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レース編みは万能でした~女神の使徒? 私は飼い猫の異世界召喚に巻き込まれた、ただの飼い主ですよ?  作者: ざっきー
第一章 異世界召喚からの新生活は、波乱の予感

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第4話 VS ギルマス


 冒険者ギルドの建物裏にある広い訓練場では、新人たちが集まり自主訓練をしている。

 その隅っこで、私とミケはギルドマスターと対峙していた。

 

 周囲には対決の話を聞きつけた野次馬が集まり、賭けまで始まっている。

 ミケによると、九対一で圧倒的に私が負けると予想されているらしい。


「準備はいいか? これは実力の確認だから、遠慮せず攻撃してこい」


 ギルマスのユーリさんは、現役のAランク冒険者とのこと。

 剣を構えて仁王立ちしており、なかなか迫力がある。


「では、行きます!」


「ニャー」


 ミケが火魔法を放つ。

 青白い火の玉が次々とユーリさんへ襲いかかるが、彼は軌道を見極め剣で難なく弾いていく。


「おまえ、無詠唱なのか?」


「いいえ、小声で詠唱しています」


 堂々と嘘をついてごめんなさい!と、心の中で謝っておく。

 あの椅子があったら、完全に嘘がバレていた。


 この世界の従魔は、魔法を使うことはできないらしい。

 やはり聖獣のミケが特別のようで、他の人に知られるわけにはいかないのだ。


 火の玉を避けられるのは想定内。

 ミケが今度は風魔法を行使する。

 ワイバーンの翼を切り落としたものより威力を落とした風が、ユーリさんの足元を狙う。


 剣で受けようとしたユーリさんは直前で回避を選択するが、それが正解だ。

 受け止めれば、きっと刃が欠けていただろう。

 

「フィレレース、捕獲!」


 上下左右に飛び跳ねてミケの攻撃をかわしていたユーリさんの体が、一瞬で網模様のレースに覆われる。

 

「何だこれは! 聞いたこともねえ魔法だったが、身動きができねえ……」


 頭からレースを被ったユーリさんは、まるで網に捕らえられた魚のようだ。

 逃れようとするが、体にレースが巻きついて動けない。


「これでワイバーンを捕まえました」


「なるほどな……これなら遠距離攻撃もできて反撃もされねえ。参った、降参だ」


 魔法を解除すると、すぐにレースが消える。

 首をかしげながら自分の体を確認するユーリさんを横目に、私とミケはニヤリと笑い合う。

 

 ミケの魔法攻撃は囮で、ユーリさんに隙ができた瞬間を狙って本命の(私の)魔法を発動させる。

 二人で考えた作戦は大成功だった。


「追加で悪いが、もう一つだけ確認させてくれ。さっきの白いヤツが剣で斬れるのか試したい」


「いいですよ」


 私は結果を知っているが、ここは黙って見届けよう。

 ユーリさんが訓練場にある木人形を持ってきたので、それにレースを頭から被せる。

 そして、ユーリさんが剣で攻撃を始めた。

 

 刺突はあっさりと貫通。

 横薙ぎに払うと、レースごと木人形が真っ二つになった。


「剣で斬れるが、全身を巻かれたら自力での脱出はほぼ不可能だな」


「これの強度は、変えることができます」


「なに!?」


 防御魔法としても使えるか、道中でミケと検証をしていたのだ。

 捕獲するだけのレースには、強度はあまりない。

 しかし、盾をイメージすることで強度を上げることができたのだった。

 

 ユーリさんがそれも試してみたいと言うので、別の木人形の前にドアくらいの大きさのレースを立てる。

 レースの模様は、もちろん盾だ。

 まずはさっきと同じように刺突するが、穴は開かない。

 横薙ぎに払ってもレースは真っ二つにはならず、傷一つ付かない。


「俺の全力を出しても、いいか?」


「どうぞ、試してみてください」


 Aランク冒険者の攻撃にどこまで耐えられるのか。非常に興味がある。

 気合をいれたユーリさんの姿が一瞬で消えた。

 カキンカキンと金属がぶつかる音だけが響き、徐々にレースに傷が付いていく。


 動きが速すぎて、私では目で追えない。

 いくらレースが頑丈でも、展開前に攻撃をされたら避けるのは不可能だろう。

 常に防御魔法を発動させておく必要があると感じた。


 そして、ついに木人形に攻撃が入った。


「合計八回でようやく届いたのか。これは、さらに認識を改めないといけねえな……」


 こめかみを人差し指でツンツンと二度叩き、ユーリさんはニヤッと笑った。


「よし、決めた! おまえは今からCランクな!」


「……えっ!?」



 ◆◆◆



 ニックは、騎士団の詰所で部下の報告を聞いていた。


「───というわけで、ギルドマスターのユーリ殿の判断でタカナシ殿はCランク冒険者になりました」


「ハハハ……FランクがいきなりCランクへ昇格とは、前代未聞だな」


「ユーリ殿としてはBランクまで昇格させたかったようですが、さすがに四ランク上げることは難しいようで」


「ギルマスの権限では、二ランクまでだからな」


 特例措置で、この結果に落ち着いたのだろう。


「それで、その後のタカナシ殿の行動は?」


「ワイバーンの買取り代金を受け取り、雑貨店へ行きました。購入したのは布製の鞄や木綿の糸など。あと、髪留めとスライムの皮(ひも)ですね」


「スライムの皮紐? あの伸縮するやつか?」


「そうです。それから、ギルドが紹介した宿屋へ向かいました。」


「あの宿か。ふむ……やはり、ギルドとしても気になる人物のようだ」


 国境の町ということもあり、他国の者、特にデール帝国からの来訪者の動向には注意を払っている。

 今回ギルドが紹介したのは、表向きは小綺麗な普通の宿。

 実態は、監視対象者を見張るための場所だ。

 そこには、騎士団の息のかかった者たちがいる。


「明日には領都へ向かうようです。宿で行き方を尋ねていました」


「おそらく、商業ギルドへ行くつもりだろうな」


 リサは、どうやら隠密行動をとるつもりはないようだ。

 ギルドで多くの冒険者の目に触れたことで、彼らに顔を覚えられてしまった。

 さらに、自身の手の内までも明かしている。

 

「もし間者だとすれば、冒険者ギルドでの一件は迂闊(うかつ)な行動になるが……」


「そうですね。かなり特殊な魔法を披露していましたから」


 人生経験が豊富なニックでも、これまで見たことも聞いたこともないような魔法だった。

 機会があれば、行使しているところをぜひ一度見てみたい。

 それほど興味深いものだ。


 部下を下がらせたニックは、再び騎士団長へ報告に向かったのだった。




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