1章 2話 めんどくさい環境
五年経ちましたw
「お祖父様〜♪」
目一杯可愛く見えるよう足元に駆け寄り上目遣いで祖父の両眼を見る。
「リア〜♪いつも可愛いのぅ♪」
私の演技に今日も嵌る祖父にお強請りを...
「お嬢様〜」し損ねた。
「クレア、追い付くの早い!」
私がそう言うとクレアは「そりゃあ私の方が2つ年が上ですから♪」と何故か誇らしげだ。
「そんな事よりお嬢様、次は剣術のお時間ですよぉ...行かないと私も怒られますぅ...」
私は振り返り「お祖父様〜」と甘えてみるが
「スマンの...公爵家である以上やらぬ訳にはのぅ...」
……タッタッタッ……
「やっぱりここに居た!お嬢!剣術の時間だぜ!!」
…タッタッタッ…
「脳筋!殿下と呼べと言っているだろう!!!」
五月蝿い二人が来てしまった。
脳筋と呼ばれた方がアヴェイル、呼んだ方がカーウィン。それぞれの父は我が公爵家で1代騎士として仕えている。
「二人共行くわよ」
私は諦めて稽古場に行く事にした。
「お祖父様の意地悪〜」
前世での(意地悪)をして崩れ落ちる祖父を見ながら叔父の待つ稽古場に向かう。
屋敷を出て私から僕へと意識して表情を変える。
本来【成人名】は10歳で与えられ15歳から名乗るのだが嫡子の居ない我が公爵家では長子である私を嫡男として扱う事になってしまった。
「胎盤と一緒に子宮が...!!!」
産婆の一人が悲痛に叫ぶ。
「直ぐにへその緒を切るんだ!!その後子宮を戻す!!!」
「氷系魔道具か氷系魔術の使える者を至急手配しろ!時間を掛けるな!!」
怒号のなか指示が飛ぶのが部屋の外に居る私達にまで聞こえてきた!!
「子宮内反症?!」
前世でずっと病院にいた時、たまたま読んだモノの中に書いてあった...へその緒が短いのか引っ張ってしまったのか分からないが冷やさなければならない。
「聴け!水の精霊よ!大気を凍らす力を顕現せよ!!」
力ある言葉を口にして生み出した氷塊を出て来たメイドに見せ「これを使って!!」と舌足らずな物言いながらも押して滑らせた。
僅か3歳の子が動かせたのだ...直ぐに目の前のメイドは部屋に氷解を運び入れた。
「早いな、誰か砕いて汚さないよう少しづつ渡してくれ!」
部屋の中に子宮内反症の知識が有る人が居て助かった...そう思っていると
「リア!...お前は...」
振り返ればそこには驚愕して腰を浮かしたフェルナンドの姿があった。
「ノアよ、お主自分の娘の才を知らなんだのか?」
祖父に問われ父は平静を装いつつ「知っていますとも」と答えながら腰を下ろした。
「良くやったぞ♪」
と祖父に頭を撫でられながら私は父をチラっと見たが...ずっと俯いていて表情は見れない。
私は何故か分からないがこの父が苦手だ。
「胎盤と一緒に子宮が...!!!」
そう聞こえた瞬間我が娘が立ち上がり魔力を練り出した。
「氷系魔道具か氷系魔術の使える者を至急手配しろ!時間を掛けるな!!」
産医の声が響いた直後に娘の力ある言葉が発せられ氷塊を生み出した。
こんな事...妻を救うには氷が必要だと予め知っていなければ出来ぬ!!!
幸いこの事に誰も気付いていない。
(リア...お前は何者だ...)
「無事に出血も止まり産道も収縮しました」
部屋に呼ばれ産医が妻の無事を皆に伝えた。
「可愛い女の子で御座います」
あちらでは祖父と娘が生まれたばかりの妹を眺めているようだ。
「フェルナンド様、少し宜しいでしょうか?」
産医が皆に聞こえぬよう小声で接して来た。
「......3人目は諦めよ...であろう」
「!!...知っておられたのですか?...だから御息女は氷を...幼いのに御立派で御座います!」
産医は我等に驚き賛辞を口にしたが「吹聴するなよ」と釘を刺す。
「かしこまりました。確かに知られると色々ありますでしょうな」
狙い通り産医は娘があの年で魔術を使えるのを口外するなと勘違いしてくれたようだ。
後日、長女を嫡子とする事をフェルナンド=ノア=クランドールの名において貴族上部にのみ触れを出した。
苦もあるさ




