『女装してたら、クール女子とデートすることになった件』
以前書いていたものを作りなおしました。ストーリーやキャラは変わる予定です。まだ、設定などが決まきってないので、手直し入る可能性ありです。
タイトルが一話前と結構被ってたので変更しました。
読んでもらって、ブックマークなどしてもらえるとモチベーションにつながるのでよろしくお願いします。
「ちょっと服欲しかったんだよねー。付き合ってもらってなんだけどさ」
「いえいえ、お礼になることなら、どんなことでも」
服を見て回るだけだもんね? やましい要素はないよね? カップルで服を見に来る人だっているし。
「そういえば聞いてなかった」
「何がですか?」
優しい少女は少し気に入った服を見つけたのか、鋭い目で細部までじっくり確認している。
「名前は?」
本名じゃない偽りの名前。これから慣れていかないといけない。
「一ノ瀬朱里です」
「へー、かっこいい名前。私は東雲沙耶。沙耶でいいよ」
「私も朱里で大丈夫です。沙耶さんは今日は買い物に?」
「さん付け……ま、いいけど。大体そんな感じかなー。暇だし、ぶらぶらって感じ」
「私も似たようなものですね」
「どこか寄りたいところとかあったりする? せっかくだし、付き合うよ」
「特にこれといっては……」
「そ? ま、気軽に言ってくれればいいから」
「ありがとうございます」
淡々としているけど、優しさとテキパキ感がある。正直、助かる距離感だ。
これから学園生活を送っていくうちに、こういう女子たちと買い物に行くこともあるだろう。その時のための良い経験ができた。沙耶さんには感謝だな。
それにしても、女性用の服なんてちゃんと見たことがなかった。これから自分も着るのだから、ある程度は知識を蓄えないといけない。それに、女装代や必要な物は理事長が出してくれると言っていた。今買わないにしても、いずれ準備しないとな。
「朱里ー」
「はい、なんですかー?」
どこからともなく沙耶の声が聞こえてくる。
「ど、どこですか?」
辺りを見渡しても姿が見えない。
「っここ! ちょっとこれのサイズ、一個上持ってきてくんない?」
試着室のカーテンをうまく使いながら、できるだけ露出を抑えた沙耶の姿が妙に刺激的だった。
思わず動揺する男心を落ち着かせ、冷静に対処を試みる。
「わ、分かりました」
渡された服は少し暖かかった。当然、彼女が着ていたからだ。……いや、それ以上は考えない。本当にそうか? どうせ今日が最初で最後なのだから、こっそり匂いぐらい嗅いでも──
いや、ダメだ。
「はい、これ」
「顔赤いけど大丈夫? そんなに探すの大変だった?」
「全然大丈夫です、平気です」
色々な意味で大変だったよ。
「そう? あとは買うだけだから助かった。ありがと」
「どういたしまして」
「会計してくるね」
「その間にお手洗いの方に……」
お花畑とか摘みに行くだとか、そういう言い方が普通だったか……?
「あー、了解。その辺で待ってるからごゆっくり」
トイレの前まで来て、ふと疑問に思った。どっちに入ればいいんだ?
男子トイレに女性らしい人物が入って騒がれるのと、女子トイレに普通に女子が入って何も起きないのとでは、もちろん後者の方がリスクは少ない。
とはいえ、勇気が出なかった。
男子トイレに入って、もし誰かいたら「間違えました」で誤魔化せばいい。それが一番平和な解決法に思えた。
女子トイレの方が全部仕切りがあって、実は安全なんじゃね? なんて思ったのは後の祭り。
人生で一番緊張した男子トイレだった。偶然、中に誰もいなくて助かった。
正直、この後の予定も特にないのに、わざわざ待ってもらっていたのは申し訳なかったなと反省。
戻ると、沙耶がナンパ師たちに絡まれていた。
「暇~? 一緒に遊ばな~い?」
「ね~、いいでしょ~? あ、その荷物持ってあげるからさ~」
「大丈夫です。友人を待っているので」
「いいからさー、荷物も持ってあげるって言ってるでしょ」
「や、やめて!」
男たちが無理やり荷物を取ろうとしているところを目撃し、思わず身体が動いた。
気づけば、男たちは地面に転がっていた。
沙耶は呆然としている。
やってしまった。こんなはずじゃなかった。見た瞬間、沙耶の手を引いて走って逃げようと思っていたのに。
手癖の悪さというか、楽な方に行きすぎた。
沙耶は何か言いたそうにしていたけど、頭が真っ白で何も聞こえなかった。
「ごめん、帰るね。水、本当に助かった。優しくしてくれて、ありがとう」
その場から逃げるように立ち去った。
不定期更新です。頑張ります!