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【第一部完結】レース編みは万能でした~女神の使徒? 私は飼い猫の異世界召喚に巻き込まれた、ただの飼い主ですよ?  作者: ざっきー
第五章 帝国へ女神様に会いに行くだけのはずが……

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第63話 私(とミケ)について


 私とルオンさんの会話は、内容が危なくてこれ以上外ではさせられないとハワードさんに判断され、場所を移動することになった。

 やって来たのは、個室のある高級レストランだ。


 ハワードさんたちに帝都内の飲食店の情報を持っているか聞いてみたところ、『ある』との答えが。

 しかし、それは自分たちが食事を取るためではなく、帝国貴族がよく利用する店として情報を得ていたとのこと。


 だから、料理が美味しいかどうかは食べてみないとわからないらしい。

 でも、せっかくだから、帝国の料理を食べてみたい!

 というわけで、ここで昼食を取りながら話をすることになった。

 

 ちなみに、ここの支払いは私がするので気兼ねなく食べられる。

 お金は、女神様が「マイがあちらの世界へ帰る前に置いていった」と革袋をくれたから、そこから出すつもり。


 おばあちゃんはギルドに登録はしていなかったから、口座は持っていなかったらしい。

 現金はアイテムボックスに入れて、常に持ち歩いていたそうだ。

 財産のほとんどは事前に孤児院などへ寄付済みで、その残りだという。

 袋を開けてチラッと中を覗いたら金貨が数枚見えたから、食事代には十分足りるはず。


 お世話になったハワードさんとルオンさん、レイ君に「遠慮なく、たくさん食べてくださいね!」と告げておく。

 ルオンさんは喜んでいたけど、ハワードさんから「ルオン、わかっているな?」と謎の注意を受けていた。

 

⦅デール帝国は海に面していないから、やっぱり今も新鮮な魚はないね……⦆


 メニュー表を見たミケが、がっかりしている。

 百年前と状況は変わっていないようだ。

 サイエル王国へ帰ったら、海辺の町まで足を延ばしてみるのもいいかもしれない。

 もしかしたら、ミケの好きなお刺身が食べられるかもしれないからね。


 帝国はサイエル王国よりも北に位置しているからか、ヘンダームよりも煮込み料理がたくさんあった。

 シチューや煮込みハンバーグのような料理の次に、グラタンやドリアっぽい料理を発見する。


「えっ、お米料理がある!」


 思わず声が出た。


⦅団子があるんだから、米があるに決まってるよ⦆

 

 ミケの突っ込みに思わず納得。

 そういえば、ヘンダームでハワードさんに花見団子をごちそうになったっけ。

 あれも、お米からできているもんね。


 ということは、探せばヘンダームにも米料理があるかもしれない。

 帰ったら、真剣に探してみよう。


 私は迷わずドリア(っぽいもの)を注文したのだった。



 ◇



 久しぶりのお米、久しぶりのドリアはとても美味しかった!

 大満足の私はニコニコだ。

 ミケも、慎重に冷ましながら食べ進めたビーフシチューが気に入ったようだった。


 さて、デザートが揃ったところで、ようやく今日の本題に入る。 


「えっと……質問をしてくだされば、何でも答えます」


 いきなり二人へ丸投げして申し訳ないが、聞かれたことに答えるほうがわかりやすいと思うんだよね。

 女神様へ、自分やミケの正体等々を明かすことに関して確認をしてみたら、「おぬしの好きなようにすればよい」と言われた。


 そもそも、おばあちゃんが召喚された異世界人だったことも秘匿されていたわけではないらしい。

 ただ、現在に伝わっていないだけで。


 ハワードさんとルオンさんは顔を見合わせていたが、先に手を上げたのはルオンさんだった。


「まず、最初に確認したい。おまえたちは女神の使徒なのか? 目撃者の証言によると、女神の使徒は『黒髪の少女で、白猫の眷属を連れていた』のだと」


「はい、そうです。女神様に頼まれて、召喚魔法の魔法陣を燃やしました」


「ハハハ……あっさり認めるんだな」


「お二人には、正直に話そうと思っていますので」


 苦笑いをしているルオンさんに代わって、今度はハワードさんだ。


「君は……聖女なのか?」


「女神様に、私は『今代の聖女だ』とはっきり言われましたので、そうですね」


「言い方は悪いが…おまえは『人』ではないってことか?」


「いえ、私はデール帝国で生まれた帝国民です。ただし、百年前にですが」


「百年前?」


 この話題になったから、ついでにおばあちゃんの話もしておく。


 先代の聖女は、私のひいおばあちゃんだったこと。

 おばあちゃんは、百年前の厄災を鎮めるために異世界から召喚された異世界人だったこと。

 この時使用されたのが、女神様が帝国へ授けた召喚魔法だったこと。

 それからいろいろあって、おばあちゃんが幼い私を連れて元の世界に帰ったこと。

 おばあちゃんが亡くなって、私はミケとともにこの世界に帰還したことを一気に話す。


「───ですから、私はあちらの世界で育ちました。手芸の技術は向こうで学んだものですし、使用している道具もあちらで製作されたものなのです」


「そちらの世界は、技術がかなり進歩しているのだな?」


「その代わり、魔法は誰も使えません。『魔力』というものが存在しないのです。魔法使いも、創作話にしか出てきませんし」


「だったら、君の特殊な魔法はどこで学んだのだ?」


「学んだというよりも、授かったというほうが正しいですね」


 簡単に言ってしまえば、『異世界からの帰還(転移)特典』かな?

 でも、説明が難しいから、女神様からすぐに使える魔法をもらったと言っておく。

 間違いではないし。

 ルオンさんから「羨ましすぎる……」の本音が漏れた。


「それで、私のこの黒髪・黒目ですが、こっちが変身後の姿です。本当の姿は、あっちの亜麻色髪に茶色の瞳ですね」


「では、金色の瞳は聖女用なのか?」


「金色、ですか?」


 はて?と首をかしげていると、ミケが⦅ハワードの言う通りだよ⦆と言う。


⦅ボクも、瞳は金色でしょう? これは聖なる力を持っている証なんだと、女神様が言っていたよ。マイも、聖火を行使するときだけ色が変化していたかな。ただ、あのときのリサの場合は、ただの魔力暴走(未遂)だけどね⦆


「ミケによると、ハワードさんの言う通りだそうです。聖なる力を行使するときだけ、色が変わるようです」


「それで、ミケはやはり聖獣なんだよな? レイだけは正体に気づいていたと」


「そうです」


 ミケの本当の名はニケで、本来の姿は斑。

 先代の聖女にも付き従っていたと言ったら、二人は絶句していた。


「えっと……薄々は感じていたが、おまえミケと会話ができるだろう? てか、いつも会話をしているよな?」


「ミケだけじゃなくて、レイ君とも会話ができますよ」


 レイ君に「そうだよね?」と問いかけたら⦅ウン⦆と首を縦に振っている。


「そうじゃないと、レイが俺のことを呼び捨てにしているって、わかるはずがないもんな……」


 ルオンさんだけでなく、ハワードさんも大きく頷いたのだった。



 ◇



 美味しいデザートも食べて、ずっと隠してきた秘密も打ち明けられて、心も体も何だかスッキリした。

 代わりに、ハワードさんたちが「殿下には、何も話せない……」と頭を抱えているから、私とミケの正体以外は話しても構いませんよと言っておく。


 奈落の森で聖女に助けられたことや、それがきっかけで聖女に頼まれて皇兄父子の屋敷に一緒に乗り込んだことくらいは、事実だしいいんじゃないのかな?

 まあ、どうするかは二人の判断になると思うけど。


「それに、協力したお礼に聖女が転移門を使って王都まで送ってくれたと言えば、一緒に帰れますよね? 手を貸したのが本物の聖女だったと、証明にもなりますし」


 通常はひと月以上かかる行程を数日で戻ったら、誰でも理解できるはず。


「お、おまえなあ……」


 ルオンさんの体が、ぷるぷると震えている。

 あれ、良い考えだと思ったけどダメだった?


「ぜひ、それでお願いします! 聖女様!!」


 個室の中で、ルオンさんが平伏したのだった。



 ◇



 では、そろそろ帰りましょうということで、お会計をお願いした。


 若い店員さんにおばあちゃんの金貨を差し出したら、怪訝な顔をされる。

 これは、どちらの国の金貨ですか?と尋ねられてしまった。


「えっと、帝国の金貨 (のはず)です。(百年前のですけど)」


「現在、帝国で流通している金貨に、人物像は描かれておりませんが?」


 言われて今気づく。

 たしかに、おばあちゃんの金貨には知らないおじさんの横顔がある。

 革袋の中のものを全部出したら、金貨の他に銀貨や銅貨にも顔が。


 そこに横から現れたのは、店の支配人を名乗る眼鏡をかけた壮年の男性だった。

 「ちょっと拝見します」と目の前で銅貨を確認し始めた支配人さんの顔色が、一瞬にして変わる。

 私たちはすぐに、別室に案内されてしまった。


 もしかして、偽造貨幣だったのかな?

 百年前のものなら、あり得るかもしれない。


 このまま、詰所に連行されたらどうしよう!!

 ハワードさんたちだけは、こっそり逃がさないと……

 

 不安で頭の中がぐるぐるしている私に、支配人さんはおもむろに話を切り出した。


「お客様……大変失礼とは存じますが、こちらの貨幣はどちらで手に入れられたものでしょうか?」


「えっとですね、祖母の形見と言いますか……そんな感じのものです」


 これは、断じて嘘ではない!


「形見の品でございますか。なるほど、お客様は名家のご令嬢でしたか」


「いえいえ、没落した元帝国貴族の末裔です! ただの庶民です!!」


 私の主張にルオンさんは吹き出し、ハワードさんは半笑い。

 正体を知られた今、二人の前で堂々と嘘を吐く姿はさぞかし滑稽だろう。


「ハッハッハ、庶民などとご冗談がお上手ですね」


 いやいや、冗談ではなく(嘘の設定の)本当の話ですよ?


「実は、私は骨董品の収集を趣味にしておりまして、僭越(せんえつ)ながらご説明させていただきます。こちらの人物は、デール帝国の初代皇帝クレムニク様でございまして────」


 説明によると、この金貨などは百年以上前に流通していた貨幣で、現在は希少価値が高く、オークションでは高値で取引をされているものだそうだ。


「クレムニク初代皇帝陛下はその御名が大陸一高い鐘塔に付けられるほどの名君でしたから、大変人気がございます。たとえば、こちらの金貨であれば白金貨数枚の価値があるかと」


「白金貨、数枚!!」


「ですので、こちらは当店でお代として受け取ることはできないのです。誠に申し訳ございません」


「いえ、こちらこそすみませんでした!」


 こんなもの、表には出せない。

 絶対に、お貴族様の面倒事に巻き込まれるに決まっている。だって、以前ハワードさんが「貴族は利権に敏感だ」と言っていたから。

 余程お金に困らない限り、アイテムボックスの中で封印が決定だ。


 自分の財布袋から金貨を取り出そうとして、はたと気づく。

 そういえば、宿代を支払ったあとお金を下ろしていなかったことに。


 アイテムボックスの中には、ナウリム辺境伯のフランツ様から頂いた褒賞金が入れ物ごと入っている。

 でも、あれは白金貨だから、おつりが大量になってしまう。

 例えるなら、数万円の買い物に百万円札を出すようなもの。



「ハワードさん……」


 すぐに返すので、今だけお金を貸してもらえませんか?とその場で土下座をしようとした私は、ハワードさんに全力で止められたのだった。




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