9話 精霊の理【ことわり】
「いやぁぁぁぁぁんっ!?」
私は全力でホムンクルスに抱きついた!!!
「これこれ...嬉しいのは分かるが、ちと歓迎が過ぎるぞぇ...出来たてホヤホヤなのに傷が付いてしまうわい」
「&%#%$〜”#=%$!?」
恥ずかしさの前に私は声を失って言葉が出ない。が予備の上着をクレアがホムンクルスに差し出した。
「おう♪気が利く「早く着て下さい!!お嬢様が痴女と勘違いされてしまいます!!」オゥ...」
クレアありがとう...心の底から感謝すると同時にアヴェイルが脳裏をよぎる!
勢いよく振り返ると...ガン見猿と紳士二人...ゲビックは興味無いのか片付け中。
クレアに裸族を任せ私は...!
グニュィムッ!?...ドッ...
前世合わせて初めて金的攻撃をした。左スネに嫌な感触がして普段なら身の毛もよだつが...
「自業自得よ」
違う意味で身の毛がよだつ感触を味わいながら、痙攣するアヴェイルを侮蔑した。
「ほぅ?おなごは恥じらわねばならぬのか」
そう言いながら相棒は指輪を嵌めた。私の指に...
「ふむふむ...この手の感情はやはり、生身の肉体を得てからでないと理解出来ぬモノじゃな...」
さらに続けて
「すまぬな、我が契約者よ。今汝の記憶の全て...とは言わんが、足りぬ部分はある程度補えたわい」
...契約者?記憶?足りない...!?
「どういう事?もっとわかり易く...ってそれ人に聞かせて良い話なの?」
「ここに居る者達なら構わんじゃろ?お主の為なら死ぬ覚悟までありそうじゃしの」
...下手に否定出来ない。ここに居る者たちは貴族に仕えている。建前上の事もあり...そんな事を考えていると
「俺ゃあ死なんぞ。色んなモン作らせてもらえるから仕えてるだけで、気分的には雇われだぁな」
ゲビックの答えに皆がざわめく。
「貴様!殿下の前で「ダメですよ!嘘でも肯定しないと!」ヨーマン?!」
「俺はまだよく分からんけど、その時が来たら覚悟はするんじゃねぇか?」
「私は怖いですぅ...でも...」
皆が思い思いに口にすると相棒が
「それでもお主等は、コヤツが危機に瀕すれば自ら盾となろう」
...分析...これは...情報を精査して答えを口にしただけ...
「だからホムンクルスなのね」
「その通りじゃ。生態脳を得た事で、より解析能力が上がったぞぇ♪」
...静寂が拡がる...
多分皆には、私と相棒の言っている意味が分からないだろう。ゲビックでさえも...何故なら...
コイツは、私の知識を元に話しているからだ。
ブルッ「流石に寒いぞぇ...何か履くモノが欲しいのぅ。ノーパンは腹も冷えそうじゃ」
「「「「「ノーパン?」」」」」
綺麗にハモった。私はクレアに防寒具の下だけでなく、下着も渡すように伝えると
「?!良いのですか?分かりました」
そう言ってクレアは私の予備から出そうとして
「ちょっとクレア?!」「はい?」「あなたので良いでしょ?」「寸法が合いません」
............良く見たら相棒の袖が余って上着も膝まで............
「彼シャツみたいで可愛いとは...お主、ナルシストじゃの♪」
「「「「「ナルシスト?」」」」」
...デジャヴュ...
そんな事よりまずは
「男どもは後ろ向いて!」アヴェイルを見ながら私は宣言する。
流石に先程の学びは強烈だったのか、三人とも訓練並の速さで回れ右した。
私は男どもを視界に捉えるべく、着替える相棒の横を通り過ぎると...相棒もコチラを向いた。
「(会話せず)どこまで分かるの?」『全部じゃ』(!?)
驚く私を見ながら相棒がニヤリと笑った。
『指輪に居た時もひょっとして』『半分当たりかの?』
やられた...思考速度の問題だと思っていたら...思考を読んだ上で演算処理も速いのだ。
道理で...と思っていたら「お嬢様?」クレアが私の顔を覗き込んできた。
「大丈夫よ」とクレアに声をかけ相棒を見ると、丁度着替え終わった所だった。
ここでふと私は思い出した。
「アナタ「我は影武者であろう。じゃからソレで良いのじゃ」...」
「「「「「カゲムシャ?」」」」」
「ソレはもう面白くないから要らない」
「「「「「天【要らない!!】...」」」」」
「ファッファッファッ」「笑ってないで説明して!」「仕方ないのう」
不毛なやり取りだけでなく皆を置いてけぼりにし過ぎだ。私の言いたい事を瞬時に理解出来るなら早く説明しろと催促した。
「我を主に似せたのはリア=クードルとセシル=クランドールを両立させる為であろう?」
皆が注視するなか更に続ける。
「その時我を呼ぶに普段別の名を用いておれば、咄嗟に呼んでしまうであろう。それを防ぐ為と...精霊の真の名前は知ってはならんのじゃ。理由は言えんがの」
「もし知ったらどうなるのですか?」
相棒の言葉にクレアが尋ねると
「惑星そのものが破裂するやもしれんの。もし耐えれたとしても、生きとし生けるものは全て死滅するじゃろうから、お主等にとっては同じかのぅ」
答えを聞いた途端皆が青ざめた。そんな事はお構い無しにリアは話し続ける。
「じゃからお主等は気にせず我の事を『リア』と呼べば良い♪実際、主の事をその名で呼んだ者はおらんじゃろう?」
リアの言葉に皆がはっとする。言われてみれば『お嬢様』や『お嬢』ゲビックに至っては『嬢ちゃん』である。だが...
「私だけ...リアって呼ぶの...なんか、照れくさいわね」
「そのうち慣れるわい。気にするな」「気にするわよ!」「覚悟が足らん」「っく!?」
私の愚痴に尽く悉く反論するリアを見て、皆が膝を付き頭を垂れた。
どういう事!?何が起こったか分からない私にリアが言う。
「精霊とは世界の理じゃ。まして我は久遠の時を司る大精霊、人間が頭を垂れるのは至極当然。長い事我と居たお主には...ってお主乳母気分じゃったのか?!魔力は乳ではないぞぇ!?」
何も言ってないのに自ら神格にも似た畏怖を放棄した大精霊様を見て、全員で大笑いした。
「さすが自然と供に在るモノは違う」
私の言葉の真意を唯一理解出来るリアはこの時、先程理解出来なかった【恥じらい】という感情を理解したらしい。
天丼の概念
学習済です。




