『 お昼休み、沙耶の友達は変わり者』
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授業が終わり、昼休みが始まった。
正直、しんどい。
想像以上に授業のレベルが高かった。お嬢様校だから、とは思ってたけど、現実は想像以上。まともに学校通ってなかった俺には、完全にオーバーキルだ。
女装の練習だけでも手一杯なのに、勉強まで全力ダッシュしなきゃいけないとか、未来が不安しかない。
どうしたら……どうしたらこの状況を乗り越えられるんだ?
いっそ理事長に頼み込んで、成績悪くても進級できるよう裏工作してもらうとか?
──いやいや、ダメだろ、それ。
そもそも俺は、学園の問題を探しに来てるんだ。自分自身が問題児になってどうする。
……もっと健全な思考を持て、俺。
「沙耶……」
弱々しく縋るように、俺は彼女の名前を呼んだ。
「ん? どうしたの?」
「勉強、教えてほしい……」
「どこが分からないの?」
「どこっていうか……ほぼ全部!」
「……」
沈黙。そして沙耶は、じっと俺を見て──。
「朱里って、もしかしてだけど、バカ?」
「うん……」
「はぁ……」
盛大にため息を吐かれたけど、沙耶はしばらく考え込んだあと、ぽつりと。
「しょうがない。教えてあげるよ」
「ほんと?! 助かる~!」
「でも、条件がある」
「じょ、条件?」
何だろう、真面目にやれとか、提出期限守れとか……。ドキドキしていると、沙耶は小さく笑った。
「ちょっと、助けてほしいことがあるんだ。放課後、付き合ってくれる?」
「放課後……あ、でも寮に寄って荷物の整理だけしてからでもいい?」
「そっか、今日から寮生活なんだっけ。私も寮だよ」
「ほんとに?!」
それだけで心強さが段違いだ。
「寮生活って何かと不安だから、色々教えてもらえたら嬉しいな……」
「いいよ、そんなの。まぁ、実際住んでみたら案外何とかなるって」
「そうだといいなあ。最初寮に来たときってどんな感じだった?」
「うーん……。強いて言うなら、“一人だなー”って思ったかな。周りに人はいるのに、ね」
「……そっか」
その感覚、なんとなく分かる気がする。
──ぐうぅ。
不意に鳴ったお腹の音に、顔から火が出るかと思った。
「ご飯、食べよっか」
「うん……」
「私はお弁当だけど、朱里は?」
「私はコンビニでサンドイッチ買ったよ」
女の子らしいお弁当と、雑な俺のコンビニ飯。差がエグい。
「今更だけど、一緒に食べてもいい?」
「うん、もちろん」
「二人とも~! 私も混ぜてよ~! げへへっ」
──うるさい笑い声と共に、元気な少女が突撃してきた。
「……なんだ、ひまりか」
「なんだとは何だー!」
沙耶が苦笑しながら俺に紹介する。
「この子、天音ひまり。ちょっと変な奴だけど、適当に相手してあげて」
「よろしくお願いしまーす!」
「よ、よろしく……」
お嬢様校にも、こういう変わり種はいるらしい。
「てか、ひまりも一緒に食べていいよね?」
「もちろん。沙耶の友達なら大歓迎だよ」
「おお~! 我に興味があるとは……まさか、惚れたか!?」
「いや、ないない」
沙耶が即答で切り捨てる。その光景、なんだか微笑ましい。
「二人は普段、何してるの?」
「特に何も。だらだら喋ったり、黙ったり?」
「うん。そんな感じ」
「へえ~」
「それより~!」
ひまりが急にぐいっと身を乗り出してきた。
「なんでそんなに仲良しなの?! 今日会ったばっかりじゃないの?!」
「実は、ちょっと前に一度会ってたんだよね」
「そうそう」
「へえ~、何してたの?」
「えーっと……水をもらったり、服を選んでもらったり……」
ちょっと恥ずかしいけど、素直に答える。
「驚いたよ、まさか学校で再会するなんてね」
「ほんとそれ」
「ひまりは寮生活なの?」
「んだな~」
「仲間だね! 困ったことあったら相談していい?」
「いいけど~、その代わり我にも頼らせてもらうぞ~!」
「全然いいよ」
「契約成立だ~! ゆびきり、ゆびきり!」
指切りなんて何年ぶりだろう。沙耶が、ちょっと不満そうに見えたのは気のせいだろうか。
「朱里、ちょっとおかず分けて?」
「え? うん、いいよ」
手を伸ばしたが──沙耶は微動だにしない。
「あれ、食べないの?」
「お箸、忘れちゃって」
「あ、そっか。サンドイッチだもんね」
お箸を渡そうとすると、沙耶はニヤリと笑った。
「めんどくさいから、朱里が食べさせて」
「……え?」
「ダメ?」
同性同士なら普通のこと……だよな? たぶん。
「わ、分かった……。あーん……」
沙耶は小さな口を開けて、ぱくり。
「この卵焼き、中にチーズ入ってておいしい……!」
「よかった~。簡単に作れるんだよ」
「え、これ、朱里が作ったの?!」
「うん」
「すごっ! 我も食べたい!」
「どれがいい?」
「肉!」
「じゃあ、豚の照り焼きだね、はい」
「あーん! んんっ、美味いぞ!」
二人とも、すごく嬉しそうだ。
「二人とも、料理とかしないの?」
「私はしないなあ。やったこともない」
「我はコンビニ飯か売店飯!」
「そっか、寮だとそんな感じだよね。でも、自炊ってできるの?」
「昔、してる人を見たことあるけど、許可がいるんだってさ~」
「そっかぁ。許可とかめんどくさいし、私も明日から学食にしようかな」
「えぇー?!」
「なんで?!」
二人の反応が意外すぎた。
「……だって、手続きとか苦手だし」
「違うんだよ、朱里」
沙耶が、真剣な顔をして俺を見た。
「私たち、朱里のご飯、また食べたい」
「……え」
「そうそう。我もな!」
──なんか、すごく、嬉しかった。
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