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レース編みは万能でした~女神の使徒? 私は飼い猫の異世界召喚に巻き込まれた、ただの飼い主ですよ?  作者: ざっきー
第二章 スローライフを送りたいだけなのに……

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第19話 探知魔法の結果……


 探知魔法の結果は、その日のうちに出た。

 すでに夜だったが、私とミケは窓から脱け出しレースの案内でアリスさんのもとへ向かう。

 

 闇に紛れて飛行魔法でたどり着いたのは、ヘンダームの町の南側。

 豪邸が立ち並ぶ一角だった。


「こんなところに、アリスさんがいるの?」


 周囲の中でもひと際目立つ豪華絢爛なお屋敷を空から見下ろしながら、私は首をかしげる。


⦅家が立派でも、住民が立派とは限らないよ⦆


「たしかに、ミケちゃんの言う通りだね」


 ミケが中の様子を見てくるというので、屋根の陰にレースを下ろす。


「ミケちゃん、気をつけてね!」


⦅いざとなったら魔法を使うから、心配いらないよ。ボクは、風魔法で空を駆けることもできるからね⦆


「えっ、そうなの!?」


⦅めったに使わないから、リサも知らなかったでしょう? まあ、空を駆ける猫なんていないから、普段の生活で行使することはないもんね⦆


 ミケは屋根の上を器用に走り、行ってしまった。

 私はレースの上で、おとなしくミケの帰りを待つ。

 

 深夜なのに庭が昼間のように明るいのは、灯りの魔道具が所々に置いてあるからだろう。

 屋根の上からは、状況がよく見える。

 武装した男たちが庭園内を歩き回り、物々しく警備をしている。

 

 他の屋敷は、ここまでの警備はしていなかった。

 何に対して警戒をしているのだろうか。

 屋敷の主が用心深いのか、やましいことがあるからなのか。



 ◇



 しばらくして、ミケが戻ってきた。

 まず、心配だったアリスさんの安否だが、無事だった。

 ミケが匂いで本人と確認したとのこと。


 それを聞いて肩の力が抜ける。

 良かった。本当に良かった。


⦅リサ、安心するのはまだ早いよ。ちょっと、厄介なことになっているからね⦆


「厄介なこと?」


⦅アリスだけでなく、他にも女性が何人か地下牢に閉じ込められている⦆


「!?」


 驚きの声を上げなかった自分自身を褒めたい。


「もしかして、例の人攫いかも」


⦅たぶん、そうだよ。ただ、アリス一人だけなら救出もできたけど、これだけ人が多いとさすがにボクたちだけでは無理だね⦆


「じゃあ、早くスベトラさんへ知らせないと!」


⦅それで簡単に事が終わればいいけど、『人』は(しがらみ)が多いからな……⦆


 ミケが、意味深な顔でつぶやいた。



 ◇



 すぐに騎士団本部へ向かう。

 当直勤務の騎士さんたちへ状況の説明をしようとしたとき、ちょうど通りかかったのはランディさんだ。レイククロコダイルの件以来の再会だった。

 顔見知りの人がいると話が早い。

 挨拶もそこそこに事情を説明すると、すぐさまスベトラさんへ連絡を取ってくれた。


 深夜にもかかわらず、スベトラさんは騎士団本部へ駆けつけてくれた。

 応接室で、私は一から説明を始める。

 

 ノエルさんたちに依頼され、行方不明のアリスさんの捜索をしたこと。

 探知魔法で反応があったのが、大きなお屋敷だったこと。

 中の状況を探ったところ、アリスさん以外にも女性たちが地下牢に閉じ込められていることがわかったこと。


「あそこは、人身売買組織のアジトになっている可能性が高いです。すぐに騎士団を派遣してもらえませんか?」


「場所はヘンダームの南側。豪邸が並ぶなかで、一番大きな屋敷で間違いないか?」


「そうです、間違いありません! 夜なのに煌々(こうこう)と灯りをつけ、庭園には武装した人たちが物々しく警備をしています。絶対に怪しいですよ!!」


「……ランディ、例の場所と同じか?」


「はい」


 スベトラさんは、一緒に話を聞いていたランディさんへ何かの確認をした。

 頷いたランディさんに、「そうか……」と言ったまま沈黙してしまう。


「あの……」


「タカナシ殿、結論から言うと、現状我々では手出しができないのだ。せっかく情報を持ってきてくれたのに、すまない」


「な、なんでですか?」


 これだけ犯罪の証拠が揃っているのに、騎士団が手を出せないなんて……


「ひと月ほど前から、女性が何人も行方不明になる事件が起きていた。我々が捜査をしていたところ、目撃情報を得たのだ」


 女性が連れ去られる現場を、たまたま馬車から見ていた人がいた。

 その人はある商会の娘さんで、御者に命じて後をつけさせたという。

 場所を確認後、すぐに騎士団へ届け出たとのこと。


「本人は義憤に駆られたからと言っていたが、一歩間違えば自分も被害者になっていたかもしれない危険な行為だ。まあ、そのおかげで犯人のアジトが掴めたのだが……屋敷の主が問題でな」


「誰なんですか?」


「……公爵家だ。その屋敷は、現国王陛下の実弟にあたる方の別荘なのだ」


「…………」


 まさか、そんな大物の屋敷だったなんて。

 でも、なぜ公爵家の人が人攫いという犯罪行為をしているのか。

 私には理解できない。


「確たる証拠がなければ、屋敷内を捜索することはできない。あの目撃情報だけでは弱いのだ。それに、目撃者がいるとわかれば、口封じに殺される恐れもある」


「それは、絶対に避けなければなりませんね」


「タカナシ殿の情報も、言い方は悪いが忍び込んで得たものだろう? そこを相手に突かれると、逆にこちらが不法侵入で訴えられてしまう」


「た、たしかに……」


「公爵家を相手にするには、慎重に事を運ばなければならないのだ」


 騎士団も内偵は続けていて、逃れようのない証拠を突き付けられるよう頑張っているとのこと。


 これ以上、私にできることはないのだろうか。

 せっかくアリスさんの居所がわかったのに。

 ケイティちゃんやノエルさんに、良い報告ができると思ったのに。


 このまま黙って成り行きを見守るしかないなんて、絶対に嫌だ!


「被害者たちがなぜ公爵家から狙われたのか、理由はわかっているのですか? 接点とか共通点はありますか?」


 もし無差別なら、どうしようもない。お手上げだ。

 でも、何か接点や共通点があるのなら……


「行方不明者は、全員庶民です。公爵家との関りは一切ありません」


 答えてくれたのはランディさんだ。

 彼が捜査責任者とのこと。


「そうですか……」


「これが共通点と言えるかどうかわかりませんが、被害者たちは皆、裁縫や編み物に長けた人物のようです。あと、家が商業ギルドと取引をしています。ただ、商業ギルドと取引をしている店はヘンダームに数多くありますし、裁縫や編み物をする女性もたくさんおりますので」


「!!!」


 私にある名案が浮かぶと同時に、ミケが「ニャー」と鳴いた。⦅リサ、解決の糸口が見つかったね!⦆と。

 私とミケが考えたことはきっと同じだろう。

 ダメで元々なのだから、これを実行しないという選択肢はない。


「……わかりました。あとは騎士団にお任せします」


「本当に申し訳ない。解決に向けて、我々は全力を尽くすと誓う」


「どうか、よろしくお願いします」


 私には、騎士団ができない作戦が実行できる。

 そうと決まれば、即実行あるのみ!


 早期解決に向けて、私とミケは動き出したのだった。




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