8話 それぞれの思惑
「お呼びでしょうか?アガレス様」
「やっと来たか、【怠惰を貪る者】よ。相変わらずトロいのう」
柱を呼びつけておいて悪態をつく糞爺に内心腹を立てつつも、そんな事しても意味が無いと自分に言い聞かせ後に続く言葉を待つ。
「例の件は順調か?マルバスのような事は無いじゃろうな?」
「興味有りません」「...あいも変わらず...怠惰も行き過ぎると無関心となるか」
面倒くさい事に二つの質問をしてくる爺に一言で済ませようとしたが
「...で、例の件は?」「計画通りに進んでます」
しつこく聞いてきたので、いつも通りの答えを返す。
「いつも同じ答えじゃの!?そもそもやる事を伝えただけで計画など立てておらん!お主が儂の指示を遂行するのに計画を立てたと言うのならソレを報告してみよ!」
「アガレス様が立てたであろう、人々から畏怖の念を集約する為の道筋を私なりに解釈しただけです。そこから大きく外れてはいないであろうと...ただそれだけで御座います」
「のらりくらりと...もう良い!下がれ!」「......」
予定通り糞爺を怒らせ立ち去る事に成功した私は安堵しつつ持ち場に戻る。だが...
(マルバス...上手くやったなぁ...)
アガレスの呪言をどうやって解いたのか...私は元同僚に、羨望を覚える事が止めれなかった。
「全く...ろくに使えん手駒ばかりで嫌になるわい」
立ち去るサミジナに苛立ちを禁じ得ぬ儂は、【彼の地郡】に浸透しつつある呪紋を見る事で落ち着きを取り戻す。
(それにしても...マルバスはどうやって儂との呪言を解いたのじゃ?)
なんの予兆もなく突然マルバスとの楔が消失した。マルバスが力を付け自力で解いたなら、その負荷を感じ取れた筈...
「まさか...セシルに、我等以上の存在でも居るのか...」
もしそんなモノが居たなら解呪以前にマルバス自身も消失した筈...
かつて、人魔対戦があった時のように...
「もうすぐ町に入りますよ〜」「そっかぁ〜」「ではなくて!シャキッとして下さい!」
間延びした声で教えてくれたクレアに同じく間延びして私が答えると、サクヤが少し苛立ちながら注意してきた。
「そこまで気を張らなくても大丈夫よ。今は公爵家嫡男ではなく、商家の娘でしかないんだから♪」
「何を言ってるんですか!?仮にも公爵家御用達である商会の娘ですよ!一般人と同じで良いわけが無いでしょう!!」
(うえぇぇぇ〜〜〜?!)
折角お気楽に出歩ける商会を手に入れたと思ってたのに...違うのぉ〜?!
「露骨に嫌そうな顔しながら本音を漏らさないで下さい!お嬢様?声が出ていなくても口が動いてるんですよ!?」
サクヤが表情だけでリア並みに私の心情を掴むと思ったら、普通に読心術だった。
「そんなに隙だらけで、良くこれまでバレずにこれましたね?!」
「いやぁ♪」「褒めてません!」「そこまでにしろ。外にまで聞こえているぞ」
サクヤの呆れっぷりにちょっとしたおフザケをしていたらカーウィンに怒られた。主にサクヤが...
「申し訳ありませんカーウィン様」「まともに相手するな。次から頼む。それと、カインだ。忘れるな」
「ちょっとカーウィン?!」「...(ジロリ)」「...ハイ」
馬車の目隠しを少し開けサクヤがカーウィンに謝罪と反省を示すと、カーウィンが主人への態度とは思えない言動をしながらサクヤにも促してきた。
だがサクヤはソレに同意し、私はカーウィンに苦情を述べようとするも一睨みされてしまった。
おもわず気圧され返事をした私にサクヤがニヤッと笑みを浮かべ、カーテンを閉める。
そんなサクヤに私が何か言うより早くクレアが
「本当に馴染んできましたね...口先だけじゃなかったみたいです」
といつもよりかなり真面目に言ってきて、これにはサクヤも驚いたようだ。
「あ、ありがとう御座います」「良いんですよ。それより同じ使用人としてお嬢様に接するなら、私に気遣いは無用です」
おぉ!?どうしたんだ?見た事の無いクレアに驚いていると、サクヤも目を白黒させていた。
「着くぞ」
カーウィンが馬車にノックしながら手短に伝えてくれたおかげで、私とサクヤは我に返り身だしなみを整える。
「お願いします」「拝見する」
アレクが身分証を提示し門兵が確認する。まぁ門といってもこの町には関すら無く町の入口に門兵が交替で立っているだけだ。非常時には身を守る城壁は疎か、マトモな防壁もなく僅かに柵があるだけである。
「通って良し!」「有難う御座います」
こんな小さい村のような町では検問など無く、あっさり通された。楽で良いがその分招かれざる客も同様に入ってくるので、当然町の中でも警戒が必要になってくる。
「まずは宿を取りましょうか」
サクヤが言うとクレアがニコニコして、それを見ていた。流石に付き合いの長い私たちは、彼女の狙いに見当が付いたが...皆、敢えて放置を決め込むようだ。
だがクレアの口元がヒクヒクしている事に、多分サクヤも気付いただろう。
それが何を意味するのか...知ることになるのは、まだ先になるだろう。
「悪いが他を当たってくれ」「えっ!?」
チェックインを済ませようとこの町で一つしかない宿屋に行くと、満室だった。
「まさか、ここまで噂が浸透していたとは...」
「カイン様、ソレは多分違うと思われます」「何!?」
予約を含め満室だと断られたが、私も電話の無い世界で事前予約する事なんて、貴族以外に出来るとは思わない。実際身なりの良さそうな人物は数える程で、他は明らかに市井の者だと窺えた。
「成る程、12公家の何処かが嗅ぎつけたか?」
「そうではありません。ク―ドル商会...ひいてはドール家が、それだけ睨まれているという事です」
カーウィンがそう考えるのは、これまで私たちドール公爵家に仕えてきた弊害だろう。無意識に私たちを庇う習性が、そうさせるのだ。
でもサクヤは違う。これまで外からドール家を見てきた彼女はこの手の気配を受ける側ではなく、与える又は与えた側に立っていたのだ。
勿論我々も薄々感じてはいたが、肯定すれば軋轢を生むだろう事も理解していた。だが
「改めて...私たちはドール家なのだと、実感出来たわね」
「「お嬢様...」」「「......」」
サクヤとクレア、カーウィンにアヴェイルが私に何とも言えない、やるせなさを見せた。
商会の面々は慣れているのか、湖畔で野営するに向け買い出しに勤しみながらいつでも出立出来るよう準備を進めていた。
アレクが後発組に任せて先に出れると言ってきたので、私はクレアとアヴェイルを伴い先に湖畔に向かう事にした。
『リア...サクヤとカーウィンの事、任せたからね』『普通は逆であろう』
『周囲からはそう見えるようにお願いね』『了解じゃ』
念話でリアに情報収集の後押しを頼み、馬車に乗り込む。
「カイン、サクヤ、先に湖畔に向かいます」「はい、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
カーウィンが頷きサクヤに見送られるのを確認した後、窓とカーテンを閉じた。
(思っている以上に、嫌われているのかしら)
公都クランではあまり感じられない、インバスですら市井の声はドール家寄りだったのに...
公国として、総主家と思われていない現実に...
やはり堪えるものがあると、改めて感じる出来事だった。
三歳「『延いては』って漢字...出てこないのな」
セシル「突然何なのよ?」
三歳「いや、調べたら『当て字』だから出ないって言われた」
セシル「だから何なのよ!?別に良いじゃない?!」
リア「違和感とは人それぞれじゃからのう」
サクヤ「お話と関係ないやり取りもするんですね」
クレア「前話と後話はミームですから♪」
サクヤ「…えぇ…?!」(ドン引き)
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