7話 冒険者登録
今回年齢の対比をわかり易くする為ルビで表記しています。
そのせいで一部ルビだけで読むと伝わらない部分があるかもしれません。
1月…狼月(狼の遠吠えが響く時期)
2月…雪月(雪が最も多い時期)
3月…簑月(虫が目覚める時期)
4月…桜月(桜が咲く時期)
5月…花月(色とりどりの花が咲く時期)
6月…苺月(苺の収穫期)
7月…鮫月(漁が盛んな時期)
8月…穂月(穀物収穫の時期)
9月…狩月(冬眠前狩りの時期)
10月…寒月(寒くなる時期)
これがクランディアの暦で、1年は10ヶ月と日本より2ヶ月少ない。
1ヶ月は30日でこれも同じなのだが、驚いた事に人の成長速度もどうやら同じらしい。
初めて気付いたのは、妹の成長過程が一部を除いて私と同じ位だったのだ。
私の知能は異世界転生によるものだが、胸は…(脳に栄養が奪われた)…と推測する。
『否、隔世遺伝と思われます』
「精霊核は黙って!」
精霊核の念話に思わず声が出てしまい
「説明無しで登録したいんですか?」
眼前の職員に睨まれてしまった。
「此方の話です。申し訳ない」
後ろに控えていたカインが謝罪すると
「そうでしたか♪それでは5名様ご一緒に冒険者登録で宜しいでしょうか?」
と、あからさまに私からカインに向き直り、この受付嬢の態度が変わる。
「ショタコン色目ババァ…」「ぶっ!?」
小声とは言え、思わずこぼした悪口にクレアが吹き出した。
「お嬢、ショタコンてなんだ?」
アベルの疑問に「成人前の男の子に言い寄る女の事よ」
と答えると、珍妙な表情でこちらを見ていた受付嬢が「えっ!?」と驚きカインを見上げる。
実際コイツは10歳の時、既に160cm程あったのだ。
おかげで私が日本と成長速度が同じと結論付けるのに、2年程(屋敷の外に出れるようになって出会う子供達を観察した期間)遅れてしまった。そんな事より
「18歳です」と簡素に答えたカインに「...はぁ」
と答えた受付嬢がポカンとしたまま放心しているので、仕方なく私が「コホン!」と咳き込むと
「失礼しました」
受付嬢は正気を取り戻し、羞恥に顔を赤らめながらも
「担当を務めるネメリア=フェニスと申します」
と自己紹介し登録案内を始めた。
(フェニスねぇ...)『おそらく祖父の手引かと』
私の思考に精霊核が答える。
『アナタ大分流暢に話せるようになったわね』『感情回路がまだまだ不完全です』
私は少し褒めたつもりだったが精霊核は不満のようだ。
(あまり人間臭くなっても困るような)『その為のホムンクルスです』
思考の途中でも答えてきたり、ソレが鬱陶しいと感じた事を『その為のホムンクルスです』...悪いと思っても今みたいなやり取りが絶えない。
「以上で書類上の登録手続き完了です」
精霊核と念話していたら以外と時間が経っていたようで、ネメリアの声で我に返る。
「それでは別室にて皆様講習を受けて頂きます。こちらへどうぞ」
そう言って2階へ案内される。
本来なら人が少なければその場で、多ければ1階の訓練施設等空いた場所を使う。
そこで貴族や一部の権力者達は別室で個別に行う...と、一般的には思わせるよう仕向けている。
ギルドはそれぞれ多種に渡るが、その認定証は本来偽造も偽証も出来ない。
何故なら生まれた時から定期的に健康診断され、戸籍と連動しているからだ。
...がやんごとなき立場に身分証は不可欠である以上、他国でもやっている事として暗黙の了解となっている。
因みに各ギルドデータは国家機関で管理される為、偽造等しても地下組織位しか使えずもしバレたら...
怖い事を考えていたら2階で裏の手続き(表向きは偽名が表示されるが手続き時は裏手順が必要となる仕様)も何時の間にか終わってしまった。
「念の為、再度説明します。当ギルド利用時はどこであっても職員証の縁を見て受付し、最初に【此処は特徴的だね】を言って下さい。そして【ここは良い所ですよ♪】と言いながら両手を揃え頬に当てたら、机に肘付き親指を立てながら【じゃあ今度お勧めの場所教えて】と言って下さい。それで挨拶完了です」
幸い二度目の説明のおかげでネメリアの話を聞けた。
これで私も遠出出来る!!!
冒険者ギルドを出て、私は早速依頼書を出しに【出張所】に行く。
「お嬢?10月に出しても無駄になるんじゃないか?」
アベルにしては珍しい質問だが如何せん...
「だから指定予約しに行くと今朝情報共有しただろう?!」
...足りない事に変わりはなく、いつも通りカインにダメ出しされた。
「アベル?アナタの事だから何故(冒険者)ギルド出張所に行くのかも分かって無いんじゃない?」
「依頼主と会っちゃいけないからだろ?」「どうして?」「そこは分からんw」
私の質問に考え無しの回答をしたアベルに
「タチの悪い連中から依頼者を守る為だって言ったの覚えてないの?例えば直接交渉させないとか」
「どうしてだ?ギルドが中抜きしないから、お互い得なんじゃないか?」
私が説明すると、予想通り分かってない回答をしてきた。
「それだと揉めた時どうするの?」「揉めなきゃいいんじゃないのか?」
私は「はぁ...」とため息をつきながらアベルに再度説明した。
「品質とか数量とかで絶対揉めるの!それを管理するのがギルドなのよ」
「そんなもんか」「そんなもんよ」
まだ良く分かってないアベルに皆が呆れ顔を向ける中、私たちは道を大きく迂回し冒険者ギルドと反対側の通りにある出張所に到着した。そこに居たのは...
「ショタコン色目ババァ?!」「違うわよ!?」
ネメリアだった。どうやらこことギルドは背中合わせである為、普通に繋がっていたようだ。
それはさておき、軽く二度目の挨拶を済ませ本題に...
「炎大猿の納品を期限指定で出したいの」
「人の悪口言った後に真顔でよく言えたわね」
やっぱりコイツ...
「さっきとえらい違いね?こっちの方がお似合いよ」
「お互い様、で?いつまで?それとも...」
ネメリアの言葉に私は答える。
「11月1日開始の12月初旬まで...かしら?多くても3体までで良いわ。ただし、討伐したモノではなく期限内に仕留めた個体に限る。状態補正有りでお願いするわ」
「...なにするつもり?ヤバいモノじゃ「公爵家を疑うの?」...分かった」
(...ふぅ...)呼吸を一泊おいてネメリアが確認してくる。
「連絡は商会で良いのよね?」「当然」
ネメリアの問いに、私は手短に答える事で信頼を示した。
彼女の含み笑いを背に出張所の扉を開ける。
「さぁ!次の準備よ!!」
意気揚々とする私に答えたのは...キラリと光る指輪だけだった。
ここで次の企画...第二回SS作品「ドワーフはつらいよ」始まります!




