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【戦闘シーン草稿】前哨基地防衛

【あらすじ】

ある依頼達成の為、エクセラの前哨基地への潜入準備を整えていたレイラ達だったが、突然、エクセラからその基地への襲撃を企てる敵勢力を察知したのでそれを退けて欲しいという依頼が入ってくる。


安全に目的を遂行する為、そして"傭われ"としての評価稼ぎと小遣い稼ぎの為、基地への潜入はオーカに任せ、レイラは単独で依頼を受け出撃していったのだった。

   ──────────────────

     カグサメ・レイラ 20:00

  荒廃都市 荒野地帯 エクセラ第4前哨基地

  ──────────────────


「……セリィヴォルク。そろそろです」


「奴らが来ました。準備を始めて下さい」


前哨基地の周辺、月明かりの差す、だだっ広い荒野の中。


予定の作戦区域に到着し、飴を舌で転がしながら待機していた俺は、クライアントからの通信を聞き伸びをする。


オーカは既に基地の中。こちらもそろそろ仕事の時間らしい。


「よし。やるか」


俺は小さくなった飴を噛み砕き、棒をポケットに突っ込むと、VDのメインシステムを立ち上げる。


『メインシステムを起動』


『パイロットとの、神経接続を開始します』


「あー、オーカ。俺もそろそろ仕事の時間だ」


「やる事、分かってるよな?」


オーカへの通信を開く。


「サッと基地のレーダーをハッキングして、その探知情報をおすそわけさせて貰う、と……うんうん、この程度なら楽勝よ~」


「頼もしいな。バッチリ守ってやっから、そっちは頼むぜ」


「ほーい。……気を付けてね」


「そっちもな」


俺は辺りを見回す。


「さぁて、客入りはどうかな」


砂埃を巻き上げ、何かがこちらに接近するのが見えてくる。

そしてそれは、3体のVDだった。


奴等の通信が聞こえてくる。


「────チッ。あいつら、テメェの兵隊は出さねぇってのかよ」


少し粗暴な印象を受ける、低い声の男。


HUDに情報が表示される。


《MERSENARY NAME:ハードビート》

《CLASS:C》

《VD NAME:ボールズ・トゥ・ザ・ウォール》

バイクのような形状の特殊な戦車型脚部で爆走し、両腕にはガトリングにショットガン。肩は両方とも小型のグレネードキャノン。


「ううっ……僕たち3人が居れば……それだけで十分って思ってるんですかね……」


「ああ、しっかりやらなきゃ……しっかり……しっかり……」


おどおどしたような、頼りない青年の声。


《MERSENARY NAME:アッシュボーイ》

《CLASS:D》

《VD NAME:ニュクトフォビア》

ずんぐりむっくりとした風体のボディに、腕部にはそれぞれ火炎放射機とナパームキャノン、肩には迫撃砲、そして脛の側面と腰部分にミサイルポッドを装備したかなり重装備なVDだ。


「それにしても……クソッ……全くなんでクラスFなんかが居やがんだ。テメェのツレか?」


「し、知りませんよあんな人……!」


「さっきからぶつぶつぶつぶつ……ずっと何言ってるかすらわかんないんですよ……!?」


ハードビート、アッシュボーイの両名の言う"アイツ"。


「いっぱい……いっぱい……いっぱいパチパチ……イヒヒヒヒッ……」


妙に息が荒く、どことなく異常さを感じさせる男の声。

……クスリでもやってんのだろうか。


《MERSENARY NAME:Tic-tac Tic-tac Tick Tick Tickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktickticktick……………………


「ああッ、クソッ……なんつーコールサイン付けてんだ一体……」


HUDに写る情報が"tick"の文字で埋まり続ける。一瞬バグったかハッキングでも食らったかとヒヤッとしたが、問題は無いようだ。


……気を取り直して、ヤツの情報を確認する。


《CLASS:F》

《VD NAME:F・I・T・H》

右腕にはバカでかいグレネードキャノン、左腕には小型のロケットランチャー。

肩には10連装のミサイルと単発の大型ミサイル。

俺が前に使ったハンドグレネードも幾つか持っている。全て爆発物オンリーの武器構成だ。


「……あっ!あー、あー、あー……そうか、アイツか」


脳裏が弾ける感覚と共に、俺はあることを思い出した。


問題児な"傭われ"の隔離場所とも言われるクラス……クラスF。

クラスF傭われはロクに活動すらしていない者も多い中、その中では頻繁に仕事に出ているヤツが居る……って話だったか。


頭のおかしいコールサインに、爆発物を積みまくったVD。


「アイツが"ティックタック"か」


ティックタック。ヤツはそう呼ばれている。

敵味方構わず爆弾で吹っ飛ばす、正にクラスFのお手本のような危険人物だ。


これは少し……厄介な仕事になるかもしれない。


「あん?なんだありぁ……VD?"傭われ"か?」


「ヒエッ……!?く、クラスA……!ああ、今日僕はここで死ぬんだっ……!」


どうやら向こうもこちらに気付いたようだ。


「だぁー!いい加減ウジウジうるせぇよ!こっちは3人居んだ、フクロにしちまえば問題ねぇ!」


「俺に付いてこい!ヤツをブチ殺すぞ!」


「イヒヒッ……!イくのか!?イッちゃうんだな!?フレンド!?」


爆音で鳴るアクセルの音をゴングとして、ハードビートが我先にと突っ込んで来た。


「オラァァ!蜂の巣にしてやんぜ!」


弾丸と榴弾をひたすらに乱射している。さながら暴走機関車のようだ。


よし、まずはアイツからか。

俺はブレードに手をかけ、攻撃を避けながらヤツとの距離を詰め────


「…………ッッ!」


────ようとしたのを中断し、俺は急いでその場から飛び退いた。その瞬間だった。


────ドッッゴォォォォン!……


突然、黒煙と砂を伴って、紅蓮の花が1輪咲いたのだ。

凄まじい衝撃波が俺を押し退ける。

強烈な死の予感を嗅ぎとり反射的に動いたが、俺は未だ状況の整理がつかないでいた。


「…………な……何だッ……」


しばらくして視界が晴れてくると、俺はようやく状況を理解した。


「…………マジか」


……そして真のゴングは、今、まさに鳴らされたのだということを理解した。


何が起こったか。ついさっきまで俺とハードビートの居た場所が、バカデカいクレーターと化していたのだ。


その中心では……真っ黒な鉄屑が火を吹いている。


「ヒュー!ッハハハハァッ!イーッヒヒヒッ!」


嵐の後の静寂をぶち破り、犯人は嗤う。


「まずは1発目のパチパチを投下……!1人……脱落だァッ!」


ティックタックのVD、その右腕のグレネードキャノンからガコン、と空薬莢が飛び出す。そして銃口からは硝煙が昇っていた。


どうやら俺ごとハードビートにキャノンをブッ込んだらしい。当然モロに食らったハードビートは一撃K.O。欠片でも残っていたら良い方だろう。


「さぁぁぁパーティーはこれからだァ。イヒヒッ、楽しくいこうぜェェェェ!?フレェェェンズ!」


「……ったく、ずいぶんハデな余興だったなオイ」


まぁ俺としてはとっとと1人落ちてくれてラッキーだ。


「余興が済んだなら……とっとと退場して貰うぜ。この1発屋が」


俺はブーストを吹かすと、ティックタック目指し全速力で距離を詰める。


「飛べェェェッ!マイ・フレンドォッ!!!」


今度はロケットとミサイルが飛んできた。しかし全てこちらに飛んでくるのではなく、幾つかは全く俺ではない方角目掛けてすっ飛んでいく。


多少流れたとはいえミサイルの密度は濃いが……対処は難しくない。


こんなスピードの弾、俺には余裕で見えるからだ。ロケットもミサイルもするりと回避し、大型ミサイルは撃ち落として処理。


よし、あと少しでブレードの間合いだ……!


俺がヤツを撃ちつつそのまま距離を詰めていくと……


「フヒッ……!」


ヤツが懐から何かを取り出し、こちらにぶん投げてきた。


「この距離でグレネードかよ……!チィッ!」


俺はそのグレネードを撃ち落とし、急いでそこから距離を取る。


────ドォォォォン!


そしてまもなく、そのグレネードが閃光に包まれた。


「マジかアイツ……あの距離じゃあ、余裕で自爆すんだろ」


「…………イヒヒッ」


「イヒヒヒヒッ!もっと……!もっともっともっともっと……!」


「もっとパチパチが欲しいンだよォォォッ!」


軽く損傷しつつも、未だ健在なティックタック。ヤツは更に、残りのグレネードを全て使いきらんとばかりにグレネードをぶん投げまくってきていた。


オマケとばかりにミサイルも撃ちまくってきている。キャノンも、装填したそばからパナしているようだ。


「あー……俺1人殺んのになんつー撃ち方してんだ────ん?」


襲い来る爆発を適当にあしらいつつ辺りを見回すと、爆炎の中にイヤに目につくものがあった。アッシュボーイだ。


「………………」


「……えっ棒立ち?」


それは異質極まりなかった。戦場において動いているのが当たり前のVDが、今はピクリとも動いていないのだから。


「…………火……火だ……」


「そうだ……いつだって僕を守るのは……火だ……」


「火……!火……!火……!」


「……?どうしたアイツ……」


そう思った矢先、ティックタックがアイツに近寄る。


「そこのキミぃぃぃ?あーそ────」


「ッッ!!!うわああああああ!!!」


一瞬だった。ヤツの火炎放射機、キャノン砲、ミサイル、迫撃砲……全ての武装が一斉に火を吹く。


狙いもへったくれもあったもんじゃない、半狂乱になりながら滅茶苦茶な射撃であちらこちらに炎を撒き散らすその様は、まさに怒れる活火山だ。


「ああッつッ!!!……でもイイ!す・ご・く・イイッ!お前の趣味も……嫌いじゃないぜッ!!!」


真っ向からヤツの炎に炙られるティックタック。が、どうやらそれは……ヤツのハートにまで火を付けてしまったようだ。


「イヒヒッ……!さぁイこう!トコトンイこう!最後まで!」


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいんだよォォォ!!!」


「ああああ燃えろォォォ!!!来ないでくれェェェ!!!」


両者とも完全に俺が見えていないらしい。2人だけで殺り合い始める。

爆発と業火が辺りを包み、さながら光景は地獄絵図。夜中の荒野に昼が訪れていた。


「ハァ、クソッ……!火遊びなら余所でやってろ……!」


俺にまで大量の流れ弾が飛んできている。全く、無秩序な射撃程怖いものはない。


俺は溜め息が漏れるばかりだったが、まぁ良い。残った方を処理すれば良いだけの事。手間が省ける。

そう思って、俺は流れ弾の回避に専念しつつ、観戦を始める事にした。


……見ていて思ったが、ティックタック……アイツずいぶん動きが良いな。


致命傷になる攻撃はキッチリ避けている。

クラスFの問題児、そしてヤクでパーになってる人間とはとても思えない。訓練してる訳ねぇだろうし、そういう才能でもあんのだろうか。


それに比べ、アッシュボーイの方はかなり鈍重な動きだ。


多分やや重量過多気味なのが原因だろうが、ロクに回避も出来ておらず、ティックタックのロケットもキャノンも普通に喰らいまくっている。

しかしヤツはそんなのモノともせずにひたすら反撃の炎を吹き出し続けている。


「ほう……あのパーツ、あんなに頑丈だったのか……」


ヤツのボディパーツ……アレはファイアーワークス製のものだ。

普段キャノンやミサイルばっか作ってるとこのもんだから、どんなイロモノだと思っていたが……なるほど。あそこまで防爆性能に特化してるとは。


「あ、あれぇっ?オーバヒート?」


そうこうしているうちに、どうやらティックタックのVDがオーバヒートしてしまったらしい。

ロクに攻撃を当てる気すら感じない滅茶苦茶な戦い方だったが、どうやら相性と持久戦でアッシュボーイが競り勝ったようだ。


「うわああああ!!!消えろ消えろ消えろォォォ!!!燃えてくれェェ!!」


動きの鈍ったティックタックに、炎が襲い来る!


「…………イヒヒッ」


「イヒヒヒヒヒ!!!よーしよーしわかったぜェ?」


ティックタックは突然そう笑うと、いきなりVDを全力で走らせ、戦線を離脱した。


「今日は特別!!良ぃもん見せてやるからさァ」


「……ちぃーっと待っててくれよ?フレェンズ?」


……嫌な予感がする。


しかしアイツは一旦放置でも良いだろう。それよりも、これでようやく1対1。

アッシュボーイはもうほぼ半壊状態。とっとと片付けちまおう。


「ううう……!止めろっ……!嫌だ嫌だ……来るな来るな来るなよぉぉっ……!」


だがどうするか。

アイツの攻撃自体を回避するのは難しくない。

けれども、周囲を焦がすあの炎が厄介だ。もしあの中に突っ立ってオーバヒートでもしたら結構痛い。


もうこの際被弾覚悟でゴリ押すのもアリっちゃあアリなんだが……


「……せっかくの小遣い稼ぎで余計な出費も出したくねぇしな」


俺は修理代をケチる為、安全策を取ることにした。


「……さて?もう終わったか?」


「ッ!!ハァーッ……!ハァーッ……!」


ヤツがグレネードキャノンをこちらに向ける。

どうやらミサイルも迫撃砲も弾切れらしい。残りの武装さえ解除しちまえばそれで終わりだ。


「……ほら?どうしたよ。撃たねぇのか?」


「撃たなきゃあ……死ぬぜ?」


俺はヤツを挑発する。


「あっ……!あっ……!うあああ……!」


「死にたくない……!死ぬのは嫌だァッ……!」


ヤツのグレネードキャノンが火を吹く……!


────バァン!


俺はよく狙いをつけて、"ある場所"に1発、弾をブチ込んだ。


放たれた弾丸の行く先。そこは、ヤツのキャノン砲の銃口の中だった。


「あっ……!嘘だ……!」


軽い爆発の後、ヤツの左腕……そのキャノン砲が炎上する。


「よし入った!……ハッ、これはオーカの真似だが……やりゃあ出来るもんだな」


俺はヤツの怯んだ隙を見逃さない。


「うわっ、あっ、あ────!」


また炎をバラ撒かれる前に、素早く懐に潜り込む。そして──


「そこだッ!」


────ズバァッ!


俺は装甲と装甲の継ぎ目。そこを正確に狙い、そのデカい火炎放射機を持つ右腕を切り落とした。


「うわあああっ────!」


これで武装解除完了。もうアイツは戦えない。


「ほら、これで終わりだ」


「とっとと帰れ。ハタ迷惑な放火魔野郎が」


そう言うと、ヤツは泣き喚きながら戦線を離脱する。

武装が無いせいか、今日イチのスピードだった。


「さぁ……て……?」


……辺りを見回す。敵影はない。

ならば、これで仕事は終わりだ。俺はオーカに通信を入れる。


「よう。こっちはぼちぼち終わったぜ。そっちはどうだ?」


「お、相変わらずやるねー……安心しな、こっちももう脱出した。今から合流すんね」


「おう。……全く、今日はずいぶん滅茶苦茶な───あ?」


「────イヒヒヒッ……!」


……ああ、もうまたかよ……

もう締めに入ろうとしていた矢先だった。

あの笑い声が聞こえてくる。


「どしたん?」


「いや、まだ終わってなかったらしい。……そのまま帰ってくれる事を期待してたんだがな」


「ったくどこだ………………お、アレか──ッ!?」


辺りを見回すと、遠く離れた丘の上。そこには……ティックタックの姿。

そして、俺はその姿に驚愕してしまった。

なぜなら…………


「ん~?なんかオーディエンスが減っちまってんなァ……?ま、良いや」


ヤツが背負っていたのが……


「さぁ~てェ~……じゃ、イこうか……」


あの悪名高い、超大型ミサイル……まさにそれであったからだ。

ファイアーワークスの最高傑作。一撃に全てを賭け、その凄まじい威力で何もかもを灰塵に化してしまう究極のミサイル。型番まで覚えている。


"FWMS99 クライマックス・グランディオーソ"……!アレはヤバい……!


「おまっ、ちょっ……!待て──!」


ヤツのミサイル、そのパーツが1つ1つ組み上がり、天を穿つバベルがそびえ立っていく。

俺の言葉なんか届いちゃいない!ヤツは粛々とミサイルの発射準備に入っている!


「レッッディィィス・アーンド・ジェントルメェェェン!皆様こちらにご注目くださァい!」


「…………ま、もうフレンド1人だけみたいだが……まあいい」


「本日は出・血・大・サービス!フレンドの為だけのオンステージ、感動のフィナーレだァッ!」


「今から俺のこのイキり立った"ブツ"を!エクセラのゴキゲンな"アソコ"にブッ込んでやんぜェェ!!」


「オイオイオイオイふざけんなッ……!」


俺はヤツの元へと全速力でブーストを吹かした。

あんなもんブッ込まれたら1発でオシマイだ……!なんとしてでも阻止しなければ……!


ッつーかここに来て真面目に本来の仕事やりだしてんじゃねぇーよ……!


「よぉし……!座標位置確定……!ジャイロ……推進系……電装系……オールクリア……!」


「燃料圧……!規定ラインに到達……!」


「セーフティは……ヒヒッ……!始めから無いッ!」


ヤツのミサイルが噴煙を上げる!

間に合え……!間に合え……!間に合えッッ……!!!


「イくぜェェ……!さぁ!大人も!子供も!おねーさんも!皆さんどうぞご一緒にッ!!!せぇーのォッ!!!」


「フ ァ イ ア ァ ァ ァ ァ ァ ァ ・ イ ン ・ ザ ・ ホ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ゥ ゥ ゥ ル ! ! !」


「うおぉぉぉぉぉぉッ!?」


凄まじい噴煙と凄まじい衝撃波を放ち、ついにあの巨大ミサイルは勢いよく打ち上がってしまった。

俺は衝撃を受け、吹っ飛ばされる。


打ち上がったミサイルは、前哨基地に向け一直線にすっ飛んで行く。

このままでは依頼失敗だ!しかし、今の俺にあのミサイルをどうにかする手段は無い!クソッ……!


「──安心しなー!レイラー!」


……突然、通信からオーカの声が聞こえてきた。


「レイラの仕事は、あたしが無駄にさせない!」


「最高のフィナーレなら、あたしが迎えさせてやるぜ!下がってな!」


オーカはコンテナヘリの中で、VDに乗り込み、ヘビースナイパーライフルを構えている。

どうやら、あのミサイルをブチ抜くつもりらしい。行けるのか……!?


「へへっ……!あたしにしてみりゃあ、今までがイージーだっただけだ……!」


「このくらいの難易度が、丁度いい……!」


──オーカが深く息を吐く。


するとその瞬間、この戦場が、一気に静寂に包まれた気がした。


「…………」


「………………!ここだ……!」


オーカのライフルが光る。

放たれた炸裂弾は、寸分違わずミサイルの進行方向へと向かっていき────


そして見事、その中枢を……ブチ抜いた!


────ボォォン!


ミサイルが爆ぜ、墜ちていく。

それが地面に到達すると────


────ボッッッッゴォォォォン!!!


刹那、凄まじい衝撃波と爆炎。それは、暗闇の荒野を明るく照らし、地表にバカデカいクレーターを作り上げたのだった。


それを見て、俺はつい感嘆の息を漏らす。

何故だか……美しいと、思えてしまう。


「──ヒッッ……!イヒヒヒヒッッ……!」


「アァァァッッハハハハァッ!あぁ……!イイ……!やっぱりイイ!ありゃあ最高のパチパチだァ!」


あのお騒がせな爆弾魔は、どうやらミサイル発射時の衝撃で勝手に半壊してしまっていたようだ。


「フゥゥゥ……!ヘヘヘヘッ……!」


煙を上げ、もうピクリとも動かない。


「ハァァァァ……もう、二度と会いたくねぇ」


ちょっとした小遣い稼ぎのつもりが、あり得ない位ドッと疲れた。

なんか……依頼料が割に合わないような気がする程だ。


「あー……オーカ。助かったぜ、ホントに。最高だお前」


「んふふ~いぇーい。あたしも成長してんだよ?キッチリ目標も達成してきたしね~」


「……ああそうだ。そういやそうだったな」


「ま、データは後程じっくり確認しよう。今日はもう……帰って寝たい」


「よーし。じゃ帰ろ?……お望みなら、ベッドでいっぱいヨシヨシしてやるぜ?」


コンテナヘリが降りてきた。俺はそそくさと乗り込む。

そして、家路についていった。


「……むしろそれは、俺がやるべきな気がするけどな」


「えっ、良いの……!?」

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