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【第一部完結】レース編みは万能でした~女神の使徒? 私は飼い猫の異世界召喚に巻き込まれた、ただの飼い主ですよ?  作者: ざっきー
第五章 帝国へ女神様に会いに行くだけのはずが……

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第47話 王太子の憂鬱


 サイエル王国の王太子であるオルフェンは、実妹リリアーナの暴走に頭を抱えていた。



 ◇◇◇



 学園が長期休暇に入り、リリアーナは直轄領の別荘で過ごしているはずだった。

 例年であればオルフェンも同行するのだが、ザムルバ伯爵の起こした窃盗団事件に関連し別行動を取っていた。

 まずは、王都から伯爵領へ行き用事を済ませる。

 そのあと、事件の経緯と処分の説明にナウリム領へ赴く。

 

 王太子自らナウリム領を訪れるのは、公爵家の事件の最終的な報告を王家から直接伝えるためだ。

 父である国王から直々に命じられた重要な役目だった。

 

 それらをすべて終えてからリリアーナと合流する予定だったのだが、伯爵領からナウリム領へ向かう途中の馬車に飛び込んできたのは、別荘の使用人からの緊急連絡だった。

 リリアーナが別荘を抜け出し、ヘンダームへ向かったようだと。


 オルフェンには、リリアーナの目的の見当はついている。

 ヘンダームで髪紐を購入するつもりなのだろう。


 休暇から戻ったハワードが着けている髪紐が、王宮で働く女性たちの間で話題になっていた。

 事の発端は特殊部隊の女性隊員たちで、ハワードはヘンダームで手に入れたようだと。

 当然リリアーナの耳にも入り、欲しいと騒ぎだした。

 王都では売っていない商品らしく、すぐには手に入らないと宥めたのだが、まったく効果はなかったようだ。


 すぐに魔道具でハワードを通じルオンに、従魔でリリアーナの行方を捜すよう命じた。

 この携帯型の魔道具は音声のやり取りができるが、建物内に配備されている据え置き型とは違い魔力の消費が膨大だ。

 そのため、余程の緊急時しか使用はできない。


(クリスタルゴーレムの魔石の欠片があって、助かったな……)


 サイエル王国内にクリスタルゴーレムが現れ討伐されたと冒険者ギルドから報告があったときは、国の上層部に激震が走った。

 百年前にデール帝国に出現し厄災となった出来事は、魔物を抱える国では決して他人事ではない。

 幸いにして、ゴーレムエンペラーの成りかけだったため討伐に成功したが、一歩間違えば帝国の二の舞になっていてもおかしくはなかったのである。


 討伐した冒険者へ褒賞を授与したいとギルドへ情報開示を求めたが、拒否される。

 代わりに、クリスタルゴーレムの魔石を褒賞金込みで高値で買い取り、大きな塊は国の研究機関へ。

 小さな欠片は通信用の魔道具の動力源として、オルフェンの他に帝国へ潜入させる副隊長のハワードら隊員へ渡していた。



 ◇◇◇



 伯爵領からナウリム領へ行くには、他領を一つ越えなければならない。

 どんなに急いでも、ヘンダームへの到着は明後日になるだろう。


 移動中の馬車の中でオルフェンがヤキモキしていると、ハワードから連絡が入る。

 リリアーナがヘンダームの商業ギルドで、職員を相手に髪紐を要求したというのだ。

 さすがに身分は明かしていないようだが、かなり傍若無人な振る舞いをしたらしい。

 報告を聞いただけで頭が痛くなった。


 それにしても……と、オルフェンは思う。

 これまでと比べて報告が格段に早い。その上、詳細な内容だった。

 従魔からは音までは拾えないはずなのに、ギルド内でのやり取りをどうやって知ることができたのか。

 通話は最低限に留めるため理由を訊くことはできなかったが、何か子細がありそうだと感じた。



 ◇



 二日後、オルフェンは予定通りナウリム領の領都ヘンダームに到着した。

 ナウリム辺境伯家の屋敷に向かうと、見慣れた大きな馬車が停まっている。

 家紋の入っていないリリアーナの馬車だ。


 やはり、ナウリム家に世話をかけてしまったらしい。

 報告の他に謝罪もしなければ。

 オルフェンは眩暈(めまい)を覚えた。


 応接室で、領主のフランツと向き合う。

 まずは、公爵家の件から話を始めた。

 公爵家は代替わりし、嫡男が跡を継ぐこと。

 前公爵は領地で蟄居(ちっきょ)となり、妾の女は国外追放処分。

 別荘地は更地にしてナウリム家へ引き渡し。

 被害者たちへの慰謝料の支払い、など。


 オルフェンの説明内容はフランツの要望も盛り込んだものなので、特に質問も反発もなく終わる。

 続いて、ザムルバ伯爵の起こした窃盗事件の件だ。

 こちらは、処分内容をそのまま伝えるのみ。

 伯爵本人は今回の件の他にも罪状があり、貴族の身分を剥奪され平民落ち。

 伯爵家は子爵家へ降爵となり、嫡男が跡を継ぐことなど。


 こちらも、フランツからは特に異論はなかった。



「それにしても、我が領の『匿名手芸作家』殿が与える影響は凄まじいですな」


 報告を聞き終えたフランツは、淡々と感想を述べた。

 彼自身も、これほど周囲へ影響を及ぼすとは思っていなかったようだ。


「其方の奥方と娘がしていたマルベリーシルクの髪留めは、お茶会の席で大層評判になっていたそうだ。こちらにも、他の貴族からシルクや髪留めに関しての問い合わせが多数来ているのであろう?」


「ハハハ、左様でございます。しかし、取り仕切っているのは商業ギルドですので、領主家といえども勝手はできません。」


「噂では、髪留めや髪紐は注文をしてから納品までに時間が掛かるとか。そのため、今回リリアーナがこちらに迷惑をかけたようだ。兄として謝罪する。大変申し訳なかった」


 ちょうど話題となったこともあり、オルフェンは謝罪し頭を下げる。


「オルフェン殿下、どうか頭をあげてください。たしかに、商業ギルドから連絡があったときは驚きましたが、結果的にはステラも良い経験をさせてもらいましたので」


「良い経験? 何があったのだ?」


「実は────」


 にこやかに微笑むフランツの口から、意外な話が飛び出したのだった。




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