ユナはしばらく、ぼんやりと天井を見つめていた。

――ガルドは?その名前が浮かんだ瞬間、現実が一気に押し寄せる。ユナは勢いよく、跳ね起きた。

「起きたの?」

声が、上から降ってきた。ユナは、はっとして振り返る。……知らない、女性。

「水だよ」

差し出された器を、ユナは警戒しながら見た。

「毒はないよ」

女性は苦笑して、自分で一口、水を飲んでみせる。そして、器をユナの手に渡した。

「……ありがとうございます」

ユナはそう言って、水を口に含んだ。冷たい水が、喉を通り、乾ききっていた身体の奥まで、ゆっくりと染み渡っていった。


「連れなら、大丈夫だよ。男衆が運んだ。あの怪我で、よく生きてるもんだ」

女性の言葉に、ユナは大きく息を吐いた。

「……何か、食べる?」

ユナは、静かに頷く。女性は部屋の隅に置いてあったお盆を持ち、ユナの前に置いた。

平たいパンのようなものに、干し肉、そして果物。

ユナはお盆を見てから、女性を見上げた。女性は、何も言わずに頷く。

ユナは、そっとパンに手を伸ばした。その様子を見届けてから、女性は音を立てないように部屋を出ていった。

部屋には、かすかなパンの匂いと、ユナの小さな呼吸だけが残った。


ガルドの傷は、深かった。完全に治るまで、時間がかかる。その間、ユナは村に留まり、手伝いをしながら日々を過ごした。

水汲み。畑仕事。家畜の世話。

頼まれたことは、何でもした。それは、かつていた村でも、当たり前にやってきたことだった。

労働の対価が、食事と、寝る場所。ユナにとって、それは、ごく普通のことだ。

村人たちは、ユナに感謝の言葉をかけた。

けれどユナは、首を振り、決まってこう言った。

「ガルドを、助けてもらいました。ありがとうございます」

そう言って、深く頭を下げる。村人たちは苦笑いを浮かべたが、ユナの表情は、どこまでも真剣だった。

それが、ユナの生き方だった。


ガルドの傷は癒え、歩けるようになった。

像は、他の場所にもある。旅は、ここで終わりではない。ガルドは村長のもとへ行き、別れの挨拶をした。

「悪いことをしたとは、思っていない」

村長は、静かに言った。

「ここなら、像は守られるだろう。強い守人が、いるからな」

ガルドの言葉に、村長は弱々しく首を振る。

「……今まではな。守りきれると、思っていた」

そう言って、村長は視線を逸らした。ユナが、女性たちに連れられていった方向を見る。……服が、あまりにもぼろぼろだったから。何か、着せたかったのだろう。

声が、聞こえた。

「もう、いいですから」

ユナはそう言いながら、家から出てきた。前と同じ、だぶついた長袖の服に、長ズボン。

けれど、髪は丁寧にとかされ、前髪は横に分けられている。

青い瞳が、ふと村長の視線に入った。

村長は、目を見開いた。

ユナは慌てて前髪をぐしゃぐしゃにして、顔を隠す。

「もう……逃げられたわ」

女性が、家の中から出てきて、ため息混じりに言った。

「……新しい服。ありがとうございます」

ユナはそう言って、ぺこりと頭を下げた。


村長は、深く息をついた。

「像は……君たちに、預けよう。だが、必ずもう一度、この村に来てほしい」

思いがけない言葉に、ガルドとユナは顔を見合わせた。

「しかし……」

ガルドが言いかけると、村長は首を振って遮った。

「必ずだ。この村へ戻ってくる。それが、条件だ」

理由は語られなかった。ユナにも、ガルドにも、その意味はわからない。

しばらくの沈黙の後、ガルドは小さく頷いた。

「わかった。ありがとう。約束は、守ろう」

そう言って、像を受け取る。村長は、その様子を見届けてから、ユナへと視線を移した。

薄汚れてはいるが、光を帯びた銀色の髪。

そして、時折のぞく、あの青い瞳。


この村の村長は、特殊だった。村長になる者は、前の村長から卓越した魔法使いの能力と同時に、記憶を受け継いできた。……村が始まってから、ずっと。


……あの、青。そして、銀色の髪。

影が、重なった。だが、村長は、それを言葉にしなかった。

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