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【第一部完結】レース編みは万能でした~女神の使徒? 私は飼い猫の異世界召喚に巻き込まれた、ただの飼い主ですよ?  作者: ざっきー
第三章 王都へ行くことになりました

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第26話 ミケの本領発揮


 まるで部屋全体が、地盤沈下が起きたような状況になっていた。

 あのまま下にいたら、私たちは地面もろとも落下していたことだろう。


「あ、ありがとうございました。リサさんがいなければ、今ごろは………」


 エイラさんの声が震えている。

 まだ十七歳の女の子だからね。相当怖かったに違いない。

 ミケが「ニャー」と鳴いて、体をエイラさんへ何度も擦り付ける。

 それだけで、エイラさんに少し笑顔が戻った。

 ミケの癒しの力は、さすがだね。


「……エイラさん、残念ながら安心するのはまだ早いみたいです。あれを見てください」


 陥没した地面が、徐々に盛り上がっている。

 巨大な手が見え、続いて頭が見えてきた。

 上半身だけで、さっきのゴーレムくらいの大きさがある。


「ま、まさか、ゴーレムキング……」


「このために、ゴーレムたちは天井を高くしていたのですね」


 どうやってゴーレムキングが誕生したのかは、わからない。

 でも、この部屋には生み出せるだけの何かがあり、それを知っていたゴーレムたちが集まって作業を進めていた。


「私たちにとって幸いだったのは、ゴーレムたちが天井を高くしていたこと。あと、衝撃が大きすぎて地盤が崩落したこと。おかげで、天井付近にいれば、とりあえずは安全です」


 ゴーレムキングは下半身が埋まった状態なので、今は動くことができない。

 でも、必死に脱出しようとしている。


「ミケちゃん、お願い!」


⦅まかせて!⦆


 部屋全体に風が巻き起こる。

 ミケが強力な風魔法を行使しているのがわかる。

 聖火であれば燃やせるかもしれないが、密閉された空間で火気を使用するのは怖い。

 ミケがそう判断したのだろう。

 

 風魔法で狙うのは、むき出しになっている魔石だ。

 それに気づいたゴーレムキングが手で庇うと、手に大きな穴が開いた。


 ミケもこの姿になってから、力がさらに強くなった気がする。

 ゴーレムキングの魔石は、四発目でヒビが入り、五発目で砕け散ったのだった。



 ◇



 村に帰りついたときには、もう夕方になっていた。

 さすがに疲れたし、お腹も空いた。


 けれど……

 

 空が茜色に染まりとても綺麗だな~と、私は現実から目を背けていた。


「そ、村長! ゴーレムキングが出ただと?」


「ゴーレムも、二体どころか六体もいたのか!!」


「こんな大きな魔石を、儂は生まれて初めて見たぞ!!」


 村の広場では、村人たちが蜂の巣をつついたように大騒ぎをしていた。

 テーブルの上には、傷の無い魔石が六個。バラバラになった魔石が数個置いてある。

 子供たちは、広場に並べられた六体のゴーレムを触ったり、突っついたりしている。

 しかし、魔石は七体分あるのに、ゴーレムの体は六体しかない。

 そう、私はまだキングを出していなかった。


 キングを出す前に村人たちが騒ぎだしたため、出すタイミングを完全に見失ってしまった。

 でも、このまま隠しているわけにはいかない。

 きちんと見せ報告をしなければ。


 心の準備ができた私は、口を開く。


「……エイラさん、お願いできますか?」


「……はい」


 エイラさんが「みんな、危ないからちょっと下がって!」と声をかける。

 安全を確保したところで、躊躇せず一気に出す。


 はい、ドン!!!

 巨大なゴーレムが姿を現した。


「「「「「「「・・・・・」」」」」」」


 誰も、何も反応しない。

 うん、予想通りだ。


「えっと……エイラ、これは何かのう?」


「やだなあ、おじいちゃん! なにって、ゴーレムキングだよ」


 同じく現実逃避ぎみのエイラさんが、明るく答える。


「なんで下半身だけ、光っておるんだ?」


 村長さんの言う通り、ゴーレムキングの下半身はガラスのようにキラキラと光っていた。

 なぜなのか、私も理由が知りたい。


 キングとの戦いが終わったあと、レースごと地面に下りた。

 砕け散った魔石を拾っていたら、何かがきらりと光る。

 気になって少し掘ってみたら、キングの下半身の色が違っていたのだった。


「……村長、これは『石英(せきえい)』かもしれんぞ」


「なんじゃと!?」


 石英とは、簡単に言ってしまえばガラスの材料になる鉱物のことらしい。

 石英の中でも無色透明なものは、『水晶』『クリスタル』と呼ばれているそうだ。


 なるほど、だから光っていたんだね。

 つまり、あのゴーレムキングは(半分)クリスタルゴーレムだったのだ。


「だったら、ゴーレムキングが出てきたところを採掘してみてください。まだ、石英が埋まっているかもしれませんよ?」


「そうだな、確認は必要だ。早速、明日の朝一番で向かうぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


 村人たちの顔が、生き生きとしている。

 久しぶりの仕事に、みんな嬉しそうだ。



 ◇



 その後の話し合いで、ゴーレムキングの本体以外のものはすべて私の取り分となった。


「……リサさん、本当に良かったのですか? だって、討伐した魔物は討伐者に権利があるはずですよ? だから、キングの本体だって本当は───」


「それだったら、ゴーレムの半分はエイラさんに権利がありますよ? それを私がもらったので、それでいいじゃないですか」


「ただのゴーレムとあのキングでは、価値が違いすぎます!」


「そもそも、キングの石英は鉱山に埋まっていたものですよ。だから、権利は鉱山を所有しているこの村にあります」


「でも、石英はまだ鉱山に埋ま────」


「さらに石英が出るかは、掘ってみなければわかりません」


 私は人差し指を口の前に立てる。


「エイラさん、討伐で見たことを吹聴しない。これは、この依頼を受けるときの約束でしたよね?」


 実は、探知魔法でまだゴーレムが埋まっていないか念のため確認をしたところ、石英の大きな結晶を見つけてしまったのだ。

 鉱山から出た鉱物は持ち帰ったら盗掘という犯罪になるから、土に埋めたままにしてある。


 明日は、きっとまた大騒ぎになるだろう。


「あのゴーレムを売れば、採掘作業ができなかった分の穴埋めができるはずです」


「この村のために……リサさん、ありがとうございます」


 エイラさんは目に涙を浮かべた。




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