表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

『ウィッグより重いのは、女の子のフリだった』

以前書いていたものを作りなおしました。ストーリーやキャラは変わる予定です。まだ、設定などが決まきってないので、手直し入る可能性ありです。


読んでもらって、ブックマークなどしてもらえるとモチベーションにつながるのでよろしくお願いします。

「流石に緊張する……。女装で都会――ってか、ウィッグ重てー……」

 玲央は今日までイメージトレーニングを重ねてきた。とはいえ、それはごく低レベルなもの。本番に勝る訓練なし。

 目の前で起こるすべての出来事に"女性"として対応しなければならない。それは一朝一夕で身につくものではない。

 

 「正直、見た目は悪くないと思う。こんな女性がいても普通だ……と思いたい。馬鹿な親と馬鹿な理事長の目を信じることにしよう」

 

 周囲を見渡しても、不自然な視線は感じない。少なくとも大きな違和感を覚えられてはいないということか。


 「それはそれでどうなんだ……」


 玲央は喜んでいいのか分からず、ため息をついた。


 「おや、ため息なんかついてどうしたんだい? 待ち合わせ? それとも友達がなかなか来なくて暇とか? それなら俺らと遊ばない?」


 ゾッと血の気が引いた。

 上手く声が出ない。家で練習した女声がまるで機能しない。

 かといって、普段みたいに「うぜえ」と殴るわけにもいかない。


 ――全力で走った。


 誰もいない場所まで。


 「はあ……はぁ、はぁ……これが痴漢されたときに声が出ないってやつか……?」


 声が出なかった。いや、"出せなかった"のかもしれない。

 女声を出したら不自然に思われそうで、何もできなかった。いや、ただのナンパなのだから、どう思われてもいいはずなのに。


 それよりも、ナンパされたということは女性に見られたということ……?

 これは、たぶん喜ぶべきことなんだろう。あの男たちがゲイでない限り。


 「大丈夫?」


 息を切らしていると、不意に女性の声がした。

 同年代くらいの女性が、心配そうにこちらを見ている。


 「大丈夫、です……」

 「そんな風にはまるで見えないんだけど……」


 今もなお、不自然に見られていないかばかり考えてしまう。


 「水、飲む?」

 「え?」

 「新品だから安心して。汚くないよ」

 「いや、そんなことを疑っているわけではないんですけど……」


 飲んでいいのか? いや、女性同士なら普通か?

 でも、ひと口飲んで返したら相手はどう思う?

 それとも、お金を払って受け取るのが正解か?

 

 ――そんなことを考えている間にも、喉は乾いて仕方なかった。


 「お金払うのでください!」

 「別にいいよ。落ち着いて飲みなよ」


 手渡されたペットボトルを、思い切り傾けて飲んでしまう。


 「豪快だね~」


 しまった。完全に"男飲み"だった。


 「とっても美味しかったです! どこで購入されたんですか?」

 「いや、普通のスーパーだと思うけど……?」


 フォローしようとして余計に不自然なことを言ってしまった。


 「本当に助かりました……」

 「それなら何より」

 「どうして助けてくれたんですか?」

 「……さぁ? なんとなく? 目の前に困ってる子がいたから?」


 善意で動いてくれたらしい。


 「本当に助かりました。何かお礼をさせてください!」

 「お礼……? まずこんな路地で何してたの……?」


 開幕から今まで、不審にしか思われていない気がする。


 「ナンパされたんですけど、どうしていいか分からず全力でダッシュしました……」

 「あぁ、それで」


 納得してもらえたようだった。


 「確かに君は綺麗だし、気をつけた方がいいだろうね」

 「え、そうなんですか……?」

 「そうなんですかって……そんな見た目で自覚ないの? 相当レベル高いと思うけど……まるで作り物みたいだ」


 作り物ではあります。


 「それなら、今後は気をつけるべきだね。変な虫に捕まらないように」

 「分かりました」

 「暇なの?」

 「暇です」

 「そう、それなら少し付き合ってくれる?」

 「は、はい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ