14話 慟哭、撃ち貫く激情
三歳「今回セシルの妹【エマ=ランシェ=クランドール】にスポットを当ててお送りします」
ランシェ「コソコソ(やるわよ...カーウィン)」
カーウィン「(またですか?!)」
セシル「...?」
クレア「始めますよ〜!」
セシル「ちょっと何でそんなっ(プッ...)」
「ありがとうカーウィン」「...何がでありましょうか?」
「私の我儘に付き合ってくれて...という意味です」
ランシェがカーウィンにそう言うと彼は愉快そうに、でも臣下の礼は崩さず答えてきた。
「セシル様に比べたら、まだまだ大した事ではありません」
「あら?!それでしたら私もお姉様に倣ってもう少し「お転婆具合は変わらないのでお控え下さい!」...はっきり言いましたね♪」
カーウィンの物言いが明らかに変わったのを見て、少し嬉しくなった私は思わず頬が緩んでしまった。
「エマ様はセシル様と違い、淑女として粛々とお育ち頂いていると思っておりました」
「違ったとでも言いたげね」「違わないのですか?」「うふふっ」
こうやってお姉様の準騎士と、それも思ってた以上に親しげに話せるようになると思っていなかった。会えばお姉様とも、カーウィン、アヴェイル、クレアといったお姉様専属の従者とも挨拶や雑談などもしてきたが...あくまで主の妹の枠を出る事は無かった。それは今でも変わって無いが、状況は変わった。祖父と母がキッカケなのは釈然としないが、それでも...
「カーウィン、ありがとうね」「...これも騎士の勤めと心得ております」
本当に出来た騎士だ。カーウィンを見て、私は姉を羨ましく思うと同時に軽い嫉妬もしてしまう。
今も私の表情を見て、私が何を考えたのか察して言葉を選んでいた。
「それなら私の事もたまには姫と呼んで頂いても...」「それは...」
互いに相手の心中を察して言い淀む。私はそんなカーウィンを見て、ワザといたずらっぽく微笑み
「お姉様にはアヴェイルも居るんだから、いっそカーウィンは私に仕えると言うのはどう?」
「不肖ながらこのカーウィン=ドール!セシル姫殿下に心酔しております故、ご容赦下さいませ!」
そう言い合ってから、お互い軽く見つめ合い微笑む。
「...これ以上は、お姉様に申し訳無いですね」
「時間的にそろそろ戻らねばなりませんが、その気遣いは不要です」
カーウィンの言葉を受けて訝しむ私を見て、彼は続けて口を開いた。
「サクヤが副官として就いておりセシル様からもエマ様への報告は私から行うよう指示されていますので、そういったお気遣いは不要です」
成る程と納得して、私はカーウィンに一つお願いをする事にした。
「それでしたらカーウィン、もう少しだけ私に付き合ってもらえるかしら?」
「構いませんが、何をなさるおつもりですか?」
多分、私の表情から何かを読み取ったのだろう。少しだけ嫌そうな顔をするカーウィンに
「今からお父様の所に向かいます♪」
そう言った私の顔を見ながらカーウィンは、更に嫌そうな顔をするのだった。
コンコン...「誰だ」「ランシェです、お父様」「入れ」
父の言葉に従いカーウィンが扉を開ける。私が入室すると父の部屋にはメイドも執事も居なかったので、仕方なくカーウィンは扉の横に控える。私はそれを見ながらカーウィンが同行を嫌がったのはこれかと思い、少し申し訳ない想いを胸に視線と頭を下げた。
父も控えるカーウィンに目をやり、一瞬疎ましげに睨めつけたように見えたが
「ランシェ?どうしたんだい?お前から私の所に来るのは珍しいじゃないか」
「お父様にお願いがあって参りました♪」
父の物言いに絶句したような顔をするカーウィン。
私は笑顔で父に話しかけたのだが、父の表情と視線でそれに気付く。
不思議そうにする私の顔を見ながら、父は言葉を絞り出すように言葉を続けた。
「ど、どんなお願いなのかな?」
顔を引きつらせながら聞いてくる父。
それを見て更に驚愕するカーウィン。
私はそれでなんとなく感じてきた、父がお姉様に取ってきた態度に当たりを付け始めた。
「お父様、先程私はお姉様と一緒にネス湖から帰還したのですが」
そこまで聞いて、父は引きつらせていた表情を引き締める。
今まで私の顔を覗き込むようにして話しかけていたのをやめて、私に背を向け窓際に移動する。
「それで?」
先程までと違ってまるで、お姉様と話していた時のような声音で続きを促してきた。
その雰囲気に飲まれたのか私もいつもの父に話しかける口調から、礼儀作法を説くメルと話す口調に変わる。
「ネス湖周辺で起きた人買い及び闇事業【幻獣観光】についての報告書を私に任せてもらえないでしょうか?」
「ならん」「!?どうして即答なんですか?!実務はお姉様に「行政に口出しするなら姉と思うな!私の事も同様にせよ!!」...(ビクッ!?)」
父の恫喝に言葉を失ったタイミングとノックの音が重なった。私は聞き取れなかったが父は
「誰だ?」「セシルです」「入れ」
お姉様に入るよう伝えながら、眼でカーウィンに扉を開けるよう指示する。だがカーウィンは父の指示を待たずに父の声がした瞬間に、我が主を迎えるべく扉を開けた。それを視た父はカーウィンを睨めるがカーウィンも負けていない。カーウィンにとって主はお姉様なのだ。
そんな強固に結ばれた主従関係を見た私は身震いすると共に、自分が今まで置かれてきたぬるま湯に歯噛みする。
ガチャ...バタン
カーウィンが扉を閉めると、父はお姉様の言葉を待たずに一方的に話し始めた。
「お前が赴き予定通りの結果を得てきたのだろう。なら、最後まで自分で責を執れ」
「当たり前です。そもそもランシェ「エマだ。これは公務ではないにしろ調書として残すのだろう?なら、けじめはつけろ」...はい。分かりました閣下」
お姉様は私と違って怯えるどころか敵対心を隠すことすらせず、剰え父を煽ってさえいった。
「失礼しました」「さっさといくが良い」
ガチャ...バタン
「ふぅ...」
部屋を出て一息吐くお姉様を不憫に思いながら、私は思わず聞いてしまった。
「お姉様...お父様とはいつもあんな感じなのですか?」
聞くと同時にハッとした表情を浮かべたであろう私に
「...あなたが気にすることじゃないわ」
お姉様はそう言って頭を撫でてくれたが、私にいつもの笑顔を見せる余裕は無かった。
私はサミーにモールを呼んでくるよう念話し、自分の部屋に戻った。
「ちょっとあなた柱使い荒くない?アガレスでも呼び出す頻度は月に一回もないわよ?!」
私が部屋に入りソファに座ると同時に、三柱が空間を滲ませるように現れた。
しかもサミーは私への不満を口にしながら...
「黙りなさいサミジナ。あなた達はドール家に、私直属の臣下となったのよ?少しは弁えなさい」
私の言葉を受けて悪魔族達が一斉に跪く。
その出来事に我ながら驚いているとサミーが
『アナタ気配が大精霊様に似てるのよ。だから凄みながらそんな態度取られると反射的にこうなっちゃうのよ!?』
サミーのそんな言葉を聞いて、つい良からぬ事を考えてしまう。
『止めた方が良いわよ?(私たちが)慣れた時を考えて』
サミーの一言に、私は笑顔を向ける。
「ありがとうサミジナ。優しいわね」『!?あっれぇ〜?』
サミーからこれではどちらが悪魔なのか分からない...みたいな感情を読み取りながら
『お父さ...いえ、我が父【フェルナンド】よ...今までお姉様にしてきた仕打ち...絶対に後悔させてやるわ』
『お願いだから心の中に収めて?ねぇ?!念話に出すのやめよ?』
モール ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
ソファから立ち上がり窓の外を見ながら...
私は心の中で、密かな決意を冷たく燃やした。
『だから念話に出てるんだってばーーー―――…』
モール ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
ランシェ「第二回乗っ取り作戦成功よ!」
カーウィン「だからお転婆なの...これどっちの事言ってるんですか?」
ランシェ「両方よw」
セシル「...シクシク」
三歳「やっぱ姉妹だな...調子に乗ってる時の態度が同じだわ」
ランシェ「!?...これは失礼致しました。石上 三歳様」(見事なカーテシー)
三歳「!?これは...こちらこそ失礼致しました」(慇懃に頭を下げる)
リア「何をやっとるんじゃ?」
セシル「ちょっと待ちなさいよ!?その流れだとまるで私は出来ないみたいじゃない」(ガタッ)
三歳「やらんで宜しい」
セシル「何でよ!?」
クレア「続きます♪」
セシル「!?この流れは前書きっ(プッ...)」
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