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女装で女子校に通ってたらモテすぎてヤバい!  作者: 宮原


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18/22

『勇気の時、いざ参らん!なのです』

ブックマークや評価などよければ宜しくお願いします!モチベーションに繋がっています!

今回も乃愛視点での物語となっておりますので、ご注意ください!

 よしっ……言うぞ。今から言うんだ。逃げない……!

 夕食時、親に「寮生活をしたい」と相談する直前。

 心臓がドクドク鳴っているのが、自分でもはっきり分かる。

 苦しい。息が浅くなる。

 この緊張から早く解放されたくて、私は意を決して口を開いた。


「あ、あの……お母さま。相談があるんですが」

「あら、どうしたの? 何かお口に合わなかった?」


 いつも通り優しい声。心配してくれてるのが分かる。

 それが、逆に胸を締めつける。

 悪いことを言おうとしているわけじゃないのに、罪悪感が喉につかえる。


「そうではなくて……。緋桜女学園の寮に入りたいって考えてるのですが……」


 声が震えないように、ぎゅっと膝の上で手を握る。

 お母さまの目線がゆっくりこちらに向けられて、緊張感がさらに増す。


「それは、どうして?家で気に入らないことでもあったの?」

「い、いえっ!そういうわけじゃなくて……」


 違う。全然違う。

 でも、どう言えば伝わるんだろう。

 家に不満があるように聞こえたら嫌だし、言葉を選ばなきゃ。


「変わりたいと思ったからです」


 それが、今の私に出せる精一杯の言葉だった。

 自分でも足りないと分かってるけど、もうこれ以上取り繕えない。


「何かきっかけがあったの?」

「やっぱり……駄目ですか?」

「そういうわけでもないのよ。ただ、少し驚いただけ」


 うう……。反応が良くない。

 駄目なのかな……。

 お姉さま、ひまり先輩……。どうか、私に勇気をください。


「急な話だったから、何かあったのかなって思っただけよ」

「……そうですね。きっかけは、ありました」


 息を整えて、思い切って続ける。


「学園の方で仲良くしてくださってる先輩達がいて……」

「あら、こないだ泊まったって言ってた方達のことかしら?」

「そうです」


 やばい……これ、完全に“お泊まりでテンション上がっただけ”って思われる流れでは?!

 ど、どうしよう……。


「それが大きなきっかけではあるんですが……!その人たちを見て、私も変わりたいって思ったんです。今まではお父さまやお母さまに頼ってばかりでした。でも、それだけじゃ自分自身が成長できない気がして。だから、寮生活を通して自立していきたいんです。そして今までしてもらったことのありがたさを、もっと実感したいって思いました」


 事実、本当にそう思ってる。

 それでも自分で言ってて、なんか面接みたいなセリフだなと内心ツッコむ。


「お世話をするのは子供なんだから当然よ。気にしなくていいの」

 お母さまは少し笑って言った。けれど、その笑顔はどこか寂しそうだった。


「私も考えてみるわ。それに……お父さんが帰ってきたら話してみてもいいかしら?」

「もちろんです。勝手に決めるつもりはありませんし」

「そうね。分かりました」

「はい……」


 その後の会話は、正直あまり覚えていない。

 話しかけるまでは明るい景色だったのに今は暗い。まるで真っ暗な道。それは夜中に散歩しているからなんだけど。

 はあぁ……やっぱり駄目だったのかな。

 言いたいことは言えたのに、手応えがまるでない。

 むしろ想像してた展開通り。


 ──ははっ、駄目元だったしね。

 そう言い聞かせると、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。


 お姉さま……私、やっぱり弱いです。

 どんな顔で会えばいいのか分からない。

 お姉さまは何も知らないのに、私は勝手にこんなことで悩んでる。


 早く会いたいな。

 いや、今は落ち込んでる場合じゃない。

 くよくよしてても仕方ない。

 ……でも、今さら何ができる? ああもう、どうしよう。


「明日、ひまり先輩に相談しよ……」

 そうつぶやいて、夜空を見上げた。


「ひまり先輩~!」

「うおっ、どうした、急に」

「相談に乗ってください゛い゛ぃ~……!」

「分かった分かった。落ち着けって。で? 何か進展あったのか? そもそも親に言えなくて困ってるとか?」

「い、言えたんですけど……」


 昨日の出来事をざっくり話すと、ひまり先輩は腕を組んだ。


「なるほどな……。んー、正直お前の母親の性格とか知らんし、なんとも言えねーな」

「そんなこと言わないでくださいよ~!私だって知ってても分かんないですもん!」

「確かにな。とはいえ、結局は親の返事次第だろ」

「そうなんですけど……でも、もし“駄目”って言われたらどうしたら……」


 情けなくうろたえる私に、ひまり先輩は小さくため息をついた。


「まあ普通に考えて諦めるしかないわな」

「えぇ~~!? なんか軽くないですか!? 私がいないと困るの先輩もですよね?! 先輩も私に来てほしいですよね?!」

「……」


 ひまり先輩は気まずそうに視線を逸らす。


「そうは言ってもなー。簡単な話じゃねぇし。そりゃ力になってやりたいけどな」

「何か方法ないんですか~?!」

「んー……」


 ひまり先輩は顎に手を当て、数秒考え込む。


「よし、決めた。我が今日お前の家に行って、親御さんを説得して見せよう」

「え」

「何固まってんだよ」

「い、いや……上手くいく未来が全く見えないんですが……」


 なんか、先輩と私の親って相性悪そう。

 お姉さまみたいな人だったら説得できそうなのに……。


「まー見てろって!」

「は、はぁ……」


 ──先輩に相談したことで、さらに状況が読めなくなってきた。

 どうなっちゃうんだろう、私……。



「私がまず親と話すので、そのあとで来てください」

 家の前で私はひまり先輩に言った。

「最初からいたほうがよくね?」

「いきなり出てきたら驚かせちゃいます。ここは私の言うこと聞いてくださいよ」

「しょうがねーなぁ」

「じゃあ、ちょっと行ってきます……」


 とはいえ、何をどう説明すればいいのか全然考えてなかった。


「あら、おかえりなさい、乃愛」

「は、はい。ただいまです」

「帰ってきたか」

「お父さま……珍しいですね。この時間にお家にいるなんて」

「たまたま早く帰れたんだ」


 ──いや、絶対“たまたま”じゃない。


「あの、話があるんですが」

「なんだ?」

「お母さまから聞いてるかもしれませんが、寮に入りたいです」

「そのことか」

「はい」


 足が震える。逃げ出したい。ひまり先輩、助けて。


「それなんだが……一応、私からも直接理由を聞いておきたい」

「自分の力で頑張りたいんです。勿論寮生活をしたとしても、それはお父さまとお母さまのおかげなのですが。今まではずっと守られてばかりで……でも、これからはちゃんと、自分の足で歩きたい。変わりたいって思いました」


「いや、どちらかと言うと厳しくしすぎたかもとは思ってたのだが……。……そうか。変わりたい、か」

「はい」


 手のひらが汗でじっとりと濡れる。

 空気が、ぴたりと止まったように感じた。


「──あのっ!入ってもいいですかっ!」


 勢いよくドアが開く。

 三人の視線が一斉にそちらへ向いた。

 そこに立っていたのは、もちろん――ひまり先輩。


「ひ、ひまり先輩!?」

「ごめんなさい!外で待ってるつもりだったんですけど、じっとしてられなくて!」


 バタバタと両手を振って、一礼。

 緊張と勢いの入り混じった笑顔がまぶしい。


「乃愛さんが“変わりたい”って言ってるの、本気なんです!この子、ずっと周りのことばっかり考えてて、自分のこと後回しにしてきたから。でも今の乃愛ちゃんは違います。自分で選んで動こうとしてるだから、私、隣で支えたいんです!」


 その熱量に、両親は思わず目を丸くする。

 そして少しの沈黙のあと、お母さまが微笑んだ。


「なるほどね……あなたが“ひまりちゃん”ね」

「は、はいっ!」

「元気ね。──乃愛、いい友達ができたのね」


 お父さまも腕を組み、どこか照れくさそうに笑う。

「まったく……びっくりしたな。でも、そんな風に言ってもらえるなら反対する理由なんてないさ。もともと反対するつもりもなかったんだよ」

「えっ!? そうだったんですか、お父さま!?」

「ええ。私も乃愛がそう言うなら尊重したいと思っていたの」

「そ、そうだったんですか……?」

「なんだよ……乃愛の思い過ごしか。最初から我いらなかったな」

「うう……」


「ひまりさん、乃愛のこと、これからもよろしくお願いしますね」

 親二人がひまり先輩に頭を下げる。なんだか、すっごく気まずい。


「い、いえいえ!私の方こそ普段から助けてもらってますので!」


 ──先輩、自分のこと“私”って言えるんだ……。


 胸の奥で、緊張がすっと解けていく。


「……ありがとう、ひまり先輩」

「へへ、我慢できなくて、合図前に来ちまった」

「正直どうやって合図出すか分かんなかったんで」


 二人で顔を見合わせ、思わず笑い合った。

ブックマークや評価などよければ宜しくお願いします!モチベーションに繋がっています!

で乃愛視点は一旦終わり朱里に戻ります!

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